umumのワールド修学旅行 第3話~ スウェーデン・ Astrid Lindgren Children's Hospitalで目からウロコが止まらない 編~
自分で手配し、自分で訪問する
自分のための、世界での研修。
umumのワールド修学旅行記。
第1話はこちら
umumのワールド修学旅行 第1話~スウェーデン・届け私の想い 編~
スウェーデンの美術館や病院に体当たりで交渉し
取れた3つのアポ。
・国立美術館で子供達が活動するアトリエ見学のアポ
・大学病院でのホスピタルアート見学のアポ
・現代美術館でのワークショップ同行見学
第2話で訪れたNational museumに続き
午後はKarolinska University Hospital内にある
Astrid Lindgren Children's Hospitalに訪問しました。
Astrid Lindgrenは、スウェーデン出身の世界的な児童文学作家。
日本でもよく知られる絵本「長くつ下のピッピ」の作者です。
そのAstridが設立に関わったこども病院が
ここAstrid Lindgren Children's Hospital。
院内にあるホスピタルアートが有名で
日本でも数多くのメディアや研究が取り上げています。
ーそもそもホスピタルアートとは?
主に入院患者のために
病院の院内に絵画や彫刻などのアート作品を展示する試み。
アートセラピー効果や芸術支援の側面などが期待されています。
欧米では積極的に取り入れられ
日本でもここ数年注目されるようになりました。
街の中心部からバスで揺られ
到着!
大学病院の敷地内にはたくさんの病棟があります。
看板に従い、奥に進むと
テラス?カフェ?
なんかおしゃぴーな空間に。
こ、ここが小児科?
たしかに子供用の
かわいい遊具めちゃあるけど
ここ、小児科?
ウロウロしていたら、知的なマダムが笑顔で登場!
facebookから大学病院のアカウントにメッセージを送り
紹介していただいたこども病院のproject managerでした。
ここはこども病院の中庭で、子ども達が自由に遊べる場所だそうな。
日本の公園より、遊具がいっぱいある!
早速project managerの案内で、院内に突撃!!
最初の衝撃がこちら。
玄関はいってすぐ、乗って遊べる半身の救急車。
これ、日本だとデパートの屋上とかにあるやつ。
※ここは病院です。
吹き抜けや廊下に、たくさんの絵画や彫刻が展示されていました。
その作品一つ一つを丁寧に説明してくれるproject manager.
こどもたちが喜びそうな動物の作品から
おとなが見てもおもしろい現代アートまで
作品のバリエーションも様々。
※ここは病院です。
さらに案内していただいたのは
こどもたちのための図書室。
長期の入院をしているこどもたちの学習サポートもしているそうなのだが
その設備が!
じゃん!
PC内臓の木と、キノコいす!
((美術造形職人として)これ日本のテーマパークで作ってるやつと同じ素材やん...と言ってる私)
おしゃれソファも!
天井も凝ってる!
※ここは病院です。
この日は見学できなかったけど
こどもたちが入院する病室やオペ室などにも
このようなアートがたくさんちりばめられているそう。
とくにオペ室に向かう廊下の天井は
こどもたちが不安いっぱいの時に視界に入る景色。
ここには一番気を使ってアートを設置しているそうです。
とにかくカラフルで、にぎやかで
でもうるさくない。
「いるだけでわくわくする」病院。
もしも自分が入院することになった時
この病院だったら、嬉しいかも。
聞いてはいたけど、ほんとうに、ほんとうに
日本の白塗りの病院とは
雰囲気も景色も全然ちがう....
これらのアートは基本的に公募で国内のアーティストを募り
選ばれたアーティストが
割り当てられたエリアを元に
構想を練り、制作し、設置しているとのこと。
それって莫大な費用がかかるやんけ...!!と質問したら
この活動のほとんどが寄付金で運営されており
さらにホスピタルアートにあてる国家予算の割合が決まっているらしい。
朝のNational Museumといい、ほんとに国がアートにやさしい...
このほかにもたくさんたくさん質問をさせていただきましたが
4年経った今でも忘れられない印象的なやりとりがあります。
「この活動の導入によって、こどもたちの治療やメンタルケアなどに
何か効果がありましたか?」
と聞くと
「え?それは、わかんないな〜」
と、けろっというmanager。
(え”、まじ?)
「じゃあ、この活動の目的は?」
と私。
「だって、患者が退屈しないじゃない!」
退屈しない、でここまでのことをやっちゃうんかい!!!
明確な効果、活動のヒント、日本に足らないものを探しにきた私にとって
拍子抜けするこの答え。
でも、その感覚って本当に素敵だなと思いました。
目からウロコがこれでもか!ってくらい落ちたこの時間。
もう、なんか、根底がちがう。
そもそもなんか、私の質問がすごく日本人的発想なんだな。
この追求はまだまだ深める必要があるぞ....!
とメラつきながら、病院を後にしました。
午前のNational museumでのアトリエ見学
午後のAstrid Lindgren Children's Hospitalでのホスピタルアート見学
濃厚なスケジュールを終え
ビールでガソリン補給し
街に繰り出すことにした私たち。
絶賛白夜中のストックホルム。
街並みも雰囲気も清潔感があり、本当におしゃれです。
海がすぐそばにあるのに、この清潔感は素晴らしい。
旅は3日目の現代美術館のワークショップ見学に続きます。
<おはなしの続編:渡航後の、実感>
この訪問の1年後。
私は両足の股関節の、骨の形を改良する手術が決まりました。
片足につき、6週間の入院と9ヶ月のリハビリ。
二足歩行に戻れるまでの両足の治療期間は約2年という
わりと大掛かりな手術です。
入院したのはもちろん日本のいわゆる総合病院で
壁もまっしろ、無機質な空間でした。
術後の寝たきり状態での体の痛みや
車椅子生活の不自由などはもちろんありましたが
体の回復と向き合う長い日々で、なにより感じたのは
とにかく、つまらない。退屈。
毎日同じ生活リズム。
リハビリや回診以外やることのない長ーい1日。
変わらないトーンの食事。
時間をもてあます患者さんたち。
相部屋でささやかれるだれかの噂話。
病院側への愚痴。
「なんでわたしがこんな目に」
と思いそうになる、心が小さくなっていく自分を感じました。
このままでは、いかん!
そこで思い出したのは、この訪問の体験でした。
お見舞いの花を飾ったり
ドライフラワーにしたり
白いシーツに好きな布をかぶせたり
お気に入りのぬいぐるみを持ってきてもらったりして
自分のベッドを、自分の好きな空間にする。
家にある画材や文房具をもちこみ
自分で絵を描くほか
仲良い患者さんたちと応接室に集合し
絵や文を考えて「かるた」をつくって遊んだり
退院していく患者さん仲間にカードをつくったりして
長い長い空き時間を、工作して楽しむ。
私はほかの患者さんをできる限り巻き込んで
積極的に美術活動をしました。
このおかげで
わたしは毎日目的を持って過ごすようになり
小さくなりつつあった心が、ちょっとづつ大きく広がるのを感じました。
さらに普段は出会うことのない
10代から70代まで、たくさんの仲間ができました。
日常的に絵を描かない仲間達とアートを楽しめたこと
みんなで退屈を楽しみに変えることができたのは
私にとって大きな発見であり
自信にもつながった経験になりました。
辛いこともたくさんあったけど
おかげで2年の治療を前向きに終え
今は無事、二足歩行で暮らしています。
何らかの病や障害をもつ患者にとって
一番の目的は体を治すことであり
体を治すのは、芸術ではなく医療です。
でも、その長い治療期間中
思うように動かない体や退屈な時間が増えると
どうしても後ろ向きになり
見えなくていいこと
考えなくていいことに支配され
体だけじゃなく心もギスギスしてきます。
そんな患者さんの生活を
ちょっとでも面白いもの、楽しいものにすることは
実はとても大きな心の支えになると知りました。
まさにスウェーデンで私がきいた
「だって、退屈しないじゃない!」
という言葉。
思った以上に大きかったその言葉のもつ意味が
自分の実体験でよーーーーくわかりました。
これは日本でもどんどん発信していきたいことです。
ほんと、なにごとも経験や。
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