【超きつかった】東京大学院 物理工学専攻&物理学専攻合格体験記【大学院入試】
初めまして、Fromと申します。ちょうど先日(4/12)、東京大学の学部および大学院の入学式がありましたね。自分は大学院入学式に参加したのですが、薬学研究科長および来賓の方の祝辞では「受けた恩を次の世代に伝えていく」ということの大切さを説かれていました。
だから、というわけではありませんが折角なので自分が東京大学院に外部から受験して第一志望・第二志望の研究科それぞれに受かった体験記を書こうと思います。
はじめに
まずこの記事を書いている人間が何者か、ということです。
筆者はもともと都内の私立大学(大学群的にはMARCH以上のどこか、程度に濁しておきます)で学部を過ごし、物理系学科から東京大学院を受験しました。受けた専攻は①理学系研究科 物理学専攻(理物)と②工学系研究科 物理工学専攻(物工)で、両方とも合格を頂きました。
で、まぁあんまり周辺にそういう(東大に外部から入った)人がいなかったせいか後輩とか、その他いろいろな繋がりでよく聞かれるので、体験記としてまとめた記事を作ろうかなという気持ちになりました。きっと地方の人だったり、他にも外部から受けようと考えている人はいらっしゃると思うのでそういう人の役に立てばいいかなという気持ちです。
大学院入試って簡単?
いわゆる学歴ロンダリングという言葉があるように、大学院入試は学部入試より簡単で「簡単に東大卒の学歴が手に入ってお得!」みたいな考えの人もいると思います。この記事を読んでいる人の中にもしもそういった気持ちがあるんだとしたら、これだけは言わせてください。
とりあえず理物と物工はやめとけ。
理由は本当に簡単でコスパが全然ヨクナイ。学部よりは多分楽だけど、あなたは大学4年生になって大学受験をしたあの時(高3)の熱量が持てるでしょうか。いける!と自信を持って言えるあなたはきっと大丈夫なので受験を検討してみてください。熱意があればきっと大抵のことは何とかなります。
工学系研究科:物理工学専攻の試験内容
基本的には以下に書いてあることですから、正確な情報が必要な場合はちゃんと調べましょう(年度によって違うとかあるし)。
ではまだ読んでいる人に向けて説明を続けます。
大まかに分けて、物理工学専攻の試験は4つに分かれます。内部の優秀な人間がどう感じているかはわかりませんが、どれも一筋縄ではいかない試験です。
TOEFL-iBT
数学:2時間半 6問中から3問解答
物理:4時間 4問
口述試験
さてまずは以下にそれぞれのテストの内容と、どう取り組んだかを(そこまで深堀りはしませんが)つらつらと書いていきます。個別に詳しい対策の話は別の記事でやる予定です。
①TOEFL-iBT
Listening,Speaking,Reading,Writingのいわゆる4技能それぞれを30点満点で評価される120点満点の試験です。ちなみに自分は68点で提出したんですが、これ多分物工の中だと本当に最低レベルの水準だと思います。英検の目安で言えば2級ぐらい。
内部でどのように評価されているのかは謎ですが、もし英語が少しでも勉強できるのであれば外部院からは高得点を狙いたい場所です。何故って、それは唯一「内部生と対等に戦える」場所だからです。
この部分だけは内部生も外部生も関係ありません。純粋な英語力と試験対策によって点数が出て、おそらくその点数に比例する形で入っているはずです。
自分は大学3年から4年に上がるまでの間に1回受けて、そこで65点でした。その後もう1回受けたんですがあまりうまくいかず68点。出すか悩む水準でしたが、後述する数学や物理の試験の方が大事だと思ったのでそこで終わりにしました。
②数学
一応は「一般教養科目」として入っている数学です。こちらに関して最も重要なのは「6問出題されて、そのうち3題を解く」という部分です。
分野は
1:微分積分および微分方程式
2:級数・フーリエ解析および積分変換
3:ベクトル・行列・固有値(線形代数)
4:曲線・曲面
5:関数論・複素数
6:確率・統計,情報数学,その他
となっています。分野横断的な複合問題ではなく、これらそれぞれが1題ずつ出題されるイメージをしていて問題ありません。そして重要なのはここで「何問捨てるか」です。得意不得意もありますし、6問すべての対策をしてできるだけ高得点を狙うのも戦略のうちですが、自分は2問を捨てて挑みました。
6つの分野のうち4つは真剣に対策して、残り2つは少しかじった程度。3問捨てなかったのは、万が一難問にぶちあたってしまったときにその問題から逃げるためです。
自分としてはこの戦略はそこそこ正しかったような気がします。全てに手を回すほどの実力と時間が自分にはなかったので、4つに絞ってしっかりと解けるようにして十分に勝負できました。
③物理
さて、大問題児です。この物理をどう対処するかが全てといっても過言ではないのですが、おそらくとてつもなく大きな比重を占めている物理。4時間4問というとんでも時間設定もさることながら、1つ1つの問題がまぁそれはそれは難しいです。他所の(東工大とかの)大学院の物理の試験と見比べてみれば分かると思いますが、レベルが違います。
自分が初めて過去問をやったときは、マジで大問1の[3]から先が解けないみたいな事態にすらなってました。解けないどころか何言ってるのか分からないものもちらほらありました。
で、対策なのですが身もふたもないことを言うと「基礎が固まったらひたすら過去問に特攻する」というのが自分の方針です。基礎が固まったら、ってどういう状態なのと思うかもしれませんが自分で考えてください……とつっぱねるのもアレなので、自分なりの答えを示しておきます。
それは「過去問の解答を読んで、解答を理解できればOK」というのが判断基準です。過去問を解いてみて、「解説を読んで分かる」範囲が解けていれば合格できるのであればやる価値があると思います。
自分はいろいろと探し回って約15年分の過去問とその解答例(解答例はいろいろとある、多分間違ってるのもちらほら)を手に入れて全て解きました。分からない部分があれば解答を読み、解答を見ても分からないところは調べ直したりしました。
そうして15年以上の過去問を解き終わるころには、ある程度戦える水準になっていたと思います。
物理に関しては有料で(1問で100円とか)過去問の解説記事を投稿しようと思っています。ただし問題は一切掲載しない(著作権的に)ので、過去問自体は他所で手に入れてもらうしかありません。
ちなみにどうしても入手方法がないという方(例えば地方の人とか)は、コメントに連絡先を載せて(別にどんなものでもいいです)くれれば対応しようと思ってます。そっちは当たり前ですが自分で作った物ではないので無償でお渡しします(過去問を大っぴらに掲載するのは避けたいというだけで、渡したくないとかそういうことではないので遠慮なく聞いてください)。「過去問貰ったから用済みだわ!じゃあな!」しても一向に構いません。
解説記事に関しては解答を書くだけじゃ価値が低すぎるので、行間を読む必要がない、初学を終えた段階でも読み進められるようなものを作ります。コメントとかで分からない場所を言ってくれれば返信や追記もしようと思います。
④口述試験
発表時間 7 、質疑応答 13 分。内容は「自分が行っている卒業研究か、それを行っていない場合は研究計画」です。A4横向き×4枚までのプレゼン資料を作って、それをカメラで写して発表します。
これは実は裏ボスで、僕が入学した後に内部生から聞いたんですがめちゃくちゃ対策してるんですよね。早い人だと5月とかから、研究室の先生とかにも見てもらってプレゼンをブラッシュアップしているって聞きました。
自分の研究室では普段から卒業研究に関連してプレゼンをさせられていたので、それをまとめ直して作ることで作れましたが何も考えてないと即死します。生半可な感じで作ってしまうと相手は東大の教授なのですぐに痛いところを突かれて終了です。かなり優しい質問をしてくれますが、それでも「うわそんなところ聞くんだ」みたいな質問も絶対にあるので、自信がない場合は対策が必須です。
しかも筆記試験の合格発表の翌日には口述試験なので、必ず事前に準備した方が良いと思います。自分は実は「筆記落ちたかもな、いいか」と思って準備してなかったら筆記通ってて12時間でプレゼンを作って発表するハメになりました。我ながらアホすぎて草。
理学系研究科:物理学専攻の試験内容
例のごとくこちらを参照してください。内容は以下の3つです。
英語(TOEFL-iBT or TOEIC L&R)
専門科目 物理3問・数学1問 4時間
口述試験
①英語(TOEFL-iBT or TOEIC L&R)
これ実は自分が受けたときはTOEFL-ITPっていう普通の英語のリスニング+筆記の試験だったんですが、今年度から変更になるみたいです。で、ちょっと見てみたんですがTOEFLとTOEICで点数の換算を行うみたいです。その感想なんですが「普通の日本人はほぼ100%TOEICの方が良い」です。真剣に物理学専攻のみを目指す場合はTOEIC一択と言っていいレベル。
じゃあTOEFLなんて誰が使うんだよ、って思うかもしれませんがこれは「他専攻との併願」です。自分と同じように物理工学専攻と併願することを考えると、TOEICの対策なんかに時間を使っている暇はありませんから必然的に物工で出したTOEFLスコアと同じものをそのまま提出する流れになると思います。
TOEFLに関しては物工の方で書いたので割愛します。ちなみにもしも自分がTOEICを出すとします。僕は大学2年で完全にノー勉で受けたTOEICのスコアが770点(L:420,R:350)でした。多分真剣に対策すれば850点ぐらいは普通にいけると思うので、TOEFLで同じスコア取る労力とちょっと釣り合わないな……という感想です。
②専門科目
物工の物理同様、4時間4問の試験です。違うのはうち1問が数学の問題であるということで、難易度を物工と比較すると得意不得意によりますが物工より簡単な気がします。数学は本当に基本的な(行列の固有値とか、留数定理とか)ものでした。例えば物工と併願を考えているとしたら、こちらの過去問いっぱいやるというのは非効率かも。
一方で物理はそれなりに難しいです。それなりっていうか結構難しいです。物工と違うのは(イメージ的に)定性的な議論とかが出てくる点でしょうか。計算結果が物理的にどのような意味を持つのかちゃんと理解している必要があるんだなと思います。
この対策は実はめちゃくちゃやったわけではなくて、先ほどの物工で死ぬほど物理をやったので形式を理解するのと傾向をつかむために3,4年分やっただけでした。
③口述試験
口述試験に関しては内容を語ることが禁止されているので本当に当たり障りのないことしか言えません。ただ言いたいのは「受けるコースによって全然内容が違う」ということです。まずは受けるコースを調べてみて、それから考えてください。まぁ流石に志望する研究室の名前と、それぞれの志望動機ぐらいはちゃんと喋れた方が良いです。
別に圧迫面接されたり変な質問されたりするわけじゃないのでそこは安心してください。
自分が実際にやったこと
ここでは自分が学部生のとき、どのタイミングでどんなことをしていたかを書いていきます。
~3年生3月 TOEFLの対策とのんびり物理の勉強
3年生の時はあまりガチガチではなかったですがTOEFL対策をしてました。どう対策したらいいかとかはまたどこかでまとめる予定なのでそちらで。
で、物理の勉強は個人的に統計力学が好きだったんでいわゆる「久保統計」のA問題とかを解いてましたね。実力は着いたんですが、まぁ別に試験対策という面で見ると大きい意味はないです。
4年生4月~6月 卒業研究と並行して院試対策
卒業研究が始まった4年生。卒業研究のことが忙しくてあまり時間は取れませんでしたがバイトも辞めて院試の勉強に時間を使えるようにしました。ここでは過去問にまず手を出してみて、どれぐらいレベルが離れているのかとかを考えていた時期でしたね。1年分ずつ解いていって、基礎が抜けているところがあれば1~3年で受けた授業のノートを見返したりもしました。
あと、まったく知らない数学の分野なんかはマセマを買って読んだりしてましたね。それでフーリエ変換とかできるようにしました。
一応TOEFLをHome editionで受け直して、それでスコアは提出しました。
4年生7月~ 本格的に対策開始、受験一本
事前に研究室の先生方には了解を取っていて、最低限の研究は進めつつひたすら院試の勉強をしていました。とにかく過去問を1つでも多く解いて、それに対して「なぜ解けなかったのか」「何を知らなければいけないのか」を突き詰めていきます。正直ここがとにかく正念場で、どれだけ過去問を回してしっかりと対策できるかに掛かっていると思います。
マジで試験直前なんかはノイローゼになるぐらいしんどかったです(もう二度とやりたくない)が、それでも踏ん張って恐怖感を原動力にひたすら知識を詰め込み計算に慣らしていく時間でした。
おわりに
とまあつらつらと試験内容とざっくりとした自分のスケジュールを書いたわけですが(もっと詳細なことは今後、各論的に記事を作っていく予定です)、いかがだったでしょうか。
特に外部から院を受けるとなると情報も足りず、一緒に勉強する友達も足りず、不安もすさまじく大きいものになるでしょう。私は半年前を思い出して、今も少し胃が痛くなってきました。
そこで私は外の世界から東京大学院入学試験に挑むあなたの味方で居たいと思います。1年前に自分がやったように決意を決めたあなたを応援し、1つの合格ケースとしての情報を提供できればうれしいなと思います。
もし何か気になることとか、自分とコンタクトが取りたいとかがあれば連絡が取れる連絡先をコメントに残してください。連絡が取れればいいので、捨て垢だろうが実名だろうがHNだろうが、メールだろうがDiscordだろうがなんでも構いません。こちらから連絡を入れさせていただきます。
それでは、来年のあなたが昨日の私と同じように、日本武道館で東大総長の話を「長いし早く終わらねえかなぁ」と思いながら聞いていることを願っています。また次の記事でお会いしましょう。