雪と手袋
1月がものすごいスピードで過ぎ去って
もう2月になった
あたりまえのように恵方巻きを食べて
あたりまえのように豆をまいて
あたりまえのようにバレンタインに心を躍らせる
そんな2月の始まりだ
そして今日は、2月8日
僕はいま家(シェアハウス)にいる
同世代の学生や社会人の男女5人が1つ屋根の下で
みんなで和気あいあいと暮らしているのだが
そんな温もりに溢れたシェアハウスのリビングのこたつで
1人で座っている
みんな出かけているのだ
金曜日の晩は家には人はいないはずだ
なのに
僕はこたつに座っている
(誤解を避けるために言うが、こたつの上に座っているわけではない。
もうそれはどうかしている。)
ただただ寂しい
そして何より寒い
寂しさは寒さを倍増させるのか
普段聞かないシティポップを聞いて
街に出かけた気持ちになったり
慣れない手つきでホットジャスミンティーを作って
温もりを無理やり作ろうとしてみたが
やっぱり寒い
明日は東京で雪が降るそうだ
年に数回の雪だ
スマホのニュースで
それを見て小窓から映る空を見ながら
小さくつぶやいた
『雪か。。。』
小さい頃は雪が降っていたら
『雪や!!!』
と家を飛び出して、黒い分厚いスキーの手袋をひっぱりだして
雪合戦をしたり
雪に勢いよくダイブしたりしたな
あの時の勢いはどこにいったんだろう
雪をみてはしゃがないのは
「大人」になったからなのだろうか
そう思いかけた時
かすかに心に残る「こども」の自分が語りかけてきた
そんな大人でいいのか?
おまえは確かに大人だ
今年でアラサーだ
おっさんの扉を確実に叩いてる
でも
雪が降ったら、全力でダイブする大人であれよ
もしこどもができたら一緒に飛び込む大人であれよ
こども心を無くした大人は
老いていくだけだよ
・・・。
気のせいか
「こども」がそんな弁が立つわけない
俺は明日雪が降っても
雪に飛び込まないのかな
きっと飛び込まないよな
寒いし
濡れるし
痛いし
僕は、寝るためにこたつの電源を切って
自分の部屋に向かう
部屋の奥にしまってあった
少し小さく感じる
ほこりがかった
黒い何かを取り出し
ベッドの横においた
おやすみなさい
『雪』プノンペニスト