国分寺崖線のビール坂は湧水が豊かな地形にあった!
小ネタ「ビール坂」を3回連続でお届けする坂好き、勾配フェチの副偏集長の外山田です。まだまだ暑い日続いていますね。9月になれば少しは秋めいてくるのでしょうか、厳しい残暑は勘弁してもらいたいところですけど、いづれにしても、まだビールで喉を潤す日々は続きそうですので、3回目(最終回)をお届けしようと思います。
前々回の東京・恵比寿のビール坂はこちらです。
前回の横浜のビール坂はこちらです。
スペック
なぜ、調布市は「ビール坂」と呼ばないのか?
同じく「ビール坂」を共有している調布市では、なぜか「ハケの坂」と呼んでいる。この「ハケ」とは武蔵国のことばで崖を意味するそうで、直訳すると「崖の坂」というド直球な呼び名。近辺のマンションが住所は調布市なのに「成城〇〇」というマンション名が多いくらい、世田谷区や成城に寄せているにもかかわらず、この坂に関しては成城に寄り添っていない(笑)。どうしてなのだろう?
「崖の坂」の崖とは、東京都の立川市から国分寺市や世田谷区などを経由して、大田区へと全長40kmほどに続く崖の連なり「国分寺崖線」のことを指します。近くを流れていた古代多摩川が10万年以上の歳月をかけて、台地を削り取ってできた段丘で、川の流れに沿って削られた階段状の地形=河岸段丘のことです。お!河岸段丘!むか〜し教科書で習った記憶があるこの単語の響きが、なんだか懐かしいですよね。
この河岸段丘によってできた全長40kmの国分寺崖線にある坂だから「ハケの坂」と調布市側は呼んでいるわけです。地名には、その土地の地形や歴史が色濃く反映されることがよくあります。かつてビール工場があったからビール坂って、安直なネーミングに思えてきます(笑)。
命名としては、調布市側の方が保守本流なわけですが、崖あるところに高低差あり。つまり、坂がある。というのも、坂マニアには王道の捉え方で、この国分寺崖線をさらに南下すると現れる日本を代表する超高級住宅地・田園調布周辺では、高低差が30mほどある坂のデパート状態でもあるんです。あるべくしてある坂と言えますね。
国分寺崖線には豊な自然が残っている!
崖の下側は、農地に適していると言われます。崖の高台側に降った雨が大地に沈み、湧水となって崖の下側を潤すのだとか。国分寺崖線で約35%もの樹林地があるのは地形がなせる自然の摂理ということなのですね。実際、ビール坂近辺の崖線を歩くと、成城みつ池緑地など湧水ポイントが点在していて、野鳥や小動物の生活空間として貴重な自然がありました。
そして、かつてこの地の湧水が豊富だった形跡として、喜多見不動堂のお知らせ看板には滝行が行われていたことが記されていました。それだけ水量も豊富だったんですね。ちなみに、国分寺崖線に沿って、縄文時代の遺跡があり、また、たくさんの古墳もあるんです。先史の時代から人々の暮らしに適した土地だったことの証でもあります。
国分寺崖線のビール坂を訪れてみると、湧水と緑地帯が連続する豊かな地形であることを知りました。そもそも、ビールが美味しい季節だからというただの便乗で「ビール坂」を特集してきましたが、恵比寿も横浜も、ビール会社が理由で名付けられていたわけですけど、坂周辺の地形に目を配ると、違った視点の情報と出会うことがわかりました。
あなたの街に"崖線"や"河岸段丘"があれば、周辺は湧水と緑地帯が連続しているかもしれません。そして、必ずそこには"坂"があるはずです。