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【Q11.宇都宮LRTの、更にその先へ】1.芳賀町工業団地から循環バスに乗る(JRバス関東・芳賀工業団地循環線北ルート完全乗車)

 宇都宮駅東側のビジネスホテルに泊まる。このホテルはメインストリートである鬼怒通りに面しており、廊下の窓から走行するライトレールの姿を俯瞰することが出来る。目が覚めてしまったので、早朝から撮影する。その走行音は存外に大きく、夜間や早朝はかなり遠くまで響く。

LRTをビジネスホテルの窓から撮影

 ホテル一階のロビーにて、無料サービスのコーヒーを一杯飲んで出発。今日の午前は、もう一度ライトレールに乗る予定だ。始発駅である、宇都宮駅東口まで歩く。停留所は既に混雑している。ゴールデンウィークの中日ではあるが、平日なので通勤・通学ラッシュが既に始まっている。

 この時間は、まだ各種商業施設が開いていないため、利用可能なトイレはバスターミナル側にしかない。連絡通路の階段を登る時に、ライトキューブ裏手の広大な駐車場エリアに、長い行列が見える。どうやら、企業の通勤用バスに乗る人々のようだ。おそらくは工業団地のどこかに向かうのだろう。
 その行列を、熱心に撮影する一人の男性がいる。私もまたそうする。少し言葉を交わす。この人もやはり、ライトレールを撮りに来た人のようだった。 

 6時40分発。普通列車だ。本当は、この便の次の次に出る、快速列車に乗りたかったのだが、時と共に悪化する一方の停留所の混雑に恐れをなして、すぐに出発することとした。快速の運行は、この4月から始まったばかりで、ニュースでも取り上げられ興味を惹かれたのだが、止むを得ない。現時点で快速は、朝の下り方向に、一日2本だけ設定されているという。

 今朝は、進行方向左側の座席を確保できた。昨日とは異なる車窓を楽しめる。車道を走る車達と並走だ。
 市街地の鬼怒通りを走っている間は、車の方が有利だ。車の側は赤信号で停まれば良いだけだが、ライトレールは信号の制約の上に、停留所にも停まらなければならない。この区間は停留所間の間隔が短い。加えて、ライトレール自体の速度に、制限が課されていて遅い。
 交差点の左側から、タイミング良く企業バスが合流してくる。しばらくの間、車窓にその姿はあったが、向こうの方が先に進み、やがて見えなくなってしまった。
 宇都宮大学陽東キャンパス。昨日、最も多くの客が降りた停留所だが、今朝はそれほどでもなかった。

 鬼怒川を越える。今日は上流側の川面を眺める。早朝から空には雲が多く、イマイチぱっとしないが、やはり気持ち良い。
 グリーンスタジアム停留所にて、ほとんどの客が下車していく。巨大オフィスか、工場か、もしくは教育施設の最寄り駅なのだろう。そう言えば、この便の次の列車は、ここグリーンスタジアムが終点だった。
 先に進んでいったバスと、全く同じ外見のバスを見かける。同一の車体だったら、劇的、運命的なのだが!?


 ほとんど空になった車輛は、ゆいの杜西の直前の交差点を右折する。ライトレールは、専用の高架線を登りながら90度曲がる。そのカーブの外角側となる進行方向左手の車窓に、建設途中のバイパス、マクドナルドの看板、ホテルルートインが連続して迫り来る。迫力満点だ。昨日の、右側車窓では見られない楽しみで、やはり二度乗る価値はあったと思う。

 7時21分、芳賀町工業団地管理センター着。終点から二つ手前の停留所だ。この停留所は、交差点の角にあり、横断歩道を渡った対角線上には、路線バス、デマンドバスが発着するロータリーがある。この長い停留所名と同じ名称の施設「芳賀町工業団地管理センター」だ。各交通手段を用いる人々が、この場所でLRTに乗り換えて宇都宮方向へ向かうことを企図した「トランジットセンター」というコンセプトの施設だという。 

 付近には、目立つ商業施設は特に無い。ただ自販機があるだけだ。
 待合室には女子生徒が何人か座っている。これから通学だろう。

 シェアサイクルサービス「LUUP」のステーションがある。この4月20日から、サービスが開始されたと幟に書かれている。つい十日前だ。


 ここから先、更に東に進んでみたいと思い、ジェイアールバス関東の時刻表、無料デマンドバスの時刻表をチェックする。芳賀町役場方面の路線や、真岡鉄道の茂木駅へ向かう路線が存在はしているのだが、やはり本数が少ない。コンセプト通り、LRTとのトランジットが成り立っているのは、今のところ朝夕の限られた時間帯だけではないのかと思ってしまった。

 しばらく周囲を観察していると、ジェイアール関東の路線バスがロータリーに入って来る。何でも良いから、とにかく乗ってみよう。そう思って乗り込むと、運転手から「このバスは工業団地を循環するバスで、またここに戻って来るだけですよ」と教えられる。それでは仕方がないなと、一旦降りかけて、やっぱり乗ってみることにした。「普通に、正規の料金を払いますんで、乗って良いですか」と尋ねると「お客さんさえ、それで良ければ良いですよ」との返事だった。
 7時45分、芳賀町工業団地管理センター発。この路線、「芳賀工業団地循環線」には、北循環と南循環があり、自分が今回乗っているのは、北循環だ。

 広大な工業団地に碁盤目状に敷かれた、直線的な車道を進む。車窓には工場の建造物、その私有地を囲む金網、植栽等が流れていく。巡回バスは五つぐらいの停留所を巡り、約15分で一周する。8時丁度に、スタート地点の管理センターに帰ってきた。最初から最後まで、私以外の客は誰も乗ってこなかった。運転手は終始無言であった。

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