6.トマトは寒さに強い
そもそもトマトは寒いと育たない、これは誰もが知っている事である。
教科書的に言えば、夜のハウス内の温度は少なくとも8℃以上、出来れば12℃以上で管理すること、5℃を下回ると低温障害が出始める、とある。
しかし、私は実は就農一年目の冬はハウスを加温することなくトマトの越冬に成功していた。もっとも最初から無加温による越冬を狙ったわけではなく、近隣農家の先輩から譲ってもらった重油タンクに給油したところ底から油が染み出してきたため、重油を購入することが出来ず、やむを得ず暖房無しで栽培しただけではあるが。
この経験から、5℃を下回ってもトマトが枯れることはない、それは分かっていた。
では、低温に遭遇した時トマトはどうなるのか、そう疑問を抱きインターネットで調べてみると、タキイ種苗のHPに興味深い文言を見つけた。
「トマトの茎葉、肥大した果実は耐寒性が強く、0℃くらいの低温でも被害を受けることは少ない。しかし、花芽や開花中の花器は寒さに弱く、2℃くらいから被害が出始める。-1℃で約半数が枯死する。厳寒期には保温が必要。」
つまり、葉や果実は0℃でも大丈夫なのだ。他にも埼玉県農業技術センターの実験によると以下の通りである。
「施設栽培トマトについて、震災や雪害などの災害時における停電により暖房機が長時間にわたり停止し、トマトが低温に遭遇した場合にその後の生育に及ぼす影響を解明するために試験を行いました。
試験の結果、-1.6℃を下回ると枯死が始まり、-4℃前後では、完全に枯死することが明らかになりました。また、-1.7℃、3 時間以上に遭遇したトマトは、4 日で枯死しましたが、2 時間のものは、3 週間程度で回復したことから、-1.7℃、2 時間を境に低温障害を受けることが明らかになりました。また、枯死はしませんが、見た目に障害がなくても、生育抑制が始まる温度は 5℃であることが推察されました。」
つまり、-1.6℃以上をキープすればトマトは死なないのである。私が栽培している福岡県の海沿い地域でこの条件はそう頻繁に起こることではない。また、この程度の条件であれば自作のバイオマスボイラーと少ない資源で十分対応できるものである。
花は2℃からダメージを受けてしまうため、開花時期を厳寒期から外す必要があるが、バイオマスエネルギーとトマトの組合せは成立しそうだということが分かった。
後は実践あるのみ。幸い今年の年始は例年より寒く0℃になることは珍しくなかったため、ハウスの加温を止め、既に着果しているトマトがどうなるかを観察することにした。
結果は、多少葉が傷んだが、果実の品質に問題はなかった。トマトは温度で着色スピードが決まるため、赤くなるまで非常に時間はかかったが、収穫量にも問題はなかった。
トマトは十分寒さに強い。
この事実により、事業の構想が固まり始めた。