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青森での死闘。

プレミアリーグEAST第5節の青森山田vs川崎フロンターレU18(会場:青森山田高校)を現地観戦してきたので残します。(※これはざっくりとした感想文です。)

結果からいうと、2-1で川崎フロンターレU18が勝利。

前半、10番大関くんのFKが直接決まり1-0で折り返す。

後半、青森山田の凄まじい圧力のもとロングスローから失点。だが、80分頃に20番岡崎くんが青森山田ディフェンダー陣2~3人を振り切り、右足でゴールに流し込み勝ち越し。

その後の猛攻を耐え、2-1で勝利をもぎ取った。

死闘だった。

そして、驚いた。

「この年代でこんなにも強度の高い試合が行われているのか・・・」と。

高校年代の試合の観戦はもちろんあるが、青森山田高校グラウンドの観客席はピッチの目の前。それはそれはもう目の前。目の前で観戦したことで、これはあらためて感じた。

また大袈裟かもしれないが、トップチームがちょうどマレーシア・ジョホールバルの地でACLを戦っていることもあって、ACLみを感じずにはいられなかった。

これが青森山田の圧力。長橋監督の言葉でリズムを掴むフロンターレ。

フロンターレのスタメン。GKは濱崎。DFは右から江原、信澤、松長根、元木。ダブルボランチにキャプテン10番大関、18番由井。右SHに尾川、左SHに岡野一。2トップ気味に岡崎、五木田。4-4-2のフォーメーション。CB2枚と大関くん、五木田くんの4人が3年生で、実はスタメン7人が2年生だ。

対する青森山田。基本は、4-3-3のフォーメーション(だったと思う)。22番は185cm近くあっただろうか。アンカーに、この22番の高身長の選手を置き、2枚のIHがアグレッシブにプレッシング、チャージにいくスタイル。3年生が9人。2年生が2人。

それはそれは凄まじい圧力だった。

キックオフと同時に青森山田はフロンターレディフェンダー陣目掛けて大きくボールを蹴り出し、前線と中盤の選手がそのボールに向かって競り合いにくる。セカンドボールに勢いよく襲いかかってくる。

フロンターレは何とか跳ね返えそうとするが、もちろん競り合いの中なので簡単に跳ね返してもらえず。跳ね返せたと思ったら、22番のアンカーの選手がさらに跳ね返してくる。

「相手コートでサッカーをする」という青森山田の徹底したロングボールとその迫力ある競り合い。セカンドボールへの応酬。次から次へと飛び出してくる青森山田の選手達。

まさに、息つく暇を与えてくれない。息つく暇なんてない。息をついたらやられてしまう。そんな強度の高い試合の入りだった。

「これが青森山田・・・。耐えるんだ・・・。まずは15分・・・。」

大関くんも、慌ててボールを裏に蹴り出してしまうシーンもありこの試合のリズム・強度に完全に飲まれそうになる。

そのような状況の中。長橋監督の声が響く。

「(大関くんに向かって)慌てない!慌てない!どんどん(ボールを)動かしていけ!」

これは「ビビるな。臆せずにボールを持て。そして、動かせ。できるから。」という意味と勝手に感じ取った。でも、多分そう。

前半15分を何とか乗り切ったフロンターレ。フロンターレがこの試合の強度に徐々に慣れ始める。大関くんが中盤でボールを受けれるようになる。そして、長橋監督の指示通りにボールを動かしていく。

フロンターレ全体に血が通い始めたのはこの頃からだ。

大関くんが心臓となり、チームに血液を循環させていく。長橋監督の「そう!ナーイス!」という声が響く。フロンターレがボールを持てるようになり、リズムが生まれる。

大関くんは、相手のプレスの掛け方やチャージの出方を見ながらプレーするのが非常に上手く、青森山田のIHをかわし前進することができていた。それはすなわちチーム全体が前進できるということ。チームを助けていた。

それによって、サイドの選手が前を向いてボールを受けられるように。特に左サイドの岡野一くんに岡崎くん、五木田くんが絡み青森山田のゴールに迫るのは一つの形になっていた。

大関くん中心にリズムを作っていくフロンターレ。対する青森山田も負けじと、IHで出場した6番のキャプテン中山くんが大関くんに喰らいつく。青森山田にリズムを引き戻そうとする。(中山くんは、松木玖生擁する年明けの選手権優勝メンバーの1人で決勝では唯一の2年生スタメン。)

何とか掴んだリズムを離したくはないフロンターレ。

長橋監督の指示が飛んできた。

「6番につけ!6番、6番!」

確かこれは右SHの尾川くんへの指示だったか。大関くんを中央での6番のチェックから剥がし、サイドのファジーな位置へ移動させ再度大関くんを中心にボールを保持してリズムを良くしていきたいとの意図。

「中村憲剛かー」

中村憲剛がよくチームにリズムをもたらすために、サイドの低い位置にポジションを取りボールを捌いていたことを思い出した。青森の地で勝手にエモくなった。

リズムを離さずにいたフロンターレ。前半30分すぎに大関くんが直接FKを叩き込み先制に成功する。

待望。

このFKは素晴らしいものだった。確かに素晴らしいものだったが。

このゴールが生まれたのは。それは「フロンターレが青森山田相手に臆せずボールを保持し、リズムを掴んだから」であり、それを青森山田が嫌がったから。あの位置で獲得したFKは、そう。決してたまたまではない。

青森山田相手でも臆せずにボールを握ること。フロンターレが示した勇気。これが身を結んだゴールだった。これはただの直接FKじゃない。

前半はロングスロー3本が飛んできたがそれも何とか耐えたフロンターレ。1-0で何とかリードして折り返す。

凄まじい青森山田の圧力と洗礼。チームを助ける10番と18番。

後半の青森山田の圧力。それはそれは前半以上の凄まじいものだった。

ロングフィードとそこへの競り合いは勢いを強め、サイドにボールを逃しては今度はロングスローを応酬。

フロンターレも我慢していた。耐えて。耐えて。

耐えていたが、決壊する。

右サイドからのロングスローに一度競り合いで中央にボールが流れ、最後は15番CBの選手にヘディングで押し込まれて失点する。

ロングスローからの失点。まさに、青森山田の洗礼。

青森山田の応援席が盛り上がる。大きくリアクションする青森山田イレブン。青森山田イレブンというか、青森山田全ての関係者といった感じか。そう、ここは大アウェイ。観客席は青森山田関係者で埋まり、その脇には青森山田高校サッカー部以外にも青森山田中学サッカー部のメンバーだろうか。多くのメンバーがグラウンドを囲んでいた。そして、学校を囲んでいるネット裏には地元民。

さらに圧力を強める青森山田。ロングスローの矢が何本も。何本も飛んでくる。後半だけでも10本近くあっただろうか。FK、CKと合わせると10回以上セットプレーの機会があったはず。

「このままだと2失点目も時間の問題・・・」

後半開始直後より、青森山田の勢いに飲まれたといっていいかもしれない。

だがこの非常に劣勢の中、チームを助けたのはまたしてもキャプテン10番大関くんであり、2年生エース番号18を背負う由井くんであった。

大関くん。ボールを持てる瞬間があると感じると簡単に蹴り出すのではなく、しっかり味方選手を使い、時に自分自身で目の前の選手をかわし味方選手がフリーでもらえる状況を作り出す。チーム全体を前進させていた。

そして、由井くん。大関くん同様に青森山田のプレスの掛け方とチャージの出方を見ながらのプレーで、かわし、いなし、ボールを散らす。これは大関くんと同じかそれ以上かもしれない。

大関くんにチェックが厳しく入るようになるが、そこは近くにいる由井くんに簡単にボールを預けて、受け直す。由井くんもそれが分かっているから、相手が届かない場所にボールを置いて時間を作り、大関くんが受けられるようになったら再度ボールを渡す。

この2人で、青森山田のIH+アンカーをかわし、いなす。チーム全体が落ち着き、フロンターレがボールを持つ時間を増やしていく。

長橋監督の「ナーイス!」という声も響く。

このチームは、主に大関くんが攻撃のスイッチを入れる役回りだが、それを裏で支えているのは18番由井くんあり。と言いたいところ。この2人の関係性は、素晴らしく。この世代屈指のダブルボランチなんではないだろうか。

少しずつではあるが、前半同様後半のフロンターレにもボールが保持できる時間が生まれ押し込める時間帯が増えてきた。

前線の20番岡崎くんは、非常に効いていた。CBなのかアンカーがマークに付くべきなのか迷わせる曖昧な位置でボールを受け続けていて、青森山田の選手同士が「いけよ!」「つけよ!」「なんで行かないの!」と混乱。チーム全体の前進を助けていた。

生まれた待望の勝ち越し弾は80分ごろ。その20番岡崎くんだ。青森山田ディフェンダー陣、2~3人の中をドリブルで抜けていき最後は右足でGKのタイミングを外したような爪先でのシュート。あの時間でも冷静で素晴らしかった。

フロンターレベンチからも選手が出てきて、そこに駆け込むフロンターレイレブン。盛り上がる盛り上がる。

俺も、隣のフロサポの方と「おーーー!!」ってなったさ。顔見合ったさ。そしたらその方が「寅ちゃん、すごいんですよ。」って教えてくれたさ。

フロンターレとは対照的に肩を落とす青森山田イレブン。青森山田をずっと追っているわけじゃないから勝手なことは言えないんだけど、この日の青森山田は特に「らしくなかった」んだろうな・・・。前節からかもしれないけど。

この後飛んできた青森山田のロングスローも何とか耐えて試合終了のホイッスル。

2-1。

川崎フロンターレU18がプレミアリーグ昇格1年目で、青森山田に見事勝利を収めた。

掴んだ勝利。深めた自信。

2-1だ。「2」が川崎フロンターレU18だ。

長橋監督が第4節マリノスユース戦の後にこう答えていた。

「青森山田さんは特徴的なサッカーもやってくる。ロングスローなどセットプレー対策などもやっていきながら、自分たちのサッカーというものを見失わないようにしたい。青森山田さんの強度の高いプレスに対し、我々の技術でどれだけできるかということはずっと言い続けていた。その辺りを思い切りトライさせたい」

https://koko-soccer.com/news/5-koukousoccer/29680-2022premiereast0424nagahashihc

この言葉通り、フロンターレは青森山田の強度の高いプレスに対して臆せずにボールを握ろうとしていた。そして、実際大関くん由井くんを中心に握ることができており、この舞台でもそしてこの強度でも十分にできることが分かった。

「この強度の高いプレスをかけてくる相手にこそ、ボールを握り動かすことが大事」ということも感覚として掴んだかもしれない。

大関くん由井くんにフォーカスをしたが、他の選手も本当に素晴らしかった。強度の高いプレスに対して各々が高い技術力を示したことはもちろん、屈強な青森山田の選手達しかも上級生に「球際で」「競り合いで」負けていなかったということ。

心を動かされた、その気迫のこもったプレーに。

青森遠征は決して安くはなかったが、心の底から行って良かったと思った。

以下は、第4節マリノスユース戦の後の岡崎くんのコメント。日頃から青森山田戦を意識した練習・準備が出来ていたということ。

「チーム内でも“やっていくぞ!”というような気持ちのこもった練習だったり、長橋監督からはもちろん“ケガをしないように”とは言われているが、一人ひとりがバチバチでやっている」

https://koko-soccer.com/news/5-koukousoccer/29694-2022premiereast0424okazaki

自分達のサッカーを見失わず臆せずにボールを保持。それだけでなく終始気迫のこもったプレーで青森山田と真っ向勝負をしたフロンターレ。その中で掴んだ勝利と深めた自信。

トップチームがACL 失意のGL敗退。主力選手怪我のリリース。

その裏で下部組織が育成年代最高峰の舞台で最高の強度の中で力を示した意味。

3年後、5年後へ向けても、この死闘を制した意味は決して小さくないはず。

そしてこの中から将来トップチームのACL制覇に貢献するメンバーが出てくる。

そう信じて、これからも見守っていく。


【スタメン選手にコメント】
GK濱崎くん:2年生。FKやCK、ロングフィードだけでなく、ロングスローにも気を遣わないといけない状況。落ち着いてプレーできていた。掴んだボールはこぼさず。

CB松長根くん:3年生。トップチームのキャンプに帯同したその経験がこの舞台でも生きているはず。高井くん、浅岡くん不在のチームを支える要。177cmと決して高いとは言えないが、空中戦では負けじと跳ね返す。両足でのフィードも高精度で素晴らしく。

CB信澤くん:3年生。青森山田のセットした守備からプレスのスイッチが入るのは信澤くんにボールが入った瞬間からだったが、落ち着いてクサビやフィードを供給。松長根くん同様、空中戦では負けじと跳ね返す。松長根くんとともにフロンターレの双璧に。

右SB江原くん:2年生。この試合、両サイドからクロスを放り込まれたシーンは数少なく。それはSBが球際でしっかりと戦えていて、圧力を跳ね返していたから。左WGだけでなくCFが流れてくるも仕事をさせず。

左SB元木くん:2年生。青森山田の右サイドをシャットダウン。対峙した選手は「やるな・・・」と思ったはずで、ドリブル途中に下げるシーンも。堪らず青森山田の黒田監督が「何で行かないの!行けよ!行けよ!」とゲキを入れるシーンが前半にあったが、キレさせたのは元木くんかな。

ボランチ大関くん:3年生。この試合の個人的MOM。直接FKはお見事。そこまでの展開に持っていったのも彼の力。チーム全体が青森山田の強度の高いプレスに臆せずプレーできたのも、彼の影響あり。素晴らしいの一言。

ボランチ由井くん:2年生。大関くんを中心にボールを動かしチームにリズムが生まれたが、その影に18番由井航太あり。青森山田の強度の高いプレスをいなし、かわし。前半から青森山田は彼を捕まえるのに苦労。大関ー由井コンビのボランチは、世代屈指か。

右SH尾川くん:2年生。この日は、左からの攻撃がフロンターレの攻撃パターンだったため右サイドはバランスを保つことを重視か。ボール保持時は、ファジーな位置で受けて青森山田を撹乱。青森山田SBに果敢にアプローチをし、球際で真っ向勝負。前半、尾川くんサイドで観ることになったんだけど、気迫伝わってました。

左SH岡野一くん:2年生。小柄なスピードスター。屈強な青森山田相手にも力が十分に通用することを証明。フロンターレが青森山田のゴールに迫ったシーンは岡野一くんの左サイドからで、岡崎くん五木田くんが絡みながらの前進はgood。

FW岡崎くん:2年生。果敢にドリブルで青森山田ゴールに迫る。「味方を使った方が良かったかな?」と思ったシーンもあったけど、最後の勝ち越し弾を見たら「そんなことを思ってごめんね」と。勝ち越し弾は、青森山田の複数DFの間を抜けて流し込んだ素晴らしいもの。

FW五木田くん:3年生。彼のスピードがプレミアリーグで通用するということはすでに証明済みだが、この相手にも通用することをあらためて証明。ポストプレーや裏に抜けることで、時間を作りチームを助ける。次節はゴールに期待。

長橋監督:今年47歳。大関くんへの前半のアドバイスがきっかけとなり、チームはリズムを。おそらく試合中に細かく指示を出すタイプの監督ではなく、選手に考えさせる。選手が良いプレーをした時にベンチから出てきて「ナーイス!」と声をかける。これは基本「今のプレーは良い!」「続けていけ!」というメッセージ。大関くんに対して前半アドバイスを送ったあとは、後半は基本「ナーイス」だったかな。長橋監督、「ナイス」でした。



最後に。

青森遠征したフロンターレサポーターの方や保護者の方。お疲れ様でした。

またどこかの会場で宜しくお願いいたします。

※5/5追記※次節柏レイソルU18戦が楽しみなわけ。

青森での死闘を制した川崎フロンターレU18が戦う次なる相手。柏レイソルU18。これは非常に楽しみだ。

柏レイソルのトップチームを牽引するのは、若きエースFW細谷真大。リーグ開幕から11試合連続スタメン出場。4得点。

そして、ルヴァン杯でも柏レイソルの未来を担う選手が活躍中。得点ランキングトップタイ4得点のFW升掛友護。

大学サッカー界に目を向けよう。

関東1部リーグ。開幕から5連勝と首位。最も勢いに乗るのは東京国際大。ここには、「落合・熊坂・森」という柏レイソル下部組織出身ユニットが。チーム得点数17得点のうち落合・熊坂コンビで6得点。特に10番落合くんは、柏レイソル特別指定選手として柏レイソルの試合に絡んでいる。

早稲田大にも柏レイソル下部組織出身ユニット「奥田・山下・大場」が。特にレフティーでボランチが主戦場の山下くんは大学サッカー界屈指の司令塔といっていいだろう。

今季筑波大から加入したルーキー森海渡。先日の広島-柏戦ではビハインドの後半から途中出場。そこから2得点をあげる活躍で勝利に貢献。

言わなくても・・・だと思うが、ここで挙げた選手は全員柏レイソルの下部組織出身だ。

ルヴァン杯GL第4節。柏レイソルのベンチ含めた登録選手18人中なんと11人が下部組織出身。柏レイソルの下部組織出身メンバーの起用とその活躍が、もはや眩しいまである。

フロンターレも、田中碧・三笘薫・宮代大聖・宮城天ら若き才能・有望株が下部組織より出てきたがそのボリュームでいうと柏レイソルが圧倒(歴史が違うので当たり前と言ってもいいが・・・※質はイマイチとか言ってない※)。

現在柏レイソルU18はプレミアリーグEASTで1勝2敗。結果では奮わないが、国内で勢いのある育成組織といっていいのではないか。

柏レイソルトップチームで活躍している古賀太陽、上島拓巳、細谷真大、升掛友護ら下部組織出身メンバーのように、今のメンバーの中からも近い将来トップチームで活躍する選手が出てくるはず。

高体連のボス青森山田に勝った勢いそのまま、柏レイソルU18にも真っ向から勝負を挑み勝利を掴みたいところ。

5/8(日)13:00キックオフ。
会場はホーム等々力。入場無料。

青森での死闘を制したチームが、メンバーがそこにはいる。

その目でぜひ。



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