14.販路開拓とブランディング
COSETによって栽培面積当たりの収量を上げることが出来たとして、次の課題は販路である。
COSETでは通常のトマト栽培の4倍近い栽培密度となるため、短い期間に大量に出荷することになる。
今までは、近隣の産直コーナーに分散して出荷することでなんとか単価を維持していたが、それでは週1000パック程度が限界である。というのも、前作のピーク時に週1500パックを出荷したところ、捌ききれずに値段を下げて販売せざるをえない状況となってしまった。
就農当初からの出荷先、地元古賀市の産直コーナー「コスモス広場」では、度々テレビで放送されたこともあって、週末は一日50パック程度を販売出来ているが、その他の売場では一日20パックがいいところである。
一家庭が生活できるレベルの収入を確保するためには、約2000m2の栽培面積が必要となるが、その場合一週間当たりの出荷量は5000パックとなる。
ブランディングをすすめ、一日20パックをそれぞれの店舗で販売できるようになったと過程しても35店舗で販売してもらう必要がある。
自分で配送できる店舗数はせいぜい5店舗ほどなので、仲卸業者や委託販売業者と連携しなければ35店舗への出荷は到底無理である。
委託販売では、業者は売上金額から15~35%の手数料を支払うことになる。ロスを出すくらいなら値下げして売り切った方が得になるため、量が増えるとどうしても値段が下がる傾向がある。
仲卸業者にはスーパーのバイヤーと値段や数量を調整して契約してもらうことにる。バイヤーとしては仕入れ値よりも安く販売することは出来ないため、余らないように仕入れる。そのため、簡単には大量に契約はして貰えない。
こういった点を考慮して、バランスをとりながら複数の業者と連携することで利益が出る単価を確保しなければならない。
さらに一日20パックの販売は、簡単そうに見えて難しい。
トマトは生産者がとても多く、特に産直コーナーではそれぞれ自慢のトマトをそれぞれの売場に所狭しと並べている。
そのため、時期によってはだぶつくことも多く、そうなると一斉に値下げ合戦が始まってしまい驚きの価格になってしまう。
我々のトマトは市場価格の変動に関わらず一定の価格で販売する方針なので、倍近くの値段になってしまうこともざらにあり、そうすると一日10パック売れないこともある。
ここで難しいのは、ならばと10パックずつ並べてしまうと売場で埋もれてしまい、全く売れなくなってしまうため、最低でも20パックは並べる必要があると感じている。これらを売れ残らないようにどうすれば良いかを考える必要があるのだ。
値段を下げればいくらでも販売できるが、それでは事業を継続することは出来ない。そこで定価で安定した量を販売するには、それぞれの売り場でFromTomatoのファンを増やし、リピートしてもらう必要がある。
つまり、お試し→ファン化→リピーターという流れを生み出すブランディング戦略を考える必要があるのだ。
仲卸業者にしても委託販売業者にしても、利益を生み出す商品を扱いたいはずなので、FromTomatoブランドを確立することが、販路拡大につながることは間違いない。
さて、どのようなブランディング戦略を実践するか、腕の見せ所である。