『ビールはご褒美じゃない』
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ーーとあるOL3年目女子2人の会話ーー
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社会人になって呑む機会は格段に増えた。華金、スーツ姿の社会人老若男女問わず溢れる飲み屋。
目の前の親友がジョッキを右手に金色に輝く液体を勢いよく喉に通す。
「この為に生きてきた!」
彼女は私と同じくして社会人3年目。
「大袈裟だよ。そんなに今週疲れたの?」
と、言っても私もまたゴリゴリに疲れた。部署の異動、新人の育成、会社は同じといえど変わる環境。肩が凝っているなんて忘れてしまう程に忙しかった。
「学生の時はさ、呑みとかは二の次の楽しみだったのよ。サークルで呑んだり友達と呑んだりして酔って楽しく雰囲気上げる為のさ、手段?ていうか」
「分かる、なんならカフェ巡りとか服に命とお金かけてたし。死ぬほどかつかつだったけど」
親友が思い出す様に頬杖をつきながら話し出す、私もおつまみの(お気に入り)胡麻油で和えられたキャベツを一口、数年前を回想。
「今ならあの頃と違って、そんなに余裕は無いけど一応お金もあるし、服だって買おうと思えば買えるし、行きたいカフェだって土日に行けるのに、なんか全然違うんだよね、毎週呑んでる気がする」
「疲れてるから、ビール呑みたくなるんだよね」
「ね、まじやってらんない!て時とか多いしね」
「上司禿げろ!みたいなね」
「仕事の愚痴を肴にするの最近私ら多いよね」
「…仕事で楽しい話で盛り上がれるような大人からいつ逸れたんだろう」
「…………ビール生きがいにしたくないね…」
「……ビール呑んでまた来週も頑張る!てなりたいよね……」
「うん、ビールは生きがいじゃなくて癒しにするべきだよね…」
「……私ら干からびてるね…」
悲しいOLの戯言はさておき。
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そう。そうなのだ。新社会人の、そこのあなた。
ひとつアドバイスを、しがないOLから言わせて欲しい。
社会というか、仕事って疲れる事の方が多い。
自分の人生で関わってこなかった様な人とも歩幅を合わせて仕事しなければいけない時もあるし、
価値観全く違うのに同じゴールの為に無理にでも進めなきゃいけなくて、自分の考えを100%伝える事が難しくなる。
どんなに明るくて人好きな人でも、知らない内に気を遣いすぎてストレスフル生活になりかねなかったり。
穴があったら入りたいを飛び越えて上から埋めてくださいなんて感じてしまう程に、人前でこっぴどく叱られて必死に頭下げて涙堪えて。恥ずかしさで仕事やめたくなる瞬間だって訪れたりする。
脅しじゃない。ただ、そういった出来事が起こったりする。いつ何時も、"社会人""大人"ていうレッテルが責任の文字を両手についてくる。
怖いでしょ、少しだけ、"大人"になりたくなくなったら、ごめん。
自分の志望してなかった企業や職じゃなかったら、尚更進みたくなくなるかもしれない。
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でも、こう考えてみて欲しい。
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朝の電車で眠さを堪えて腕を組むサラリーマン。
終電で鞄を抱えて眠り落ちるOL。
街中でiphone片手に早歩きする営業マン。
休日にスターバックスで優雅に仕事?なんて思いきや物凄いタイピングで真剣に作業する私服姿の男性。
電車の中でFPの本を広げる真新しいスーツに包まれる新社会人の女の子。
はてさて。みんな就きたい仕事に就けたのか。就きたい仕事ではなかったけど好きになれた仕事なのか。それとも好きじゃない仕事内容だけど仲間が素敵だから楽しくやれているのか。
そう考えると、理由なんて数えられないほど溢れているし、人それぞれなのだ。
でも、理由は様々だけど、そんな風に"仕事"に対して世の殆どの人が真摯に心を向けている。
社会に関わる為に努力をしている。それは、とてもとても、思ってるよりも、凄い事。
かくいう私も、人より覚えも悪くて要領も良くなく、ぼんやりした性格だけど社会人になれてるよ。だから、安心して。
自分の御給料で家賃払って、時々はお世話になった両親に美味しいごはんを御馳走したり。
彼氏は残念ながらいないから、その分自分のスキンケア用品に多く充てたり。
あとはこうして、親友と美味しいビールを呑んだり。
あ、けど。そろそろ私の、この今呑んでるビールも、"ビールの為に仕事頑張った"じゃなくて、"ビール呑んだら明日も、来週の仕事も頑張れそう"
て、思えるようなビールにしないと、て思うよ。仕事を楽しい、て感じる事ができる大人で在りたい。
"仕事が生きがい、ビールは癒し"
そんな風に生きれたら、素敵。私も、もっと頑張ろうっと。
あなたも、頑張ってください。
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「ねえ、ちょっと私の話聞いてた?」
「あ、ごめん、聞いてたよ。…あの端の席の子たち、新卒っぽいなーて」
「……ああ、ほんとね。若い感じ。あどけな。」
「楽しそうに呑むねえ」
「ねー」
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私の尊敬する先輩から聞いたお話なので、必ずしも社会人みんながこんなふうに感じてるとは思いません。
あなたの価値観は、あなただけのもの。
当たり前なことだけれど、これだけは覚えててくださいね。
なんのために仕事頑張ってるか、なんて、大きかろうが小さかろうがなんだっていい。なんならあってもなくてもいい。
毎日朝起きて支度して、沢山の感情と人と物事に挟まれて1日の1/3近くを費やし、ちゃんと生活している。それだけで良いんだ、て思ったりするわたしも、いる。
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