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連載【癌で死ぬか死刑が先か・9】長期刑務所デビュー

※ お読みになる方へ : 事件の詳細が書かれており、不快な思いをされる場合がございます。ご注意ください。

 長期刑務所はL.B刑務所(8年以上~無期刑の受刑者)と呼ばれ…
因みにL.BのLはロングの略で、Bは初犯ではない受刑者ってことで、極悪人の刑務所だ。
俺はこの、L.Bの岐阜刑務所に移送になってしまった、、、。
移送中の車の中で、L.Bのムショには、殺人者やヤバイ奴が多いんだろうなぁ~、、、殺人者とか会った事ないし、、、
俺、殺されんかな~、、、とか思いながら、深い溜め息を吐く。

 岐阜刑務所に着いて、ムショの看守に連れていかれ、領置金や荷物の仕分け検査をされて、ここでもアナルを広げて、看守にチェックされる。
内心、うんざり…ここで、ムショで着る衣類や下着を渡される。
驚いた事に、白いパンツは前の方が真黄色!!
看守は「洗ってあるから問題ねー」とか言うけど、、、気持ちの問題だ!!俺は恐る恐る看守に「あの、、、もう少しマトモのないですか?」と尋ねた。
「じゃー自分でいいの見付けろー」とダンボールを渡してくれて、中にパンツが何十枚と入ってたので、探した。結局どれも似たかよったか(苦笑)
仕方無い、、、舎房着を3Lお願いしたが、下のズボンはいいが、上が3Lのわりにキツイ。
胸元から肩までパンパンだ!これではいつ、ケンシローの如く、気合とトモに胸元から破けてしまいそうだ!!

 看守に、また恐る恐る「すみません。上が小さいのですがー、、、」
すると看守は「それ以上のサイズは今はない!体を服に合わせろ!」「は、、、??」今、何て言ったんだ??
俺の聞き違いか?看守にワンモア―とは言えず…「すみません。ボタンも上手く、くっつけれないんですが、、、」
「看守はだから体に服を合わせろと言ってるだろ!!」と、、、
何だ!?この気合論みたいなー、理解不明は、、、とにかく、無理やり着て、舎房に連れてかれた。

 因みに舎房着は、ネズミ色。
フロアー担当の前に連れてこられて、フロアー担当から所内生活を色々と説明を聞きやっとこれから暮す房(3畳にトイレ、洗面台)に入り、所内生活の紙を房で見ていた。
そこで1週間が過ぎたころに、新入教育に呼ばれた。
10人前後の受刑者が居て適当に椅子に座ると、チラッと横を見たら、まさかの共犯のYが座ってた!
普通ではあり得ないのです。共犯と、同じにすること自体が!
俺は、知らん顔をしようと決めこんだのですが、このザビエル似のカッパが話掛けてくるのです。
チッと舌打ちして「何んや~」と訊くと「お前はションベン刑だから富山刑務所かと思ってたわー」とぬかす。
俺は「お前も、ここじゃー8年の刑なんてションベン刑とちゃうのかぁ!!それに、お前は、窃盗の常習が加算されての8年やろうが!
俺との事件の実刑は同じや、いちいち、お前が、8年の刑だろうが、俺にいちいち、嫌味たらしく言ってくんな!」

 ここで、看守が部室に入って来た。紙を皆に配り、今から分類テストをやるようだ。「時間内にどれだけ出来るか始めます」と言われ、ボールペンだか鉛筆だかどちらかだったと思うが、渡され、看守の号令でスタートされた。
中身を見たら、数学とか国語(漢字)とかだったが、俺は、殆ど出来なかった。内容的には、レベルは中1ぐらいだったと思うが、俺には、サッパリ判らなかった…
この分類テストは、ムショの工場配役時に、レベル外かレベル内かと言っても、たかが知れてるが、答えだけじゃなく、字のキレイさや、受刑者の内面まで調べて、その受刑者の工場配役が決まる。

 俺は、1工場のミシン工場に配役され、ミシンは基本、右足で、ペダルを踏むが、俺は右足が不自由なので左足で、何とか、ミシンの作業をしていた。
1日目は、舎房も、独居から雑居に変わり6人部屋に入れられた。
工場での作業が終り、皆が各舎房に帰るのだが、俺はその日から、6人と生活する事となり、雑居のルールみたいなのがあって、それに従った。

 新人はまず、トイレ側で寝かされる。
トイレ側は、就寝中だろうがトイレに行く人が居るので、その度に音で起きてしまう。就寝中はトイレを流さないのが決まりだ。大以外は。
バケツ一杯に水を入れて、それを小便をした後に、バケツの水をちょっとずつ流すのだ。
それと、新人はトイレ掃除をさせられる。
これは他の雑居の房長によって違うが、殆ど、新人はトイレ掃除だ。

 食事前や食事後にも、やる事が決まっていて、それ以外では洗濯物を一つにまとめたり(※パンツはパンツ、シャツはシャツ)と別々に洗濯された物が舎房に入っているのだが、それを皆の定位の布団の上に乗せていくのだが、全ての衣類には、全員共通の洗濯用の小さな紐に吊るされたゴムみたいな札(ふだ)が付いている。
その札に称呼番号と言って自分の名前の代りの番号が書いてあり、これが慣れるまで、皆の番号を覚えるのが大変だったが、慣れると早い。
パンツは、柄で色でサイズでも分かる様になってくるので、いちいち、呼称番号を見なくても、分かる様になる。
柄とか色と言うのは、私物のパンツの事である。
ムショ中の売店で売っているが、中でマークシートで受刑者は月に1回買える。

 因みに、俺の岐阜刑務所での呼称番号は930番だった。
今でも、覚えている。
俺が来た当時か、そのちょっと前は無期囚は1~100番代と決まっていた為に、呼称番号で、直ぐに、無期囚と分かったそうだ。
工場で働いている人はテレビも観れる。
雑居の場合は、必ず相撲とNHKのど自慢と大河ドラマは、観なければならない。後のチャンネルは、雑居房によって違うが、1週間ごとにテレビチャンネルを自由に観れる。
順番が廻ってくるが、これも、よく揉める原因になってた。
チャンネル権がある人が建前上は好きにすればいいのだが、アニメとか、面白くないのをテレビで流すと、人によっては露骨に文句を言いだす。
たとえばアニメだとすると、こうだ「え?アニメ!!普通いい大人がアニメ観るか!流石にあり得んわー!あー白ける。」と…
こんなのは当たり前で、ここは、その雑居房の房長とか数人がしっかりしたマトメ役ならば、そんな話はまず出ない。
出た日には、そいつらは部屋から出させるからだ。(※力関係にもよる)
俺の番が来た日は、チャンネル権を放棄して、好きなの観てくださいと言っていた。テレビの事ぐらいで、揉めるのは、嫌だった。

 そうこうしていると、雑居生活も半年近くに及び、よく話掛けてくれる人や、工場の受刑者や、雑居の人らの犯罪とかを恒に入れる事が、増えた。
まず驚いたのが、ここに居る俺以外の雑居の人は殺人者って事!!
それも、殺人の綽名が付いている奴さえ居た(汗)
まさか、、、殺人者達と生活するとは、、、
この俺も、何だか、その殺人者と普通に喋っていることに内心、驚いている。
何だろうか、、、この感覚がおかしくなっていく俺は。。。

ヤクザ者が3人。1人はてめぇーの兄貴分を兄弟分と一緒に殺したと言う、、、もう1人はカタギを銃で打って、パクられたらしい。
そこの組は破門されているらしいが…これは、御法度と聞くが、ムショの中に、代紋違いの偉いさんに拾われて、そこの組の傘下に入ったらしい。
関東系の有名な組に入ってとか。
もう一人も関東系の組でここは名門で知れた組である。
残りは、少年院上がりだとか、ヤクザではないが、ヤクザと繋がっているとか全員が12年以上の刑(実刑)ばかりだ。

 この当時の裁判の刑罰の有期刑が最高で20年の時だから、この当時の12年以上の刑の人は、今で言えば20年以上でもおかしくない人なので、当時の俺としては、ヤバイ奴らと一緒になってしまったなーっと思った。
いや、まてよ、、、同じ工場の他の雑居には無期囚も居たな~、、、
何処の雑居に行っても、ヤバイ奴ばっかりか、、、は~、溜息が出る。
俺はタタキの犯罪者やぞ!!その俺がこのL.Bの岐阜刑務所では、ションベン刑と言われ…

 あっそうだったー、俺が配役の時に、目の前に座ってる人に声を掛けて、「何年の刑ですか?」って訊いたら、、、
その人「無期です。」と言ってたなー、、、
それも、俺はヤバイことを訊いちゃったと思い、殺されるかと身構えてたら、その人が振り向き、ヤバー殺されるー(泣)と思ったら、
まさかの一言「住めば都ですから」の有言を聞けるとは、、、
殺されなかったのは、不幸中の幸いだったが、
これから、無期で務める人が「住めば都」云々って、、、
悟りが早くねーガンジーか?この人は!
そんな記憶を思い出したら、この部屋に無期囚が居ないだけでも、
まだ、マトモなのか!
とにかく、この人らと揉めるのは、面倒い事になりそうと思い出来るだけ、大人しく生活した。

Vol.10に続く


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