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『クリーチャー・デザイナーズ』のビターな現在

ものすごく楽しみにしていたドキュメンタリー映画。だが観賞後とんでもなくビターな気分にさせられるとは思わなかった。

70〜80年代にハリウッドを席巻したSF映画。その立役者たるSFXマンたちが生き生きと話し始める。レイ・ハリーハウゼンやロン・チェイニーといった映像作家に導かれ、新しい技術を生み出していったこと。

エポックとなった作品群は『スター・ウォーズ』『遊星からの物体X』『グレムリン』『ターミネーター2』などなど。特殊メイク、ストップモーション、アニマトロニクスのような味わい深い映像技術の数々が紹介される。

しかし『ジュラシック・パーク』で流れが変わる。CGの登場である。途中まで同作にアニマトロニクス担当として参加していたフィル・ティペットはCGの採用を決めたデニス・ミューレンと袂を分かち意欲を失い体調も崩す(のち関係修復)。

登場する人物たちが口を揃えるのはSWプリクエルのヨーダ。「スチュアート・フリーボーンが創造したヨーダは最高だった。なぜあんな不自然な動きをしてしまうようになったのか?」ルーカスの側近ミューレンですら口を濁す。

かつてSFXマンはリスペクトされていた。だがいまは日本のアニメ業界よろしく資金不足と納期に苦しめられている。誰もが天才と評した『遊星〜』を担当したロブ・ボッティンはひっそりと引退している。

故人となったスタン・ウィンストン(ジェームズ・キャメロンとともにデジタル・ドメインを設立)の息子マット・ウィンストンは技術を伝承する教育の必要を説く(本作では触れられていないがその技術を伝える「スタン・ウィンストン・スクール」が存在する)。

サブスク配信による粗製濫造(良作もあり一概に否定はできないが)で激震が走っているのはハリウッドもまた同じ、ということに気づかされる。

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