【Q1完結】【Q1.二〇二三年三月一八日開業の新駅を巡る】7.雫石川に架かる橋
(前回の記事はこちらです)
イオンモール盛岡の前には、国道46号線が東西に走っている。東は、盛岡市の中心部に続いている。その沿道は、見覚えのあるロードサイド型商業施設の看板ばかりだ。イエローハット、ケーズデンキ、洋服の青山……。関東平野を走る国道のロードサイドと、ほとんど変わらない景観がそこにある。一瞬、国道254号線沿いにワープしたような錯覚に捉われる。自分が今居るのは、埼玉県新座市のように思えてしまう。
その国道を渡り、南に進む。川にかかる橋がある。一級河川、雫石川。橋上は風が強く、肌寒い。橋の真ん中辺りまで来る。
東側、下流の方は、盛岡市の中心市街地まで通景が拓けている。ビックカメラで買った、折り畳み式の双眼鏡でしばし眺める。
水面は青く濃い。水鳥が一羽、川辺に佇んでいたが、やがてどこかへ飛んで行った。
この地点が、今日の旅のゴールで良いのではと思った。鶴見川を起点とし、幾つもの川を越え、雫石川を終点とする。綺麗にまとまっている。イーハトーブの川。イーハトーブの空。イーハトーブの連山そして風。遠くまで来たと思う。
*
たそがれを雫石川めぐりきてこの草笛のさびしさを載す(宮澤賢治の歌稿より)
*
渋そばに始まり、盛岡じゃじゃ麺で終わる。それで良いと思う。イーハトーブのイオン、イーハトーブのフードコート。イーハトーブの洋服の青山そして風。
来た道を引き返し、駅まで戻る。駅舎内のスロープを登りながら動画を撮影していると、ちょうどホームに着いたタイミングで、下りのこまち号が通過していく。
上り電車盛岡行きを待つ。駅舎内と待合室に、人が大分集まってくる。利用者は思った以上に居る。賑わっている。イオンや、近隣商業施設の利用者、もしくは従業員だろうか?
駅構内の運賃表にも、やはりSuica導入の告知が貼られている。ICカード利用だと、少し運賃が安くなる旨が説明されている。
田沢湖線のこの区間は、ちょうど東西に伸びているらしく、西日の中から上り列車がやってくる。一七時五三分発。帰宅時間帯だからか、乗客が多い。
往路に見ていた車窓と、反対側の景色を見る。ロードサイド型の巨大商業施設、次いで住宅地が連なる。この辺りは、盛岡市の郊外であることを理解する。スケールの違いはあるが、東京都区部に対する多摩地域や埼玉県と、同じ性格の空間だ。得心する。
一七時五七分盛岡着。精算が必要な乗客は、皆窓口に並ぶ。ローカル線に乗り慣れていないために、乗車時に整理券を取るのを忘れた。前潟で乗車した旨を駅員に申告すると、特に怒られることもなく、正規の料金を請求される。
今日の宿泊地は、盛岡駅西側のビジネスホテルだ。盛岡の西側は、行政の建物やテレビ局のビルが並び、殺風景だ。飲食店は余り多くない。
室内の机上に、爽健美茶のボトル二つと、そのレシートを並べる。一つは幕張豊砂のイオン、もうひとつは前潟のイオンで買ったものだ。記念写真を撮り、二本の爽健美茶を飲み比べてみる。特に変わらない。イーハトーブの爽健美茶は、幕張新都心の爽健美茶と、全く同じ味がする。