【大学院入試】卒業研究を大学院入試の成功につなげる取り組み方【卒業研究】
こんにちは、fromです。このブログでは特に東京大学などの大学院入試に関して、受験の概要や自分の体験なんかを共有しています。(過去問の解説なんかもする予定です。ただいま作成中なので公開は今しばらくお待ちください)
今回の記事では少し毛色を変えて、大学院入試ではなく「卒業研究」にフォーカスした内容になっています。ただし、あくまで院試にかかわる内容として「他大の大学院進学」をする上での卒業研究についてのお話です。
もうすでに研究を始めているよ、という人は「はじめに」を読んだ後に「2.卒業研究が「大学院入試」に与えるもの」から読み始めていただいて大丈夫です。
まだ卒業研究が始まっていない大学3年生の方は、ぜひ「1.研究室選びの戦略」から読み始めてください。
この記事を読むことで理系の(筆者は物理系なので特に物理での)院試・卒研の両立ができるケースを知ることができるのではないかなと思います。
はじめに: 「院試」と「卒研」を両立する意味
この記事を読まれる方には、おそらく他大の大学院進学を目指して勉強を進めている方もいらっしゃるでしょう。その中で、以下のような疑問を持ったことはありませんか?
「どうせ外の大学院に進学するんだから、卒業研究に時間を割く意味がないのでは?」
一度でもこんな風に思ったことがある人にぜひ読んでほしい、それがこの記事です。私も、大学生時代に同じ疑問を抱いた一人でした。
例えば、内部進学をして今の研究室で研究を続ける場合、卒業研究はめちゃくちゃ重要です。
けれど、外部の大学院を受験し、進学する場合、研究テーマが大きく変わる可能性だって少なくありません。研究手法も研究室によって違うので、卒業研究の重要性に疑問を感じるのも仕方ないでしょう。
それでも、この記事では「他大の大学院に進学する人間」にとっての卒業研究の価値を改めて考え、大学院入試の準備とどのようにバランスを取るかを探求していきます。
ちなみに筆者の1ケースだけご紹介しますが、自分は大学院入試で東京大学の大学院(2専攻)に合格を頂きながら、年度末に行われた春の学会にて自身の卒業研究をもとに発表するところまで漕ぎつけています。もちろん研究に完全に1年間を費やすのとは使える時間が違いますが、それでもこれだけのことは無理なくできると思います。
そのようにある程度の両立をした上で申し上げますが、卒業研究に本気で取り組むことは大学院進学をする上ではメリットの方が圧倒的に大きいです。
まず挙げられるのは卒業研究で得られる経験・能力は当たり前ですがそのあとの大学院生としての研究生活で必須のものばかりであるということ。(実験器具の取り扱い、安全管理、進捗報告のやり方などなど……)
更にそれだけではなく、もっと直接的に大学院入試で卒業研究について聞かれることも少なくありません。今やっている研究はどんなものか、どんな背景があるのか、どんな展望を抱いているのか、そういったことを説明できる必要があります。
そのため、安易に「大学院入試を受けるから卒業研究は『捨て』てもいい」という発想は危ないよ、と釘を刺しておきたいと、そういう内容の記事になっています。
とはいえそれでも我々は大学院入試を受ける以上、その勉強に時間を割かなければいけません。そこのバランス感覚を見出す「取り組み方」をお伝えできればと思います。
1.卒業研究(研究室)選びの戦略
なぜ学部の研究室選びが重要なのか
これから4年生に上がるという方にとって、実は卒業研究を行う研究室選びというのは非常に重要な選択となります。研究室選びは大学院入試そのものの成功・失敗にも大きく関係するので、ここの選択はぜひ丁寧にしていただきたいなと思います。
じゃあ具体的に研究室を選ぶときにどんな点に気を付けたらよいのか、という点ですがまずはどんな点を重視するかをしっかり考えておきましょう。特に以下の2点に関してはしっかりと考えておくべきだと思います。
研究の内容
大学院に進学する際に、多くの人は卒業研究で自分が研究していた内容に近い分野に進みます。もちろん全く関係ない分野に進学することもありますしそれぞれの人の自由なのですが、「卒業研究でどんな研究をしてきたのか」は非常に重要な点になります。
場合によっては自分の一生の方向性さえ決めてしまう内容なので、最低でも自分がある程度の興味を持てる研究にするのが良いと思います。忙しさ、先生のスタンス
研究室によっては「大学院進学」に対する理解や配慮のある研究室もあります。例えば外部の大学院進学を考えている生徒には研究に負担がかからないようにしてくれる先生もいます。
こういった点は実際にその研究室に所属している先輩に聞くのが最も正確な情報が手に入ります。
もちろん、ほかにも仲のいい同級生がいたり、院進している人が多かったりといろいろな要素があります。その中でもしっかりと優先順位をつけ、自分にとって後悔のない選択をできるようにすることが肝要です。
研究が忙しいと大学院進学が難しい?
研究に多くの時間を割かなければいけない研究室の場合、やはり院試にかけられる勉強時間というのは限られてきてしまいます。とはいえ、研究をすることそのものが大学院入試に対してマイナスに作用するわけではありません。
むしろ「しっかりと卒業研究を頑張った」ことで多くのメリットを得ることができるので、次の章をご覧になってから改めて卒業研究に対してどう取り組んでいくかの計画を考えてみるとよいと思います。
2.卒業研究が「大学院入試」に与えるもの
「卒業研究は何をしたの?」は不可避の質問
たとえどんな大学院に行くとしても、どの研究室に行くとしても、この質問は常に付きまとう内容です。ここで例えば「〇〇について△△という手法で研究していました」とハッキリ答えられたとして、かなりの確率で次の質問が飛んできます。
「どうしてそういう研究をしたの?」
この「どうして」に答えあぐねる人が少なくない印象です。この4文字が聞きたい内容にはいろいろなパターンがあって、
自分個人の動機としてなぜその研究を選んだのか
その研究はどういう目的を持って行われたものなのか(社会的意義)
なんかがあります。その時に、しっかりと自信をもって答えらえる人の方が圧倒的に先生の心象は良いです。そして更に踏み込んだ質問になると(特に近い分野の先生との会話では)
「〇〇大学でこういう似たような研究してるんだけど知ってる?」
「△△っていう手法もあるけど知ってる? なんでこっちの手法を選んだの?」
なんていう質問が飛んできたりします。真剣に卒業研究に取り組んでいる人には決して難しい質問ではないですが(必ずしも正しい必要はなく、自分なりの理由があれば大丈夫です)、間に合わせで「とりあえず卒論だけ出せばいいや」というモチベーションでやっているとかなり手痛い質問になります……笑。
そういった窮地を回避するためにも、ある程度のモチベーションを持って取り組める卒業研究を選ぶのが個人的にはオススメです。自分の場合はそういった面を重視するあまりに卒業研究でかかる負担(時間とか勉強量)が非常に大きいものだったのでそれなりに大変でしたが、そのことによる後悔はありませんでした。
大学院入試で直接聞かれることも
例えば卒業研究の内容が院試に要求される最も直接的かつ重要なシチュエーションの例が、東京大学工学系研究科 物理工学専攻の口頭試問です。
その内容とは、「自分の卒業研究についてスライド4枚分の資料を持ってきて発表する」というものです。そして当然、発表した後に東大教授による質疑応答という考えうる限り五指に入るぐらい恐ろしい事態に直面することになります。
とはいえ教授側もかなり容赦して(答えられる範囲での)質問をしてくれるのですが、それでもその圧力に勝てるだけの準備は必須だといえます。
まぁ要領の良い人であれば問題ないとは思うのですが、間に合わせで「卒論だけ出せば良いでしょ」みたいなスタンスでやってるとかなり厳しい試験ですので、それを踏まえた上で卒業研究にどう取り組むかを考えてみるといいと思います。
3.卒業研究が「大学院入学後」に与えるもの
「卒業研究をちゃんとやったか」が一目瞭然
修士課程で大学院に入ったとき、まず卒業研究をちゃんとやった人間かそうでないかは一目瞭然でわかります。たとえ修士課程で取り組む内容と違う内容を卒業研究でやっていたとしても、かなりの確率で「あ、こいつ卒業研究間に合わせでやってきたんだな」ってわかってしまう可能性が高いです。
その理由は、1つには単純に1年間取り組んだことによる知識や体験の量が圧倒的に違うからです。研究でどんな実験を、それぞれどんな意図でやったのか、研究室はどんな雰囲気だったのか、などなど……特に外部からやってくる人がどんな研究室にいたのか/どんな研究をしていたのかは割と気になる人が多いようで、結構聞かれます。(自分の周囲だけかもしれませんが)
そして、能力面でも割と顕著な差が出ることが多いです。それは図表の作り方や文章の書き方といった些末なものから、そもそも実験計画を練る段階で実現可能性が考慮できているか、考え方の筋がいいか、などなど……そんなわけで、いろいろな側面からじわじわと効いてくるのが「卒業研究」というものなのです。
ただし、博士課程まで行ってしまえば話は別です。基本的に聞かれる内容が修論のことになるので、卒業研究は遠い彼方に忘れ去られていきます。
まとめ: 卒業研究と院試のバランス感覚
結局、卒業研究はちゃんとやった方が良いの?
卒業研究というものをどう扱うべきか、というのは正直に言えば所説あると思います。今まで私が書いてきた内容は割と「卒業研究ちゃんとやっとかないと苦労するぞ」的な内容でしたが、一方で「でも所詮はその程度の重要性だ」ということもできます。
例えば口述試験なんかは、研究自体にあまり時間を割かなかったとしても、しっかりとロジックが通っていれば問題ありません。つまりある程度対策しておけば乗り切ることは可能です(多分)。
入学した後にも、もしかしたら「えっ、この機械使ったことないの?」とか「この図表変じゃない?」とか言われる可能性はありますが、でも所詮はその程度です。言われたら直せばいいし、少なくとも失望されたりすることはないので(相手がまともな人間なら)「すみません分からないんで教えてください!」と元気よくいけば悪い顔をされることはありません。
まぁそもそも実験の手法に関しては研究室が変われば大きく変わるのが当たり前なので、1から手探りで覚えていくのがスタンダードです。東大は内部生も学部⇒修士で研究室が変わるパターンが多いことを考えると(ちなみにこれには理由がいろいろあるんですが)、そんなに問題があるわけではないと思います。
バランスの取り方の一例として
というわけで、あくまで本来は今までの内容を踏まえて「自分が後悔しないように」決めてもらうのが良いと思います。研究に時間を取られた結果、大学院に落ちて進学できなかった……というパターンも考えられますので、最終的には自己責任というわけです。
しかし、一応自分の個人的なケースにおける考え方も紹介しておこうと思います。自分は大学院入試の勉強のスケジュールを考えた結果(下記事参照)、7月と8月をほぼ全て大学院入試に突っ込むことを前提に、それ以外の部分では両立を進めて来ました。
自分が割と研究が好きだというのもありますが、実際まじめに取り組んでよかったと思います。院試対策に一番重要なのは「直前期にどれだけ余計なことを考えないか」だと思っていたので、逆にそれ以外(6月まで)はかなりの時間を卒業研究に費やしていました。
実際、院試の勉強は「1週間に1科目の過去問1年分」ぐらいのイメージで進めていたので取った時間は1週間で10時間もないぐらいだと思います。4時間で物理解いて、分からない所を6時間で抑えていくぐらいのイメージです。
その代わりに7月と8月はほとんど卒業研究はノータッチです。8月なんかはどうしても不可避だった2,3日だけを除いて研究室にはいかず、自宅やカフェや図書館でひたすら院試の問題を解く⇒復習するを回し続けていました。
ここら辺の感覚はこれが正解、ということはないです。結局、目の前に出された問題を解けるかどうかが全てなので、その道筋は人それぞれで構わないと思います。また、学部レベルの物理の基本的な定着率も人それぞれだと思いますしね。
終わりに:卒業研究の位置づけ
これは大学院に入ってから振り返った感想ですが、思ったより卒業研究って大事だったんだな……と思うことが多いです。なぁなぁでやるよりも、しっかりとやり切ってしまう方が圧倒的に実りある1年になると思いますし。
ただ、卒業研究をどのような位置に置くか、というのも含めて戦略です。ただの道具として割り切ってしまってもいいですし、自分がやりたいことをできるチャンスだととらえてもいいでしょう。
人によって哲学は様々で、各々がやりたいようにやって構わないと思います。そのうえで、自分の体験をもとにするなら「卒業研究はしっかりやっといても損することはないよ」という話でした。
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