我が友、その死について 結
これが、エリュートの死因とその顛末だ。ご満足いただけたか? あのババアの知識欲を満たした上に盗難の犯人まで分かったんだ。お得だろ。
にしてもだ、もうちょっと宝物庫の防御しっかりしとけよなぁ。ハイ、ちょいと拝借しますよーって感じでヒョイヒョイ持ち出されてどうすんだ。他にもヤバイもんゴロゴロしてんだからよぉ管理がなってねえ……は? イヤ、ダカラ、じゃねえよ。エリュみてぇな輩が今後出てこねぇとは限らねえだろ。好奇心でいじくってなにかやらかす馬鹿だって出てくるかもしれねえじゃねえか。もっと一個一個キチッと管理しろって上に言っとけ。
あーそうだ。前に学府さまから頂いた魔晶石はありがたーく全て使わせていただきました。補充をよこせ。オイオイ、おいおいおいおいおいおい、この話、タダで聞こうと思ってたんじゃねえだろうな? んん? そんな訳ねえだろうが。ちゃんと対価をよこせ。ああはいはい、用意してませんって顔してるから言わんでも分かるわい。あとで毟り取りに行くから用意して待ってろ。ドロテーアのババアによーく言っとけ。
……はァアア? オイ今なんつった? 剣をよこせ、って言ったか? お前の頭は蛆虫でも湧いてんのか? あーね、ババアが欲しがるからね。そりゃそうだろうね。
じゃあ試しに、ほれ、持ってみろ。そんで鞘から抜けたら預けてやらんでもない。
ははは、貧弱だなぁー。もっと鍛えとけ。ハイ次お前。どうぞ。もっと貧弱じゃねえか! 多少は鍛えとけよ!
ま、そもそもだ。ホレ、この通り。どこにあったって、こいつは俺が呼べば手元に来るんだよ。封印とかしても多分無理。エリュの奴は頑固だからな、んなことしたら怒るんじゃねーの?
ああ。こいつにはほとんど意思が宿ってると言っても過言じゃない。喋ったりはしないけどな。だから尚更、学府の連中が持ってってどうのこうのしようだとか、便利に使ってやろうだとか、宝物庫ん中につっこんどこうだとか、そういうのは全部無理だと思っとけ。諦めろ。
メテオの術式が欲しい? それは自分で弾き出せ。頑張って。できるできる。別にさ、エリュじゃなくったって誰かが術式くらい書いてんだろどうせ。資料漁るとかしろ。なんでもかんでも頼るな、搾取しようとするな。馬鹿か。馬鹿の一つ覚えか。そういうのが馬鹿っていうんだよ。学問ができても一般の生活がおくれない奴は馬鹿っていうの。そこらへんのコソ泥のガキの方がまだお前らより賢いわ。
だからやめとけって言ってんだろ。お前らには扱えないし、抜けない。あいつがそれを認めないからだ。
それともなんだ、いまここで、どれかひとつくらい「実演」してほしいのか?
そうそう。それがいい。俺が動かなくても、あっちにいるオネエチャンがおっかねえからな。怖えぞ、加減をしなくてもいいって思われたが最後、一発で芯まで凍らされるぞ。痛い痛い痛い! グリグリすんな! 仕事戻れ! わざわざ走ってくんな! あーもう……
他になにか聞きたいことがあるのなら、また来いよ。今度は最初から対価を持ってこいよ。金なりなんなり。
いつまでも学府ん中にこもってっと、外の世界が分からなくなったりこじらせたりするぞ。学府の外に一切出ない、関わらないってんならいいけどよ、そうじゃないなら自分たちの尺度と傲慢を突き通すのはやめろよな。少なくとも、この宿ではやめろ。
また似たような奴が出たら? そしたら必要に応じて止めたり止めなかったりするよ。
お前らがそういう奴を見つけたんなら、ここに依頼を持ってくりゃいい。色んな冒険者が来るからな、みぃんな仕事を欲しがってる。いくらでも請負手が探せるさ。
覚えとけ。ここの名前は赤鴉亭。なにか困ったらここに駆け込め。赤鴉亭のバノンって名前を覚えとけば、大抵のことはどうにかなるさ。
【終】
恵みの雨に喜んだカエルは、三日三晩踊り続けたという。 頂いたサポートは主に創作活動の糧となります。ありがとうありがとう。