見出し画像

5シーズン目で、食べチョク販売をはじめたわけ

【fao's store log 2020dec】
東京から熊本へIターン脱サラ就農、天草の柑橘生産者の筒井洋充です。

柑橘生産・販売して5シーズン目、最初のシーズンから直販サイトで販売、2シーズン目からは「ポケマル」での販売をしてきましたが、農業に携わるようになって6年半、気候変動についてはそれまで以上に感じ、環境の維持についてより考えるようなっています。
先日、BLOGOSで「【SDGsの本質とは】子どもにツケを回さないために、今、私たちができること」(たかまつなな さん)という記事を読み、「おうちでできること」も25項目紹介されており、SDGsはそれほど敷居は高くないと感じました。(Note記事はこちら

スクリーンショット 2020-11-30 6.08.28

そこで自分の行動を振り返り、自分なりに取組む「農業におけるサステナビリティ」を紹介します。

まずやるべき事は農薬・化学非肥料の削減とは考えなくなった

農業で環境フレンドリーというと多くの人は、農薬や化学肥料を使用しない「自然栽培」を思い浮かべるのではないでしょうか。

私も東京で会社員をしていた時に、環境にやさしい農業で考えていたのは、「自然栽培」でした。会社員時代から今に至るまで農業については、本を読んだり、ネットで調べたり、研修やセミナーで学んだりしてきました。

しかし、農業を本当に理解するためには、知識として理解することより、自分の五感で体感することの方が重要だと考えています。作物には肥料をまく時期、剪定する時期、収穫時期などのカレンダーでの目安の時期があります。

ところが作物は生き物です。人間が感知できないような微妙な変化を植物はとらえています。気象条件が揃わないと、出来が悪くなったりすることもある。

5回目の柑橘シーズン、みかんの収穫量や味が同じだったことはありません。

実際に外に出ていると、感じる季節感も毎年違います。
少しずつ、気候も変動していると感じるようになりました。

そして、農業従事者として優先的に取り組むべきなのは、農薬を減らすことや、より気の利いた資材を使うことではなく、地球温暖化や気候変動につながるものへの対応だと確信しました。

農業を続けることが地域のサステナビリティ

農業の「サステナビリティ」とは何か、個人である自分ができることは何か。

そもそも会社員を辞めて、農業に転身した理由を振り返ると「農業」そのものが地域の持続につながると考えていたことを思い出しました。

日々の作業に追われ、月日が経つと初心を忘れてしまうものなのですが。

年々耕作放棄地が増える中、わずかでも田畑を残していければ、との想いからでした。私の畑は、二人の園主の方から引き継がせいただいたものです。

お二人ともご高齢でもう辞めようと考えていた方たちで、そのうちの一人は借りた時に「引き継ぐ人がいなければ、今年中に木を切ろうと考えていた」と仰っていました。

一人で引き受けられる園地の規模はたかが知れていますが、自分が出来ることを少しずつ世界中の人がやることが重要ではないかと思います。みんなが「他の誰かがやるだろう」といってやらなければ、ゼロですから。

農作業は決して楽ではありませんが、お客様からいただく「おいしい」の声が続ける糧になっています。
 消費者のこうした声が生産者に届くとSDGsへとつながるかもしれません。

サステナビリティーは「不快さ」を取り除くことから

サステナビリティは環境への配慮だけでなく、仕事としてそれを続けられるかということも重要な視点です。日本は今、高度成長期に地方から都市部へ多くの若者が出ていったため、一次産業の担い手がいないという問題に直面しています。

一次産業の担い手が少ない原因の一つは、キツくて、儲からないという考え方が前提にあるからではないかと思います。それは変えらることのできないものなのでしょうか。

たしかに農作業には不快なことがたくさんあります。夏場の草刈りはその代表例でしょう。

しかし、長く続けるためには、面倒くさいことを「仕方がない」「こういうものだ」とするのではなく、どうしたら面倒くささや不快さを取り除けるかを考えることが大事だと思います。

元来面倒くさがり屋の私は、会社員時代から単純作業が嫌いでした。なぜなら「面倒くさいから」です。そこで、ExcelのVBAを勉強しマクロを組んで自動化に取り組んできました。

それは農業でも同じです。それが「当たり前」「昔からそうしてきた」と思っている地域の方には怪訝な顔をされることもありますが、農業にも効率化やコストパフォーマンスの考え方は取り入れられると思います。

柑橘類の夏の暑い時期のメインワークは、草刈りと農薬散布です。環境を考えれば、農薬は散布しない方がよいように思われます。

しかし、虫や作物の病気が多い高温多湿の日本では、農薬なしでJA出荷基準を満たすのは難しいのが現状です。目視で病気や虫がついていないか果実を一つ一つチェックするのは、管理コストや割ける労力、そして売価とのバランスを考えると現実的ではありません。

そこで、草刈りを減らしてみました。特に梅雨が明けると、畑は乾燥しがちになります。8月は干ばつ傾向になるので一般的な栽培法では水まきを推奨しているのですが、草が生えていれば地面が乾きにくく、水まきも減らすことができると考えています。
実際、ほとんど水まきをしなくても「美味しい」と言っていただける果実が収穫できています。

ところが、夏場の草刈りの回数を減らしてみても、削減できる労力は多くありません。
次に考えたのが、草刈り機をバッテリー式にすることでした。

草刈り機

エンジン式の草刈機には次のような問題点があると思っています。
・エンジン音がうるさい
・排気ガスが臭い
・振動で手が痺れる
ガソリンエンジンで動くタイプの草刈り機は、自身の身体にも悪く、続けるのは難しいと思いました。

2018年にバッテリー式の草刈り機にしたところ、上記の3つの問題はクリア出来ました。おまけに環境にも良くなったわけです。

草刈り機をバッテリーにしたメリットはそれだけではありません。ガソリンを買いに行く手間が減り、軽トラの稼働が下がるので、車の排ガスも削減できます。

エンジン式の草刈り機は、バッテリー式と比べて連続稼働時間が長いのがメリットです。バッテリー式はバッテリーが高い、パワーが弱いというデメリットがあるのも確かでしょう。でも、夏場に長時間の連続稼働は必要でしょうか。

炎天下で2時間もぶっ続けで作業すれば、死んでしまうかもしれません。

雑草が成長するのは主に夏場ですが、安全性や環境への影響も考えると、ポイントは連続稼働時間の長さではなく、作業の不快さをいかに取り除くかであると思うようになりました。

バッテリー充電用の電気も自然エネルギーへ

草刈り機をバッテリー式にしてみても、製造や使うときの電力源が火力発電なら、環境にとってあまり意味がないのではないか。

そう思って、色々調べてみると自然電力株式会社という新電力があるのを見つけました。

自然電力にも、自然エネルギーの割合がさまざまなプランがありましたが、100%自然電力のSE100プランに。 自然エネルギーには供給量が安定しない、価格の変動によるコスト上昇リスクがありますが、子どもや孫世代に回すツケはできるだけ少なくしたいということで判断しました。

スクリーンショット 2020-11-30 5.52.34

出来る範囲では、農薬の使用をやめてみた

当園のメインの作物は不知火です。
不知火とは、全国的にはデコポンの名前で知られる柑橘の品種名のこと。

デコポンとして販売するにはJA出荷が必要なので、JAの出荷基準に合うように、基本的にはJAの栽培暦に従って肥料や農薬を使用します。というかせざるを得ません。

デコポンは、JA熊本果実連の登録商標であるため、商標使用の許諾受け、かつ、一定の基準を満たしたものしか名乗れない。そのため実質的にJAへ出荷したものだけの商品名であって、各地の産直やネット産直では「デコポン」としては販売できないのです。

しかし、柑橘栽培をはじめて、この冬で5シーズン目。少しずつ、JAを経由しなくてもオンラインショップなどで一定量を販売出来ると思えるようになりました。
そこで、今年から不知火の一部と、文旦のすべてで農薬を使わない栽培に切り替えました。(実際には2019年6月を最後に農薬の使用を止めました)

これまで少しずつ始めてきた農業の「サステナビリティ」、もう一歩進めて農薬・化学肥料の使用を減らしていきます。

ということで今冬から、品質にこだわりを持つ生産者のためのプラットフォーム「食べチョク」での販売をスタートします!

スクリーンショット 2020-11-30 6.01.06

今年は7月の豪雨もありましたが、柑橘には気候が良かったのか、幸いにもおいしくなってきています。

今後も自分のできるところから少しずつ、「サステナビリティ」に取り組んで日々アップーデートしていきます。
「子どもにツケを回さないために、今、私たちができること」・・・

どうぞよろしくお願いします。

いいなと思ったら応援しよう!