痛恨の勘違い
前回のコラムで2歳馬取材に訪れたと書きました。主に担当するのはノーザンファーム空港で、ここの厩舎長の皆さんとは、すっかり顔馴染みになっています。
シャフリヤールを育成した佐々木厩舎長については、このコラムでも書きましたよね。今年も、取材の大トリを飾ったのが佐々木厩舎長。少々時間が押し気味だったのですが、厩舎の扉を開けると、奥で両手を振って待っていてくださいました(笑)。
エフフォーリアを育成したのは高見厩舎長。一見、強面風で、そんなに口数の多いタイプではないのですが、シャフリヤールがダービーを制した翌年の取材では、会うなり私に「山本さんが喜んでいる陰で、僕は泣いてましたよ!」と一言。本当に悔しかったと思いますが、笑いに変えての歓迎に、取材チームも大笑いでした。今では、高見さんの笑顔に触れるのも、毎年の取材の大きな楽しみになっています。
※ ※ ※ ※ ※ ※
シャフリヤールは4戦目でのダービー制覇。通算成績は4戦3勝。
成長の余地を十分に残した段階での戴冠で、秋に向けて大いに夢が膨らみました。
しかし、秋初戦の神戸新聞杯は1.8倍の圧倒的な支持を受けながら4着。不良馬場の影響か、直線で全く反応することができませんでした。
続くジャパンカップ。良馬場の東京2400m、そして絶好の4番枠と条件が揃っていましたが、1コーナーでゴチャつく不利もあり3着止まり。引退レースのコントレイルだけでなく、前を行くオーソリティも交わすことができず、ショックの残る敗戦です。
一方、その頃、ライバルとしてしのぎを削ったエフフォーリアは天皇賞(秋)、有馬記念を連勝。この年の年度代表馬に選出されました。「シャフリヤールの実力はこんなものではないはずだ」という、なんとも歯がゆい思い。
年が明け、4歳になったシャフリヤールは、ドバイシーマクラシックに目標を定めます。
左回りの2410m。決まったゲート番は8。これまた、最高の条件が揃っているように思えます。
スムーズな競馬なら全然通用するはず。
ただ、週刊誌などをみると、世間の評価はそこまで高くない様子(実際に、日本国内の馬券発売での最終的な人気は、ユビアー、オーソリティ、ステラヴェローチェに次ぐ4番人気という評価でした)。
これは馬券的にもおいしいぞ。
単勝をしこたま買い込んで、馬連に、さらには3連単まで。
あぁ、日曜日の夜が楽しみだ。
…日曜日の夜!?
そう、私は海外の大レースだから日曜夜だろうという先入観があったのです。
実際にドバイミーティングが行われたのは日本時間の土曜深夜でした。
この致命的なミスにより、馬券を当てられないどころか、レースをリアルタイムで観ることすら叶わず。
日曜日の朝、スマホに届いていた大量のラインを目にした時に、「もしや…」と察しました。
親しい競馬仲間は、私が全くラインに反応しないのを怪訝に思いつつも、「きっと、翌日に大事な仕事があるのだろう」と納得していたとか。
いや、大事な仕事が控えていようとも、ドバイシーマクラシックはリアルタイムで観ますって(笑)。
結果を分かった上で確認したレース映像でも、胸に込み上げてくるものがありました。
素晴らしい馬に出会えて、本当に幸せだなぁ、という思い。
ただ、そこから少し時間が経過して、興奮が冷めてくるにつれて、少しだけ「単勝5.9倍もついていたのか!」という悔しさが胸に去来したのは内緒です(笑)。(次回更新は4月2日)