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土木写真部の嵯峨山です。本業は某地方自治体に土木職として勤務する、いったって真面目【自称】な公務員です。

この『from DOBOKU』への投稿は2回目。土木への『偏愛』っぷりをバンバン伝えていきたいと思います!


橋の総延長は日本列島の何倍?

さて、5月のテーマは『橋』です。
上の写真は山口県岩国市にある錦帯橋。日本三名橋の一つです。

そもそも橋は全国にどのくらいあるでしょうか。
国土交通省のホームページで調べてみると、道路橋は全国に約72万橋、その総延長は約120万kmもあるようです。河川橋などを合わせると、その数はさらに多くなります。

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ん??

数字が大きすぎていまいちピンとこないぞ(笑)
日本列島の延長は約3,000kmなので、橋の総延長はなんとその約400倍!!とにかく、私たちが生活する身近には、数多くの橋が存在するということなのでしょう。


土木屋なのに橋に興味がなかった私

観光地にあるような歴史ある橋や、デザイン性に優れた橋は、写真映えも良く、多くの人たちがそういった橋に魅力を感じると思います。

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筑後川昇開橋(福岡県大川市)
1935年に完成した旧国鉄の鉄道橋(現在は遊歩道)。船舶が通過できるよう、橋桁の一部が上下するところがお気に入り♪


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牛深ハイヤ大橋(熊本県天草市)
牛深観光のメインスポット!1999年完成した橋で、イタリアの建築家レンゾ・ピアノ氏が設計。オススメはライトアップされる夜!


しかし、そのような橋は約72万橋の中でもほんの少しだけ。
ちょっと外に出かけると、私の家の近くにも、この写真のように名前もない小さな橋が数多くあります。

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私のような土木屋は、「橋はやっぱり鋼橋だよ」とか「いやいやPC橋でしょ」などと、橋への偏愛を語る機会が仕事の中にもあります。

ですが普通は、車で橋の上を走っていたとしても、橋の存在にすら気が付かないような、生活の身近にありすぎて、その存在すら気にもされない橋が、私たちの周りにはいっぱいあるのです。

正直に言うと、私も数年前まで、それほど橋に興味はありませんでした。私は土木屋なのに、多くの人たちと同じような感覚だったのだと思います。


不思議な『橋』と出会う

そんな私が橋好きになったのは、ある橋の補修工事に携わったことがきっかけでした。

その橋がこの下の写真。今では私のお気に入りの『橋』の一つで、川が立体交差をする全国でも珍しい西川水路橋(新潟県新潟市)です。

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1955年に完成した西川水路橋の見た目はいたって普通の橋。でも実は、「川」の上に架かる橋も「川」という不思議な『橋』です。

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西川水路橋(新潟県新潟市)

私はその当時、新潟市に20年ほど住んでいたのですが、この橋がどのような橋なのか全く知りませんでした。ずっと生活の身近にあったのに、「なーんとなく橋があるなぁー」くらいにしか感じていませんでした。

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橋の下に潜り込んで、補修した橋の塗装厚を計測している様子

私が住む新潟県は、全国でも「米どころの新潟」として有名です。

ですが過去には、信濃川の大洪水が何度も繰り返して発生しており、そういった土地を水害から守るため、また良い農地をつくるために、河川が特殊な成り立ちをしてきた歴史があります。

私たちの周りには、こういった興味深い橋が数多くあります。
この補修工事をきっかけにそのことを知り、私は身近にある橋にも興味を抱くようになったのです。


お気に入りの『橋』を探そう!

私のように少し目線を変えて、あなたも身近にあるお気に入りの『橋』を探してみてください。例えば、こんな吊橋から満点の星空を見上げてみるとか…。

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宇津木橋(和歌山県田辺市龍神村)


いつもは車で通り抜けるだけの橋のそばを、少しだけ歩いてみませんか?いつもと違う視点で、身近にある橋を見てください。例えば、高速道路のインターチェンジの下から道路を見上げてみるとか…。

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福岡都市高速天神北ランプ〔ICの橋りょう群〕(福岡県福岡市)

そうすればきっと、あなたが愛着を感じることができる、お気に入りの『橋』に出会うことができると思いますよ。

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鶺鴒橋(青森県むつ市(川内川渓谷))


『橋』を守る人って知ってますか?

「橋を守る人」「橋の番人」といった意味で、日本には古くから「橋守(はしもり)」という言葉があります。

その歴史はとても古く、720年に成立した日本初の正史である日本書紀には、「亦命菟道守橋者(亦菟道の守橋者(ハシモリ)に命せて)」との記載があります。

当時は通行人を監視する、「橋の番人」という意味合いだったようですが、現在では『橋』を守る人という意味で使われることが多いようです。

近ごろは、身近にある橋に愛着を抱いた地域の人たちが集まり、橋を維持管理する活動、その名も「橋守活動」が全国に広がっています。あなたもお気に入りの『橋』を見つけて、橋守活動に参加してみませんか?

<参考リンク>

文責:嵯峨山 航(さがやま めぐる)
土木写真部の部員。土木大好き、特に熱い人たちと河馬(カバ)が好きという『偏人』。本業は某地方自治体に土木職として勤務。
写真:土木写真部 撮影
(錦帯橋、無名橋、西川水路橋)嵯峨山 航,(筑後川昇開橋、牛深ハイヤ大橋)鵜木 和博,(宇津木橋)Hiroshi Yamawaki,(福岡都市高速天神北ランプ)松永 昭吾,(鶺鴒橋) 角田 睦子