10.最適な栽培方法を求めて

Cultivation Optimized Space, Energy & Time
空間、エネルギー、時間を最適化した栽培方法という意味(正しい英語かどうかは不明)だが、何がどう最適なのか。

最適の定義は時と場合により変化するものであるが、我々は栽培にかかるエネルギー消費をミニマムに抑えつつ、事業として無理なく継続できることが最適だと考えている。

ハウスが広くなればなるほど、長い時間栽培すればするほどその分エネルギーとカネが必要となる。そこで、エネルギー消費の少ない作型で、且つ空間と時間をより効率的に使いコストも抑える栽培方法(COSET)を開発したというわけだ。

開発に際して当初は作業用の通路幅を狭くし、栽培列を増やすことで単位面積当たりの栽培本数増加を目指した。

だが、これは大失敗に終わる。作業通路が狭すぎて台車は走らないし、身体が枝葉、果実に引っかかって前に進みにくいため、手入れ作業や収穫の効率が著しく下がってしまった。

そこで、次は高さ方向を有効に使うため、栽培ベッドの高さを低くし、5段目の果房まで収穫することを目指した。

しかし、この結果も成功とは言えなかった。
収量は良かったが、4段目になると男でもつま先立ちでの作業となり、5段目ともなると高下駄を履いて作業することになり、作業効率は大幅に下がった。更に栽培期間が長くなることで、病気の発生リスクも高く、それらを抑えるための環境制御に注意が必要で、特に暖房エネルギーを多く必要とした。また、1段目と5段目の味の差も大きいことから販売時の気苦労も耐えなかった。これは、5段目まで育てるということは5段目の実が大きくなるまでは水遣りを少なくすることが出来ないため、その期間に育つ1段目の果実はどうしても味が水っぽくなってしまうからだ。

また、段数が増えれば増えるほど、脇芽と呼ばれる余分な芽が発生する場所も増え、手入れ作業のボリュームが増えるため、人手もその分必要となる。このようにエネルギーや時間の面で弊害が出てしまった。

そこで、次は3段目の果房までしか収穫せず、且つ株と株の間を狭くすることで、栽培密度を上げることを目指した。長期多段取り栽培では株と株の間は40cm程度だが、その距離を16cmまで縮めてみたのだ。

この取り組みは功を奏した。密植し過ぎることで病気の発生と、日当り不足による収量と品質の低下を懸念していたが、そのどちらも大きな問題にはならなかった。

一方で背の低い人では3段目の手入れ作業が困難という点、そして1段目のトマトの味がやや悪いという点が課題として残った。

味の良くないトマトは、販売時の値付けが難しく、また顧客の評価を下げる要因になるため扱いが難しい。直接、「味落ちたねー」などと言われるとイチから理由を説明したくなるが、何を言っても言い訳にしか聞こえないし、そんなことをしていてもキリがない。

そこで、そもそも3段目まで栽培すると手入れ作業性の問題も発生するため、思いきって2段目までしか栽培せずに、その代わり味を上げようと考えた。

そうして行きついたのが、上下の空間を利用できるダブルベッドで栽培し、2段目の果房までしか収穫しない方法である。

この方法によって、単位面積当たりの収穫量を確保しつつ、一株あたりの作業時間の削減、栽培期間の短縮、製品の品質向上が実現出来ると考えている。

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