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未委託里親期間の過ごし方

2023年2月10日(金)
 珍しく雪予報。
 雪はまだだが、空気がいつになく冷たい。
 TVをつければ、雪道の歩き方、水道管の凍結注意など雪に関するニュースであふれている。
 ノコ(娘小3)が登校する頃になって、雪がちらちら降ってきた。
 昼に向けて降りが激しくなるが、夕方まで雪のままか、雨に変わるかは微妙で上空の寒気次第とのこと。
 スノーブーツに傘をさし、ノコが登校班の列に加わる。
 雪の降りによっては下校時刻が早まるかもしれない。
 休日のむーくん(夫)とともに心のなかで定時に帰ってきますように、と願う。

 先日、乳児院から電話があった。
 未委託里親の期間にボランティア活動をしていた施設だ。ノコとの関わりはない。電話の心当たりがなく、戸惑う。
 話を聞くと、職員向けの冊子に未委託里親さんの心境や施設側に求めることについての記事を載せたいとのこと。小さな欄で、このまま電話で応じることになった。ちょうどむーくんも在宅。当時を振り返りながら2人で話した。

 里親登録後、児相(児童相談所)からノコの紹介が来るまで、私たち夫婦の未委託里親期間は1年だった。
 登録が済めば必須の実習や研修はなくなる。
 里子の紹介はいつ来るかわからない。生涯、来ないかもしれない。
 今や私たちの地区にも共働きの里親家庭が複数あるが、私たちが登録した当時は共働きだと紹介されにくいという話を耳にした。里子も保育園ではなく幼稚園へ。紹介を待っている間、働くとしてもすぐ辞められる環境でないと厳しい。
 家にいて、ただ児相からの連絡を待つ日々は正直しんどい。待つ身はツライのだ。
 だから、身軽に動けるうちに動いておこうと思った。里親登録の研修資料にあったボランティアを受け入れている施設のなかから、近いところを選んで申し込んだ。電話があった乳児院がそこだ。

 夫婦で週1回、抱っこボランティアをした。
 午前中の数時間、乳児を抱っこし、ミルクを飲ませる。おむつ替えやミルク作りは保育士さんまかせなので、赤ちゃんを抱いてあやすだけの美味しいどころ取りのボランティアだ。 ベビールームに入る乳児数には波があった。ベビーベッドが空っぽの日もあれば、5人もいて夫と2人の腕では足りない日もあった。あっち、こっち、そっちでも泣く。
 「はいはいはい、待ってね待ってね」と声を掛けてまわる。
そんな忙しい日はたまにで、たいていはのんびりとした時間だった。
 薄いカーテン越しに差し込む陽差しはやわらかく。オルゴールがかなでる子守歌のCDは眠気を誘う。甘いミルクの匂いがする赤ちゃんを抱いて、ベビールームをゆっくりさまよう。 口をへの字に結んでなかなか笑わない子もいれば、何が楽しいのかニコニコ朗らかな子もいる。女の子、男の子、名前から判断するだけだが国籍もさまざまだ。
 たくさんの赤ちゃんがベビールームを通過していく。

 我が家のノコは児童養護施設からだったので、既に幼児だった。
 実子のいない私たちにとって、結局乳児とのふれあいはこの乳児院でのボランティア期間のみとなった。ここでの赤ちゃんの思い出に、私たちは知らないかつてのノコの姿をそっと重ねた。
 里親登録が済むと、身近に子どもがいないため、私たちの生活から乳幼児が消える。
 里親ができるボランティア、児相や里親会が開催する研修に積極的に通うことで、自分たちが里親であることを忘れずに済み、子どもを育てたい気持ちを維持できた。
 施設に通うと、さまざまな人に出会う。
 保育士などを目指す学生さん。里親登録の実習に来るご夫婦。里子との交流に訪れる里親さん。里親登録前のご夫婦はかつての自分たちを見るようでまぶしいし、交流中の里親さんは将来自分たちもなれるか、なれないか、とまなざしに憧れと不安が入り交じる。
 心が揺れることがあっても、ただ待つよりはよい。

 そんな話をむーくんとした。
 電話を切った後、「懐かしいね」と笑った。職員さんが私たち夫婦を思い出してくれたことが嬉しかった。
 
 雪は雨に変わり、ノコは定時に下校。
 私たちはつつがなく大人時間を過ごせた。
 インターホンが鳴り、玄関ドアを開けると、冷気をまとったノコが飛び込んできた。


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森谷はち🐝里母&子育て&読み聞かせ
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