12.スモールスタート
今回のメタン発酵事業は今までの経験を活かして、スモールスタートを心掛けている。
トマト事業はサラリーマン感覚で始めてしまったせいで、やることなす事全て大きく始めてしまっていた。そのため失敗に終わった時に、リカバリー(特に片付け)に多大な労力を割いていた。
話題にはなるため多くの協力者に出会うことが出来、メリットも多かったが数々の失敗で資金が底をついてしまったため、今後は小さく始めて大きく育てるつもりだ。
幸いにも3年間、バイオマスと農業を掛け合わせた事業に真剣に取り組んできたことから、派手なことをしなくても周囲の方々に十分本気であることを分かって貰えるため、資金提供まではいかなくとも知恵は提供して貰えるため、小さく始めるにはまず問題ない環境が整っている。
そこで、2021年は実際にメタン発酵によって液肥を試作し、その成分分析まで行うことを目標に掲げている。そして、2022年は実際にトマト栽培で利用する計画だ。
液肥になった時の成分は原料の成分で決まる。さらに専門家へのヒアリング結果から、メタン発酵効率は投入する原料の状態が非常に重要であることが分かっている。これは分解のしやすさに加え、詰まりやメンテナンスの頻度に大きく影響するためだそうだ。
魚や肉は骨を取り除き、細かく粉砕した状態にする。野菜に関しても同様に細かく粉砕する必要がある。まずはこういった条件を特に手を加えずにクリアしている材料を探す必要がある。
そこで今目をつけているのは出汁をとった後の鰹節である。
和食に欠かすことの出来ない鰹節を原料にすることが出来れば、原料の調達も比較的に容易に行うことができる。
魚系の原料はタンパク質が多く、その分解には特殊な工夫が必要とのことである。具体的にはメタン菌の活動の邪魔になるアンモニアを吸着除去するために牡蠣殻を入れ、さらに微生物による分解を促すため住処として多孔質構造の物質を入れることが有効とのことだ。
多孔質構造の物質というと、「炭」である。幸い、竹炭の製造は容易であるため、調達先に問題はない。
発生するメタンの中に含まれる硫化水素を脱硫する装置は新たに作る必要があるが、酸化鉄さえ準備すれば構造自体は難しいものではないため、小さいメタン発酵装置であれば、金額にして数万円程度、メタンの貯蔵圧力さえ気をつければ法令的にも問題なく簡単に制作でき、試験もスタートさせることができる。
そこでまずはこの装置を作ることから、メタン発酵事業をスタートさせることにした。
トマトの栽培、販売、ブランディングと平行して進めて行くため、タフな期間が続くがゆっくりでも一歩ずつ進んでいくつもりである。