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「折れない心」をつくる4つの秘訣~【食べチョク 秋元里奈 × 北極冒険家 荻田泰永】~

『強風でかたい枝は折れやすいが、しなやかな竹は折れにくい』

複雑で予測困難な時代、向かい来る波に抗うのではなく、
乗りこなすために、竹のような折れないしなやかさが必要なのではないか。

『Explorer Dialogue #3は、Fringe Explorer アンバサダーの北極冒険家 荻田泰永さんと、こだわり生産者から直接商品を購入できるオンラインマルシェ『食べチョクを運営する株式会社ビビッドガーデン代表の秋元里奈さんの対談から、困難をしなやかに乗りこなす『折れない心』をつくる秘訣をひもといていきます。

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まずは、食べチョクの未知への挑戦について紹介します。

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Q:なぜ起業したのか

秋元:私の実家は農家で両親から「農家は継ぐな」とずっと言われていました。「農家は儲からない」からです。生産者が「こわだりをもって良いものをつくっても正当な利益が還元されない」ことに疑問を感じ、何とかしたいと思って起業しました。

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Q:正当な利益が還元されない要因は何か

秋元:農業の流通は、いかに効率よく食物を供給するかの観点で発展してきました。それは素晴らしいことで、規格に沿った農産物をつくれば、JAさんは全量買い取ってくれますし、生産者さんは販売のことまで考える必要がありません。

今はあらゆるものが飽和している時代です。消費者にアピールするためには付加価値が必要です。ただ、こだわりの農産物も、既存の流通にのせてしまうと規格品と同じ扱いになってしまいます。あるいは規格から外れてしまうと、そもそも流通にのせることすらできません。

せっかく付加価値の高い農産物をつくっても、これまではマッチする販路がなかったのです。そこを変えていくのが食べチョクです。効率化という販路と、共存する形で多様性という販路を農業界に作りたいと思っています。

Q:アグリビジネスにおけるコロナウイルスの影響は

秋元:生産者への影響は出ています。取引がなくなったり、イベントがなくなったりして、農産物が行き場を失っています。そうした農産物を消費者に直接届けたいという生産者さんも多く、食べチョクの生産者登録数は3か月(2月~5月)で2倍以上になりました。生産者さんとしても、これまでは意識しなくてよかった「どう売るか」について考えるきっかけになったと思います。加えて、Stay Homeにより、消費者の方も「食べる」ことに新たな価値を見出しているのではないでしょうか。

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Q:食べチョクを通じて実現したい未来は

秋元:食べチョクのミッションは、生産者の“こだわり”が正当に評価される世界を実現することです。これは生産者にスポットライトを当てることでもあります。食べチョクが、生産者から顧客への直送にこだわっているのも、「顔が見える」、「手触りのある」やりとりを体験してもらいたいからです。オンラインのファーマーズマーケットのイメージです。

今の時代は、エシカル消費が注目されるなど消費に意味を求める人が増えている気がします。食べチョクでも「地元を応援したい」、「生産者に還元したい」という理由で使用されている方がいらっしゃいます。生産者を主役するためのプラットフォームが食べチョクなので、いつか、誰もが憧れるヒーロー農家さんが食べチョクから誕生したら嬉しいですね。

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折れない心をつくるための4つの秘訣

フォーブス誌が選ぶ「Forbes 30 Under 30 Asia(アジアを代表する30歳未満の30人)」に選出された新進気鋭の起業家 秋元さんと、地球上で最も過酷な場所「北極」を10,000km以上歩き続けたきた北極冒険家 荻田さんが、「勇気」、「否定」、「逆風」、「継続」の4つのキーワードを軸にしながら、「折れない心のつくり方」について対談しました。異分野のExplorer同士のダイアローグをお楽しみください。

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恐れを克服する勇気はどうしたら持てるか

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オギタ:DeNAを退職してビビッドガーデンを起業した際、躊躇はなかったのでしょうか?

秋元:農業の課題を解決したいと思い、最初は転職をしようと思ったのですが、それが実現できそうな会社が見つかりませんでした。それを友人に話すと、「じゃあ起業したら」と勧められたんです。

最初は「自分には絶対できない」とか「経験もないし」とか考えて躊躇しました。
でも、「そもそも誰もが最初は初めてだし、経験を積んでから起業しようと思ったら一生できない」と言われて、確かにその通りだと納得しました。

オギタ:それは直感的と合理的、どちらの判断で?

秋元:合理的な判断でした。最初に「起業なんてできるわけがない」と思ったのは、自分の先入観からくる恐れだったと思います。友人の一言で、そもそも起業経験がある人じたいが少ないわけですから、もし失敗したとしても、その経験は長期的に見て自分自身の市場価値を高めてくれると思いました。

先入観を取り除き「恐れ」を解像度をあげてみたら、それほどリスクはないと思えたので、一歩を踏み出しやすくなりました。

私からも荻田さんにお聞きしたいのですが、冒険もとても勇気が必要だと思います。先ほどのご質問でいうと、荻田さんは直感と合理性のどちらを重視して冒険に臨まれるのですか?

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オギタ:私は両方必要だと思っています。直感とはつまり熱量で、自動車ならエンジンにあたります。逆に合理的な思考はハンドルです。エンジンだけだと事故を起こすし、ハンドルだけ握っていても走りません。

冒険でもそうなのですが、「怖い」とは「わからない」ことなんです。多くの場合、恐怖は無知からきます。無知だから先入観に支配されてしまう。正しい準備をして、正しくリスクを把握すれば、怖くなくなるんです。

周囲からの否定をどう受け止めるか

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オギタ:食べチョクのようにそれまでなかったものを始めるときは、必ず周囲から否定されると思います。そのような声とどう向き合ったのでしょう。

秋元:否定されたとき、私はなぜそう思うのかを掘り下げて聞くようにしています。そうすると、否定には二つあることに気づきました。一つは、私自身が納得できる否定で、もう一つは、言っていることは分かるが納得できない否定です。

納得できる否定の場合は素直にショックを受けます。そして、その批判をサービスに反映させます。たとえば食べチョクは最初、家庭菜園プラットフォームだったんですよ。

一般の方が家でつくった野菜などを売るためのサービスでした。少しでも農業に興味を持つ人を増やしたくて、そういうコンセプトにしたのですが、「それメルカリでいいじゃん」って言われて、確かにその通りだなと納得してコンセプトを設計し直しました。

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オギタ:よくわかります。何か行動をするときに、自分が納得できる説明ができるかが、冒険でも重要なんです。極限状況では一つひとつの行動に対して「なぜするのか」という理由を、自己説明できないと死に直面するリスクが高まります。

秋元:本質は同じですね。私は、否定を拒絶するのではなく、まずは柔軟性をもって受け入れることが大切だと思っています。そして、自分の納得というフィルターを通す。納得できない理由を自己説明できるものは、聞き流すという流れです。結果的に、多くの否定は聞き流していました(笑)

逆風にどう立ち向かうか

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オギタ:サービス開始から約3年ですが、その間に事業がピンチに陥ったことはありましたか。そういった逆風にどう立ち向かったのでしょうか。

秋元:いろいろありました。生産者さんが集まらないとか、ユーザーが集まらないとか、従業員が集まらないとか……。それらを乗り越えられたのは、きっと自分自身が夢中で取り組んでいたからだと思います。私の好きな言葉に「努力する人は夢中な人に勝てない」というものがあります。

そのときは結果が出なくても、夢中になっている姿はきっとどこかで誰かが見てくれているのだと思い、逆風に立ち向かっています。荻田さんは冒険されているときにピンチ(逆風)にはどう対峙しているのですか?

オギタ:冒険は厳しい状況が当たり前ですね。逆風の強さはあまり気になりません。ただ、逆風というのは、自分が吹かせている「内なる逆風」もあるんですよね。そこは気を付けています。私はかつてテントで火事を起こして救助されたことがありました。それは自分自身が招いたミスで、自分がつくりだした逆風だったんです。不可抗力か、自己原因か、それは見極める必要があると思います。

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秋元:なるほど。たしかに、自分の感情や行動が原因で逆風を強くしてしまっていることはありますよね。内なる逆風は変えることができますが、外からの逆風は変えられないので、変えられることは変えて、変えられないことは割り切るのが大切ですね。

心を折らずにどう前進し続けるか

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オギタ:事業を継続するというのは大変だと思います。ときには落ち込んだり、心が折れそうになったりしませんか?

秋元:へこむことは多いです(笑)。でも、食べチョク事業は私が足を止めたら終わってしまいます。落ち込んだときは遠くの未来を見るようにしているんです。足元を見るとめまいがしそうなことはいっぱいありますが、成し遂げたい未来に視点を飛ばすと、足元に力が入り前に進み続けることができるんです。

オギタ:遠くの未来に視点を飛ばすことの大切さ、よくわかります。冒険家の河野兵市さんが生前おっしゃっていたのが「遠くに目標を置きながら近くを見て歩くんだ」ということです。近くばかり見ていると目標を見失うし、遠くばかり見ているとつまずいてしまう。そうやって一歩ずつ進むことで継続できるのだと思います。

最後に、秋元さんにとって「未知への挑戦」とは何か教えていただけますか?

秋元:「過去の自分を超え続けること」です。私の目標は“農業界のフレディ・マーキュリー”になることです。フレディはあれだけのヒット曲を出しながら、過去の自分を超え続けて伝説になりました。私も彼のように、過去の自分を超え続けていきたいと思っています。それが、私にとっての未知への挑戦です。

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オギタ:すばらしいですね。本日はありがとうございました。

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(文:山田井ユウキ 編集:横山真介 グラレコ:わか ともみ

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