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サウジアラビア観光記(総集編)

※読む前に注意点を一つだけ。良い面だけではなく負の側面についても記載しているので気を悪くせずに注意深く読んでいただきたい。

 2019年9月末、サウジアラビアはついに王国史初の観光ビザ全面発給に踏み切る(外部記事リンク)。そして僕は翌週にはサウジアラビアへ観光ビザ発給後に日本人で初めてツーリストとして入国する。入国前の話入国時の詳細入国後の個人的な話は過去noteを参照されたい。

 初めてのサウジアラビア観光は全土を駆け回っていたらあっという間に終幕した。ここでは次の旅でサウジアラビア観光を目論む旅人に向けた注意点及び世界遺産の位置関係と写真ををまとめておく。

サウジ旅の注意点

 2019年秋に訪問した僕が次なるサウジへの旅人に対して念頭に置いて欲しいことは3点。①日本人女性一人ではできる限り行ってはならないこと②最低限のアラビア語を勉強しておくこと③サウジのレギュレーションを理解しておくこと、である。

①日本人女性一人ではできる限り行ってはならない
 女性もサウジ一人旅をすることはサウジ王国も日本国も制限をしていない。しかもサウジでは観光ビザ発給に伴い女性のアバヤ着用義務に例外規定を設け、外国人女性のアバヤ着用義務をなくしたことからもサウジが外国人女性観光客に対して積極的に門戸を開いている事もわかる。それらを踏まえたうえで、僕は「女性の一人旅を」おススメをしないことを実体験を交えて主張する。
 僕は、東アジア・東南アジア及び欧米人以外の人から見て、半分以上の確率で女性に間違われる。時にはそれにより便益を受けてきたことも否めない。しかし、サウジにおいては受けた濃い「歓迎」は、他の国でうけたうんざりする歓迎よりも、より激しさを増すものであり、しかもそれらはたいてい密室で行われた。

 ジッダの深夜タクシーでは、下車時に運転手に「タク代不要だからホテルに二人で行こう」と言われて腕を離されず、お香屋ではマッサージが得意と自称するおじさまが肩マッサージを終えて腰マッサージをし、路上の警備員には自撮り時に回した腕で胸を触られ、ハーイルの料理屋の店員には自撮り時にさりげない胸タッチ・膝枕・キスをされ、リャドのタクシーでもジッダ同様に運転手に「タク代不要だからホテルに二人で行こう」と言われ、何度も頬を撫でられ胸をタッチされながら投げキッスをされた。また、一日に一度は、自撮り時に胸タッチをされた。ついに最終日にはマッサージが得意という運転手が目的地送迎中に自宅に立ち寄り、ローションを持ってきて片手にマッサージの提案をしてくる。笑って拒んでいると次第に要求がエスカレートしGoogle翻訳には性行為の文字。それを拒むと彼はついにズボンを下ろし、僕の手を固くなった彼の偶像に誘った。幸いにも僕のほうが力が強かったから偶像崇拝は免れ、僕はやれやれと言って車を去った。
   -辺境(30代、独身男性)の実体験-

 彼らの「歓迎」は、一般的な女性にとっては明らかにハラスメントだろう。ここで、僕が受けた体験が「僕だけが受けたN=1の」属人的な体験ではないことをできる限り示す。

 彼らは僕を男性と認識し、男性同士の愛や好奇心で彼らは迫ってきたのだろうか?いいえ、同性愛はイスラムでは堕落した行為として糾弾される風潮がまだあるから、それはない。僕は女性として見られていたのだ。
 次に、僕が彼らの性欲を特段刺激するような、淫乱な服装や顔や体つきをしていたのどうかを振り返った。仮に僕が実際に若い女性であれば、アバヤを着ずにヒジャブを被らなかった事を糾弾されるかもしれない、しかしあいにく昭和生まれの男性であり、見た目も年相応、格好は全身黒のモンベルの登山服を着ている僕に問題があっただろうか。いや、なかっただろう。
 また、仮に僕が淫乱な顔をしていたのか、乳首が透けた服でも来ていたのか。いや、淫乱な顔はおそらくしていないし、乳首は透けていない。
 まさかと思うが、彼らに名乗ったTakaという本名がアラビア語で淫乱なワードを意味していたのか。もちろんそんなことはない。

 したがって僕は女性として見られた可能性が高く、僕が受けた体験は一般的に普通の格好をしている日本人女性が一人になった際に受ける可能性があるといえる。

 ここで僕は当然に、ハラスメントは加害者が100%悪いと考えるし、仮にサウジでハラスメントを受けた日本人女性がいても、その女性の振る舞いが悪いとは思えない。そして文化を盾に彼らのハラスメントを1ミリ、いや1ミクロンたりとも正当化するつもりもない。しかし現実にそれらが起きているのだ。僕が身をもって体験し、筆をもってnoteにて出来事を証明しようとしている。体験の多くが公共の場の一部、タクシーやレストランの奥という半密室空間で起きた。この現実があることは一般男性の目には留まりにくいからこそ、僕は主張をする。女性がハラスメントを受けないようにするにはどうすればいいか。日本人女性は一人で渡航しなければいいのだ。

 ここまで書いたが、それでも一人で渡航をされる非アラビア語話者の日本人女性は、アバヤ、ヒジャブを身にまとって、上記リスクが存在することを念頭に置いたうえで、十分注意して渡航をしてほしい。

②最低限のアラビア語を勉強しておくこと

 アラビア語はイスラムの日常生活と深く関連しているため、アラビア語の直訳は時に的を大きく外したものとなる(直訳ではなく、意訳で翻訳をしないと意味が分からないGoogleのレビューや日常会話の翻訳となる)。したがって、アラビア語圏を旅するためには最低限の語学(及び文化理解)が必要と考える。
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【必須アラビア語(挨拶以外)】
(1)頻出用語IBM(フル暗記推奨)
・インシャアッラー:直訳は神がお望みになるならば。意訳はMaybe
・ボクラ:エジプト方言で明日
・マーレーシュ :直訳はきにするな。失礼な行為をしたほうが使う言葉
(2)慣用句
・マーシャアッラー:褒める時などにつける慣用句
・ビスミッラー:食事前の慣用句
・アッラーフアクバル:アザーン(礼拝)、移動の祈りの慣用句
(3)人称代名詞、定冠詞、数字
・人称代名詞:アナ(私)、アンタ(アナタ)
・定冠詞:アル=〇〇
・数:0(٠)1(١)2(٢)3(٣)4(٤)5(٥)6(٦)7(٧)8(٨)9(٩) 
(4)他、頻出単語
・ムシケラ:Problem。ラ・ムシケラで問題なし
・ハラス:Finish。タクシーを降りるとき、食事終了時などに利用
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 これらの言葉を覚えているといないでは、その後のコミュニケーション内容にも大きな差が出る。仮に最低限のアラビア語を頭の中に叩き込まずに、テクノロジーに頼って翻訳機能ですべてのやりとりを試みるとしよう。さすがに挨拶などの定型句、はい/いいえなどの基本的な言葉、文脈から想像すれば大体分かることに対して翻訳機能を使おうとする場合、相手はさすがにうんざりしてコミュニケーションを取らなくなるだろう。したがって暗記必須であろう。

③サウジ王国の観光客向けレギュレーション

 サウジ連載でたびたび登場するムタワ(宗教警察)が権力を握っていた3年前までは逮捕から処刑までの権力を持つようになっていた(今は逮捕権ははく奪された)。そして、長らくの間、正しくふるまうことがどのようなことか?が明文化されていなかったが、今回ツーリストビザ発給に伴い明文化されたのがこちらの19のレギュレーションである(表.1)。最低限、これらを念頭に置いて行動をしたい。大前提、表.1の読解力がない人はツアー以外のサウジ渡航は避けたほうがいい。

表1.サウジアラビアでの取締行為および罰金金額一覧

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 余談だが、①において日本人女性のハラスメントの可能性を指摘したが、そもそもサウジ女性の人権が制限されていることが世界的に問題になっている(Wiki:サウジアラビアにおける女性の権利)ため、別途参照頂きたい。リンク内にもある女性の運転は2018年に解禁となり、渡航中に「どれくらいの女性が運転しているのだろう」と思い運転席を1000台以上見たが、女性が運転する車に遭遇したのは1回だけだった。

 サウジ渡航検討を考えている人に旅初心者はいない前提で、取るに足らない話(ビザ、服装、電源、両替、SIMなど)は割愛したが、友人であれば個別に連絡を貰えれば回答する。

世界遺産の場所と訪問難易度

 サウジアラビアの国土は広く、日本の約6倍の国土面積を持つ。サウジにある5つの世界遺産はそれぞれ200~600km程度離れた各都市に点在している。さらに言えば、各世界遺産は交通結節点となる都市に内在する世界遺産からそうでないものまで存在し、そうでないものの中には最寄り都市まで僕が行ったものの世界遺産まで訪問できなかった場所もあるため、次訪問を検討する方が二の舞にならないようにここにまとめた。

表2.サウジアラビアの世界遺産一覧(5つ。すべて世界文化遺産)

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ー概要
各世界遺産の内容はググると出てくる。ここでは最寄り都市、そこからの距離、それらを踏まえた訪問難易度をまとめた。アクセスと補足について番号を振って記載した。最後に写真を数枚ずつ載せた。

ーアクセス
①②は各サウジNo.1、2の大都市内にある。
③④⑤は地方都市からアクセス可能。 ③は東部、④は北西部、⑤は北東部。西部の街はジェッダから、東部の町はリヤドからバスあるいは飛行機。ジェッダやリヤドから各地方都市はバスで5〜10時間程度、飛行機で1時間。

ー補足
①ディルイーヤのツライフ地区は、事前にメールで訪問&写真撮影申請をする必要有。こちらの連絡先、訪問日時を伝えておく必要有(営業時間:日~木曜9-17時。連絡先はWebサイト参照)。
④マダイン・サーレハは、なんと2020年まで修理をして閉まっている。
⑤世界遺産のJubbahのエントランス要注意(営業時間:日~木曜7時半-15時)。またハーイル市内でレンタカーとタクシー貸切により村の訪問を試みたが全滅。あるとすればハーイル外からチャーター車で向かう、あるいは(お勧めしないが)ハーイルの空港でレンタカーを借りる方法が有効。

ー世界遺産、あるいは最寄り都市の写真

①リヤド(首都)

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②ジェッダ(第二の都市)

ジェッダ旧市街の街並み。ベランダが突き出しているのが特徴的。

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③ハフーフ

世界遺産「アハサー=オアシス」の洞窟の中の部屋。外は40度以上あるが、この洞窟内は20度と涼しい。

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洞窟の外からオアシスを望む

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④アル=ウラ

50mを超える象の巨岩。このエリアは巨岩が散在

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⑤ハーイル

ハーイルのランドマークのモスク

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サウジアラビア観光を終えて

 最終的にはサウジ王国を絶賛するNoteには必ずしもならず、一人旅の女性にはお勧めできない!と結論付けてしまうこと自体、僕としてももどかしい気持ちはあるが、逆に、ポジションを取る必要のない僕が示せる現実であることから、これをサウジ観光の総集編として締めくくることとした。サウジの観光客を増やそうとしている方々、ジェンダー論の識者、コスプレイヤービジネスマンのようなポジションを持った諸先輩方からは批判が来るかもしれないが、N=1の実体験の主張をどう曲げることができようかと主張しておく。

 今回、サウジ王国の観光ビザを王国史上初めて開放したことは意義のある事であるし、今後観光客が世界中から流入することは火を見るよりも明らかである。これらのうねりが、多少時間がかかったとしても、現在起きている「不」を解消してくれることを期待して、僕はサウジを後にした。

 最終的に5つの世界遺産の都市を訪れたが、遠景含めて4つ、実際に立ち入った世界遺産は3つで終幕した。しかし辺境訪問という目的は十二分に達成をした。サウジアラビアという元・閉ざされた王国は、気候、植生、宗教観、ライフスタイルなど、あらゆるものが日本とは異なり、実際に辺境の地であったのだ。特に、裕福な国家基盤のためにテクノロジーや外資の恩恵を受けつつも、外国と物理的に閉ざされた、ある意味不安定なバランスにある現地の人々との交流はサウジに行かないと味わえないだろう、とても興味深い経験となった。

 辺境は、だいたいにおいて時間とお金はかかるし、うんざりすることや予定不調和なことが多い。サウジアラビアもそんな辺境の地の一つであった。予定不調和を味わうことと、一次情報に触れる体験をいろんな場面でできたことの2点は筆舌に尽くしがたい旅の醍醐味であると改めて思った。
 そんな辺境の地もまた僕たちの世界の一部であり、見方によっては、彼らにとっては世界の真ん中ですらあった。

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