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自然の叡智ペリトモレノ氷河

 アルゼンチン中部のペリトモレノ氷河。最寄りの街エルカラファテから西に60kmバスで1時間半の場所に位置する氷河だ。

 南米はアンデス山脈南端に位置し、南パタゴニア氷原からこの場所に氷河が流れる。氷河が行き着く先には三日月型の川があり、川の下部にはアルヘンティーノ湖という琵琶湖の二倍程度の、青色に輝く湖がある。紛れもなく青いこの氷河が瓦解して、川とその先に注ぐ湖を形成している。

 氷河が果てしなく青い理由は、単に純度が高く高い氷だからだ。中を通る光は多くの波長の長い赤い光を吸収し、青い光だけを残すためだ。ではなぜ手元の氷が透明で氷河が青いのか。それは氷河が何十メートルもあるからだ。
 そして川や湖が青い理由は、純度の高い氷河だけで形成された水の集合体であり、そこには動物やプランクトンなどの生物がいないからだ。

 氷河の出口は幅にして約5km、氷河の高さは50〜70m、そして氷河の下にはその倍の高さの水面下の氷が存在している。我々は、そこで氷山の一角を見る事ができる。そしてこの氷河にはパタゴニア氷原から絶えず氷山が流れ、流れては川に注ぐ場所で瓦解しており、世界でも数少ない(3つしかないらしい)地球温暖化の下において後退してない氷河とのこと。

 僕はツアーに参加したわけではなく、個人でローカルバスで氷河へ行き、氷河クルーズに参加した。今回僕は機を逃して行けなかったが、もし氷河の上を歩きたい場合は、ハイシーズンならば3日以上前に予約をしてツアー参加する必要があった。そしてそのツアーはショート(1.5時間)とロング(3時間)があり、経験者の友人によるとロングがおすすめらしい。

 一部しか見られなかったのだとしても、本当に青い氷河と湖は素晴らしかった。前置きはこれくらいにして、異世界感のある氷河を、ぜひ見て欲しい。

 愛・地球博のメインテーマに「自然の叡智」との言葉があるが、宗教史学者の中沢新一氏がテーマ決定のずいぶん前にこの言葉を生み出しており、その際の言葉がじんと響いた。

自然は人間に、その富を惜しみなく与え続けてくれました。
生み出す力を持った自然は人間に叡智を与え、技術の力を使って、自分の中からエネルギーや資源を取り出すことを許してきたのです。
けれども人間は、恩恵に対して十分に報いることがありませんでした。
そのために自然は人間への愛を失いはじめています。
だから、二十一世紀に私たち人間が取り戻さなければならないものは、自然と生命への共感にみちた、叡智のふるまいなのです。

 自然は、常に与える側にある。もちろん今の世の中ではオーストラリアの火災や地震や台風の天災で奪うこともあるが、第一義的に与える側にある。そんな事をずっと考え、ペリト・モレノでの氷河を興奮しながらシャッターを切った。

それでは。

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