令和が飽和する

 新しい元号を発表する官房長官の記者会見が始まる。
 ノートパソコンとスマホで見ている。
 一連の動作は、前回発表時の小渕恵三を少なからず意識していることを感じさせる。
 額縁が掲げられる。瞬間、コメント欄の文字列の流れが加速する。幾度も反復する。
 ユーチューブはさすがに速い。
 アベマTVは、それほど速くない。

 流れていくコメントを、意味として認識しているわけではない。
 ストップウォッチのカウンターのように、ただ文字列自体を眺めているだけだ。
 スクリプトではなくグラフィックとしてのその二文字が、無限に増殖し飽和する長い瞬間を、共有しているだけだ。
 ああ、ここに、視覚化された時の流れがあるなと、ただ思うだけだ。

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青条
詩的散文・物語性の無い散文を創作・公開しています。何か心に残るものがありましたら、サポート頂けると嬉しいです。