質問箱より:着物のコーデ、組み合わせについて

ご質問ありがとうございます。

着物の組み合わせって本当に難しいですよね。私も日々悩むことが多いです。
昔は着物と洋服は別物として捉えて考えていたのですが、最近ではどちらも同じ衣服として考えることにしました。すると、意外とすんなり謎が解けることが多かったのです。考えてみれば着る人間は同じ自分ですからね。

まず、帯と着物の柄との組み合わせですが、これは洋服の基本と同じように柄×柄は避けましょう。全身柄だけになるとなかなか見た目に厳しいものがあります。
例えば 更紗の小紋×お太鼓柄の名古屋帯 とか 色無地×間道の袋帯 のように、一方の柄の密度が高ければもう一方の柄の密度は小さくする、というように密度同士の組み合わせを考えると比較的まとまって見えるかと思います。
これは羽織などのアイテムを合わせるときにも使えます。とにかく柄に柄を重ねることは避けるのが無難です。
同じく柄の大小のバランスもあります。大きな柄の着物に大きな柄の帯だと、くどさを感じますし、逆に小さな柄の着物に小さな柄の帯だと寂しさを覚えます。
結局は密度の問題なのですが、柄の大小で考えるのも分かりやすいと思います。

それから色の組み合わせですが、まずは同系色のコーデから始めるのがおすすめです。これも洋服と同じ考え方ですね。
反対色補色で組み合わせるという考え方もあるのですが、なかなか難易度が高いです。それらの組み合わせだと、クラシック寄りの雰囲気になります。

あと色で大事なのはトーンを統一させることです。色相・彩度・明度の色の関係を言います。よくある失敗例が、柔らかなパステルの色の着物に真っ黒な帯を締めてしまうなどです。帯の部分だけが眼に飛び込んでそこだけ重くてちぐはぐな印象を与えます。もし暗めの帯を締めたいなら、チャコールグレーですとか、限りなく黒に近いが黒ではない濃紺の帯などを締めると落ち着くと思います。
色相環図などを参考にしてみてください。このサイトが着物の色に多い和色による配色パターンも紹介されていて非常に役に立ちます。
和色辞典 https://www.colordic.org/w

組み合わせに困ったときに、何にでも使える万能帯を一つ決めておくと良いかもしれません。私はアイボリーやクリーム地色の、季節を問わないで通年使える柄の帯を万能帯にしています。とりあえずどんな着物でもそれを締めて小物の色をポイントに使えば事が足りると言うわけです。オススメです。

色や柄以外に考えなくてはいけないのが素材と季節の組み合わせですが、これは簡単です。夏物の素材と冬物の素材を基本的には混合させなければ良いのです。混合させてしまうと季節感がめちゃくちゃで野暮なコーデになってしまうので、人から見える部分の素材は季節に合わせて統一しておくのがベターです。

着物や帯の柄そのものについてですが、まずは帯も着物も季節を同一にすることです。迷ったら俳句などの季語を調べると分かりやすいと思います。

NG例
・蜻蛉柄の着物に椿の帯
・萩模様の着物に桜の帯(特に具象的なもの)
・菖蒲の着物に紅葉の帯

四季折々の柄が入っているものでしたら、基本的には通年着れますが一番大きく、メインに描かれている柄を基準にして考えると良いと思います。

よく着物の柄は季節を先取りが粋と言われますが、個人的には遅れなければ良いと思っています。先取りも半月先取りくらいが違和感がないかなと。

こういう時に非常に役に立つのが定番の和柄と呼ばれるものです。具象的に四季の風物詩を描いたものではなく、日本古来の図案を描いた帯や着物は着用シーンがとにかく増えます。特に帯は九寸の和柄の帯を一本持っておくと擦り切れるまで使えますよ。これがさっき挙げた万能帯というやつです。
八寸では少しカジュアルなので附下げに使うとなると格の問題で悩んでしまうので九寸がオススメです。袋帯でも万能帯を一つ決めておくと、本当に便利です。

最後にですが、これはアンティークやリサイクル着物を利用する時の注意です。
まずサイズが合っていることは前提として、時代感と性格を合わせるのが重要です。
着物は洋服ほど流行が激しくないのは間違い無いのですが、それでも10年前の着物と30年前の着物は雰囲気がどうしても異なります。それは着物自体の経年のくすみであったり使用感でもあるのですが、柄付の流行りなどが一番よく目立ちます。 着物を見慣れてくると、その着物が大体どれくらいの時代に作られたものなのかなんとなくわかってくると思います。最近流行っておりますが成人式でお母様やお祖母様の振袖を受け継いで着る「ママ振りプラン(会社によって名称は違います)」というのがあります。これ自体はとても素敵なことであり、私も非常に賛成派なのですが、やはり時代の違いは見ればすぐ分かります。
大事なのは、現代のものを着ること、ではなく帯と着物の時代を調和させることです。
極端な例ですが、典型的な古典柄の友禅に何色ものラメがギラギラのモダンな帯を締めたらまるでどちらかだけタイプスリップしてしまったかのようです。そして性格と擬人化するような話ですが相性も良くありません。着物は実に日本の衣服らしく調和を好みますので、似たもの同士をくっつけてあげるのが最善かと思います。ショーや舞台衣装としての着物はこの限りではありませんが…。

最後に私が世界一着物が似合う女優さんだと思っている岩下志麻さんご本人の着物コーデのコツを「岩下志麻のきもの語り」より引用させていただきます。

「着物のコーデを決めるとき、私がこだわることのひとつは色の組み合わせである。帯揚げは着物から一色もらった同系色か、溶けこむくらいそれを薄くした色にして、帯締めを濃い色にする。これが私好み。帯締めをポイントに持ってくるのである。」

ご質問ありがとうございました。

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