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湯宿温泉のこと

東京から関越道を使って利根川に沿って北に向かった。
わたくしは水の源、すなわち「みなかみ」に憧れをもつ癖がある。

関東平野を抜けて、急に周囲の山々が近づいてくる頃、向かう先の奥には谷川連峰が姿を現す。

高速は月夜野ICで降り、国道17号線を北に向かった。
利根川の支流、赤谷川に沿ってしばらく進むと、江戸時代に越後と江戸を結んだ重要な街道である旧三国街道と重ねあってくる。

そう。

一番最初に現れる温泉地が湯宿温泉(ゆじゅくおんせん)だ。右手の道標を進むと雰囲気の良い石畳の路地となる。

なんだかいつもと違う文体でのご紹介になっていました^ ^

そうです。ここは「みなかみ町」の町名の由来となった、随筆「みなかみ紀行」の著者である、若山牧水が大正時代に逗留した由緒ある温泉地なのです。

牧水さんは改めてじっくりとご紹介させていただくとして、ここ湯宿温泉は開湯1300年と言い伝えられている大変古くから続く温泉地。

湯は熱く、なんと源泉は63度もある。

さてさて、泉質はナトリウム・カルシウム硫酸塩泉。ピリッと熱い湯は真夏でも湯上り爽快。不思議な感覚がある。戦国時代には治める殿様が療養にも訪れたそうな。

まずはじめにご紹介するのは、湯本館。その名の通り湯宿温泉の湯元である。
ご当主岡田さんは、23代目という。
もっともっと古いそうなのだが、菩提寺の過去帳にそれ以前の記載がなくたどれないほどの歴史があるお宿。

果たしてどれほどの歴史があるのだろうか。

湯本館の源泉。温泉卵もできる熱さだ。

湯本館の中庭には源泉の湧き出す場所がある。周囲に降った雨や雪が地中の泥岩地層にあたり温められて湧き出でてくるのだそう。
中庭には地層の断面といわれている所に岩の室があり、その奥には祠が建てられており、敷き詰められた石には梵字が書かれている。

これらは、いったい何年前のものなんだろうか…。思わず息をのんでしまう。

湯本館の湯舟。右奥に見えるのは温泉成分が固着したという石。

湯宿温泉に住む方々は近年まで家に内湯をあえて作らず、小路地にこぢんまりとある4か所の共同湯を利用する習慣が根付いている。温泉がとても密接な地域でもある。
宿泊客は特別に宿から鍵を借りて湯めぐりも楽しめる。(一部閉所あり)

浴衣を着て小粋な気分で小路地をそぞろ歩くと、白壁の蔵が見える。

そう、ここが若山牧水が逗留した「ゆじゅく金田屋」だ。

2023年3月現在では、素泊まりのみの提供だが、湯宿温泉の熱い湯を適温に調整管理する、曰く「手づくりの湯加減」。
極上の湯あみが楽しめるおすすめの宿だ。

若山牧水が実際に逗留した部屋が現存する。

ご当主。岡田洋一さんにお部屋をご案内いただいた。

岡田さんは若かりし頃、2年をかけてバック1つで世界を一人旅した経験を持つ。

岡田洋一さん
部屋も引き戸も当時と全く変わっていません。とのご紹介。

さてさて、お待ちかねの湯舟。手づくりの湯加減を堪能できる。

金田屋の湯舟。

ユニークな接骨院を併設した温泉旅館もあり、国道から少し入っただけで喧噪だけではなく時代もタイムスリップしたような錯覚に陥る。

近くには旧三国街道の宿場町跡が「たくみの里」として、小さな手作り体験工房が点在する場所もあり、あわせて楽しみたい。

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