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【漫画】「担当に見てもらっているのに賞が取れません」という相談

●●時々いただく相談●●

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「担当の言う通りに直しているのに賞が取れない(会議に通らない)」
「担当が全然ネームを直してくれない。結果も出ない」

という、感じの、

「このままこの担当さんと作ってて大丈夫なんでしょうか?」

的な相談をされる事があります。
ぶっちゃけ、どんな感じで作品作りが進んでいるのか分からないので、何とも言いにくいところはあるのですが、もし「合わない」と思ったら、他の方に見てもらうのも良いと思います。
医療系の世界で言う、セカンドオピニオンというやつですね。

ただ、そもそも、漫画に対して色んな考え方の編集さんがいますし、

・作家である自分が現在どう評価されているのか
・自分を将来的に担当さんがどうしたいと思っているのか
・担当さんそのものが編集部内でどういうポジションなのか(これは作家側には分からない事も多いと思います)
・担当さんが新人育成をどういう風に考えているのか

など、色んな要素が絡んでくると思います。
率直に担当さんと話をしてみるのが一番だと思います。
連載を一緒に目指しているような段階に近付く程、意思疎通は深くなっていると思いますし、新人であるほどここの部分をお互いに(特に作家側が)掴めていない事が多いのではないかと思います。

これは自分が4誌で担当についてもらっていた事と、自分が今担当する側になってみて、という覚え書きというか、脳内思考の垂れ流しです。

※追記
この文章を書いている主の一人称が分かりにくいので、
担当(自分)
と後から修正しました。

意思疎通が図れていない事には、目指すところも掴めない

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【とにかく数を描く期間、と思われている】
「賞が取れない」のは、単純に現在の作家の力量が足りていないパターン。
この時期はとにかくひたすら数を描くしかありません。
担当(自分)個人は、「ネームをいくら直してもトータルで完成原稿まで作らないと全体の能力が上がらない(上がりにくい)」と感じています。
とにかく完成原稿の数。
・画力が足りていない
・センスは感じるが足りない部分が多い
・ネームは既にレベルに達していると思われている
みたいな場合に、
「細けぇ事はあまり言われず、ひたすら原稿作らされる」
という状況になるのではないかと思います。

担当(自分)は、自分でも描いてた事があるのと週刊アシなどやっていたので、この「ええから数描けや」タイプ。
描く以上に上手くなる方法はないと思っています。

【うーん……、取り敢えず名刺だけ渡しとくかなぁ……、というラインの場合】
名刺を渡す、という行為自体にコストはかからない(タダ)ので、割とホイホイ名刺をくれる方もいます。
そういう方にはどんどん食らいついていくしかない。
自分との相性、自分の何処を評価してくれているのか、良く聞いてみましょう。
やっぱり自分の位置づけを聞いてみるのが一番。
それか、黙々と描く。

他では全く名刺がもらえずに、やっと1人だけ、名刺をくれた人なんです。
他に持ってくアテも見てもらう人もいません。みたいな場合は。
どシンプルに言うと、まだ力量がある一定のラインに届いていないのかもしれません。
他の方にも興味を持ってもらえるように、やっぱり沢山描いて上手くなりましょう。

編集さんって大手になるほどド新人さんの原稿を見る機会が多く、何なら定期的に連絡を取るような人だけでも10~30人ぐらいになったりすると思います。
そうなると編集さんの中での優先度って、

・現在連載中の作家
・連載会議に出すつもりの作家
・読み切り、増刊を狙わせている作家
・賞を取らせたい作家
・その他の作家さん

という感じに、多分なります。
この優先度を上げていくのが大事だと思います。

担当(自分)はこの、

「手持ち新人達の中でトップグループにいたけどそこからこぼれ落ちた瞬間」

を、自分で描いていた時に作家側として感じ取った事があります。
漫画家志望ってなんぼでも掃いて捨てるほどいて、上手い人も後から後から湧いて来ます。
ケセランパサランより簡単に湧いてくるので、とにかく気を引き締めて黙々と前に進みましょう。

「キレのある作品を作って見せるか」
「数を回してやる気を見せるか」
どちらかではないかと。

ただ、数だけを回して質がついて来ない、みたいな事にならないように、考える事はきちんと考えましょう。(ありがち)

【手持ちがあまりいない or こいつ(人間が)面白ぇ】
このパターンも上と同じですね。
やる気を見せて、編集さんのハートをキャッチするしかない。
面白い漫画を描く人って話をするとその人自身も面白い事が多く(そんな気がしている)、持ち込み等で直で話をするとこのパターンで名刺をもらう事も良くあります。

編集さんは現在どういう状態なのか

これって物凄く大事な事なんですが、なかなか掴めないかと思います。
もし、ここまで含めて話ができればとても良い関係ではないでしょうか。
(まあ、なかなか喋らないですよね)

・連載持ってないからとにかく連載を立ち上げたい
・ヒット作も持っていて、連載作品の数もあり、急いではいない(が、余裕があるので冒険できるかも?)
・とにかくヒット作を作りたいのか、自分が面白いと思うものなら立ち上げたいのか、自分の雑誌に合う(優位性がある)ものを作りたいのか、冒険も辞さないタイプなのか、今はどういう時期なのか
・(何なら)何を担当していて、どういう作品が好きで、どういう作品を立ち上げたいのか、聞いておく

例えば、ですけど。
「1回連載取っておけば2回目の会議に出しやすいからとりあえず1回とにかく経験させる」、という方針の方のお話も小耳に挟んだ事があります。
そこで酷くコケたら2回目のチャンス自体もなくなるんじゃない? とも思ったりするのですが、編集さんの考え方、戦略、雑誌の性格、そしてやっぱりあなたの作家性と向き不向き(ジャンルとか)が大きく関わってくると思います。

・自分(作家さん)のストロングポイントって何だと思いますか?
・何が足りないと思いますか?

みたいな話はしてみてもいい気がします。
「うっせぇよ、細けぇ話はどうでもいいから、どんどん描いて持って来いよ!」
と言われたら、まあ、そういう状態だと思いましょう。
あんまり描いてない人(描かない人)ほど、細かい質問が多い気もしています……(´・ω・`)


【自分でテーマを決めてみるのが良いんじゃないでしょうか?】

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昔、自分で描いていた時代に聞いた笑い話のフレーズとして、
「漫画の下手な漫画家に人権はない」
という素敵な一文があります。
あります。ありますよ。
人権はみんなに等しくあります。
でも、不味いラーメン屋に、
「でも頑張ってるからなぁ……」
と食べに行ってあげるでしょうか?
どうせなら美味しいラーメン屋に行きたいよね。

美味しいラーメンを出せるラーメン屋さんに、あなたもならなきゃなんですよね。

「直されたのに賞を取れない」
「直してくれないのに賞を取れない」

というのは、

「時間が無駄になっている」

と感じてしまう、という事かな? と思いました。

・今回は冒頭の掴みにとにかく力を入れよう
・背景頑張ろう
・キャラをとにかく立てよう
・バトルシーンに迫力を

自分で、1作毎にテーマを持って作ってみてはいかがでしょう?
そうすれば賞に落ちても、自分の中で意味を感じられると思います。
また、受賞も近くなるのではないかと思います。
もちろんこの1作毎のテーマも、担当編集さんと相談した上で作品が作れれば一番良いと思います。

時間が無駄になっていると感じるのはしんどいですが、受賞できないという結果は、今の自分のレベル感を現しています。
経験を積んで少しずつ受賞に近付いているのだ、という意識を持ちましょう。
ずっと受賞できない人が担当のアドバイスで突然大賞を取る、みたいなお話は夢物語です。
打ち合わせでの増減は、プラスマイナスで最大20点くらい。
まず自分で60点の地力を身に付けないと、80点の作品が作れません。

自分の目標はどこなのか

・その雑誌で連載すること、なのか
・どんな形でも漫画家になれればいいのか
・本が一冊出せれば満足なのか
・10年漫画家を続けたいのか
・100万部作品を出したいのか

何が、何処が、目標なのか。
その上で、次の1作が自分の作家人生の中でどういう意味を持つのか。
俯瞰で考えてみませう。

年100ページは描かないと、プロって難しいと思います。
年100ページどころか、トータル100ページ描いてない人にあれこれ聞かれても、正直なところ、
「まず100ページ描いてからにしましょう」
と思ってしまいます。

「まだキャッチボールも出来ないんですけど、どこのポジションが向いてるでしょう? プロになるにはどうすればいいでしょう?」
と聞かれても、
「毎日キャッチボールして素振りして試合に出て、1年頑張ったらプロがとかポジションがとか相談しようぜ」
ってなっちゃうと思うんですよね。
まあそもそも1年やって試合も出たら、どこのポジションが向いてるかとか、人に聞かないとも思うんですよ。

今日の締め

・担当さんと良く話をしよう。
・描け。とにかく描け。考えて描け。テーマ持って描け。描いた数は裏切らねぇ。
・東村アキコ先生の、「かくかくしかじか」読め。


次に記事が上がるのは、また半年後でしょうか……。
そのうちまた、お会いしましょう。

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※後日、追記しています

いきなり持ち込みで、
「今、あんた編集部でどんなポジション?」
みたいな事を聞くのはやめましょうね。
ある程度何作か一緒にやってみて(または良好な関係が築けた上で)の、そこから先のコミュニケーションだとは思います。

どっかの誰かが変な記事書いたみてーだから、いきなり変な事聞いてくる奴が増えた、みたいになっても困りますので……。
基本は描くしかないですし、「誰かと作る」が煩わしい方は、今の時代は個人で収益化を目指す事も可能だと思います。
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追記

こちら、今回の話と対になるお話を、もう一つ書きました。
良かったらこちらもどうぞ。

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