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【CTO対談】組織に力を与えるCTOの在り方と組織への向き合い方

新型コロナウイルス感染症の影響で『働き方』が大きく変わった2020年。テレワークなど新常態が当たり前になり、いわゆる『ハード面』での対応が一段落しました。

今回は、ACALL株式会社の CTO 藤原弘行さんと Fringe81 取締役 CTO 関が、そんな今だからこそ、社内コミュニケーションや組織づくりなど『ソフト面』の新常態に着目して、エンジニア組織にとって大切なことは何なのかについて対談しました。

ぜひ、ご覧ください!

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組織づくりの源泉はエンジニア時代の原体験

関:今日はよろしくお願いします。

藤原:こちらこそ、よろしくお願いします。

関:まず、はじめにお伺いしたかったのが、藤原さんがCTOとして組織づくりを行うにあたって、色濃く影響を受けている原体験のようなものはありますか?

藤原:原体験ですか...そうですね。実は、チームワークとかコミュニケーションがすごく苦手だったんです。今はそれなりにしゃべっていますけど、コミュニケーションってなんだろうとか、そもそもコミュニケーションってどういうことだみたいなことを深く考えている時期がありました。だから、コミュニケーションが苦手なメンバーがいると、話はしっかり聞こうって思いますし、言葉が出てこなくても出るまでしっかり待ったりとかは、組織づくりでも重視していることですね。

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(※ACALL株式会社 CTO 藤原弘行氏)

関:傾聴は、大切だけどとても難しいと思っているのですが。具体的には、どんなことを心掛けているのですか?

藤原:とにかく人の話を聞くときはフリーハンドで真っ白で聞くっていうことにしてるんです。これは、すごく前から自分の中に叩き込んでるんですけど、相手が何か言ってる間はどう反論するか、まったく考えずにとにかく真っ白で聞くことにしてます。

それで相手が言い終わってから、それに対してなんて返事しようかなって考える感じなんで。ちょくちょく返事が遅れるんですけど。それでも聞いてる間は真っ白で聞く。それは僕の中でかなり大事なポイントですね。関さんは、いかがですか?

関:僕は、元々バンドマンで、生計をたてるためにフリーランスのエンジニアになったのですが、そのフリーランス時代、全部独学で学ばなければならず、とても苦労したんですね。誰も教えてくれる人がいなかったので、まさに体で覚えてきたみたいな。そういう過去の自分を救いたいっていう一つの大きな野望があるんですよね。若手がうまく成長できない時に何かきっかけとか出会いがうまく作れなかったせいで、伸び悩んでいる人がいたら、絶対に助けてあげたいみたいな情熱はすごく強いですね。

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(※Fringe81株式会社 CTO 関陽介)

カルチャーづくりの『しらけ』をなくす

藤原:組織のカルチャーをつくっていく上で、こだわっていることはありますか?

関:そうですね。ボトムアップでしかできないことがあるっていうのを信じていますね。Fringeも組織が100人ぐらいになった時に、カルチャーの濃度が薄まってしまうと思ったので、僕が自主的にカルチャー勉強会みたいなものを開いていたんです。

こういう動きをトップダウン的にやってしまうと、なんていうんですかね、どうしても会社としての意図みたいなものが見え隠れしちゃうんですよね。経営陣には、その想いがなくても、現場側が勝手にそういうことを思ってしまう。そうすると、カルチャーに対する「しらけ」みたいなものがうまれてしまうと思っています。

藤原:たしかに、経営陣としては、そんなことは全然思っていなくても、間違った形で伝わってしまうことはありますよね。逆に、カルチャーづくりにおいてトップにしかできないことって何だと思われますか?

関:中長期的な旗を立てて、ここに向かうんだって言うことですかね。僕はよく北極星とか言うんですけど、北極星を指し示すのはやはりトップの仕事かなと思いますね。未来に旗立てて、そこから逆算で物事を考えて、こっちに進むべきだと示すことは、リーダーにしかできないことだと思ってますね。

さらにいうと、北極星(Why)はトップダウンで示して、Howはどちらかというと余白を残しておいて、そこに参画してもらうみたいなイメージです。経営陣が、こういうやりかたでやろうってHowを示したときに、どうしてもやらされ感が出ちゃうんですよ。とりあえず、上が何か言ってるから乗っかってみようとか。そこにボトムアップの動きとか改善の提案が絡みだしてくると、すごいまわり出すんですよね、歯車が。

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藤原:いやもう、まったく同感ですね、どうやって、そこにたどり着くかって細かいところまで道を引いてしまうと、皆何も考えなくなっちゃうんですよね。「これはどうしますか、これはどうしますか」って。そうじゃなくて、こっちだからねって、行き方は君たちに任せるよってすると、考えて道をつくっていってくれる感覚はすごく持っています。

『話す』ことがリッチな体験に

関:ACALLさんも、Fringeもコロナ危機以降テレワークを導入していますが、テレワークによって組織づくりの新たな課題とか出ていますか?

藤原:そうですね。やはり、気軽に話すという行為へのハードルがとても上がったので、弊社ではディスコードっていうツールを使っています。何かあったら、とにかくディスコードでひたすらしゃべるっていう形です。テキストだけじゃなくて、ここにいたら皆がいてしゃべれる場がある。それがないと、この間もプロジェクトリリースができなかったって言ってたくらいなんですね。テレワークに即したコミュニケーションの場をデザインすることは意識していますね。

関:そうですよね。会話でのコミュニケーションが減って、テキストが主体になってきたので、「話す」場の設計は意識してやらないといけないですよね。我々も、毎週、開発部門の全員が集まる会議あるんですけど、あるメンバーが「カメラを皆でONにしたい」と提案してくれたんですね。その時に、顔が見えないことで心理的安全性が下がるんだなと実感しました。

心理的安全性という面で、テレワークで特に難しいなと思っているのが、話をしてもらうハードルをいかに下げるかですね。何か意見や提案を言ってもらうために心理的安全性をちゃんと作りたいっていうのはすごく思うんですが、議論をつくす課程で言い負かしちゃってる時がないかと悩む時があります。とくに、ビデオ会議だと伝わり方が感じづらいので、コミュニケーションには気を付けていますね。

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性善説ドリブンなインナーコミュニケーション

関:組織規模の変化に応じた組織づくりの課題の変化という面で話をお聞きしたいのですが、創業期(一桁台くらいの時)と今(40人規模)では、組織づくりの課題感の変化ってありますか?

藤原:すごくシンプルにいうと、ちゃんと組織を作らないとまわらないという一言ですね。昔は、僕一人だったりとかエンジニア2、3名とかだと、一つのテーブル合わせて島つくって毎日顔合わせてワイワイしゃべりながらつくってたら、プロダクトはできました。今だと、きちんと組織として権限や役割であるとか、コミュニケーションの場のデザインをしっかり設計していかないと全然まわらないと考えています。関さんはいかがですか?

関:同感ですね。組織の人数が少ない時は楽だったんですよね。全員集合して、よし我々の方針はこうだ!みたいなことを、テンション高い時にテンション高いまま伝えられたんですよ。それはすごく良かったですね。プレゼンテーションとかもいちいち作らなくても、コンテクストがすごく共有できているので、言葉だけでも通じちゃうところがありました。分からなかったらいつでもきてくれっていうと話通じるみたいな。人数が増えるとやっぱりみんな、逃げやすいんですよね。

藤原:逃げやすい?(笑)

関:逃げやすい……なんていうんですかね。人数が少ない中でやってると、たとえば厳しくレビューする上司であっても、自分の仕事をしっかりとやるために相談しに行ったり、僕はこうしたいんですって言わないとダメなんですが、人数が増えてくると、甘めな上司にとりあえず相談しようとか、ぼやかしやすいんですよね。この会議出てなかった、大事な話をしてたっぽいけど、あらためて確認どこかでしようかなと思っててそのまま確認しないままいっちゃうとか。組織の人数が増えれば増えるほど、選択肢が広がって、自分がやらなきゃといった危機感とかが薄れやすくなってしまうイメージです。その難易度は上がりますね。

藤原:いかに皆を、能動的なコミュニケーションに参加させるかという感じがしますね。

関:はい。でも今の規模はまだ、仕組みを作るときなど、うちの組織は皆、前向きにきてくれるはずだという性善説から入るようにしていますね。厳しくても大事なほうを皆が選んでくれると信じて、逃げ道を塞ぎすぎることはしないようにしています。みんな組織を良くしようという思いを持ってくれている、ということには自信があるので、基本はそっちを選ぶ方が生産的なんです。

性悪説にしちゃうとエンジニアの開発のバグつぶしや例外つぶしと同じで一気に設計が複雑になっちゃうんですよね。だから性善説でシンプルにハレの日ルートだけをがっと設計しちゃってアクションっていうふうにしたいって思ってますね。結果的にはうまくいくときもいかないときもあるので、工夫の毎日です。

藤原:そのルール設計の話、すごくよくわかる気がしますね。なんかこう、本当に性悪説の立場に立っちゃうとあれはしてはいけないこれをしてはいけないってルールがすごく増えますよね。ルールを増やすとルールの隙間を見つける人が出てくるので、ぜんぜん良くならないんですよね。僕はすごくそれ思ってますね。

関:僕がみんなを疑い出すと、みんなも僕を疑っちゃうんで、そういう関係はすごく不健康だなって思いますね。

藤原:そうですね、本当に。いかに皆を信用してるからっていうことを伝えれるかっていうのは大事かなと思います。あとはインセンティブじゃないですけど、良いルートを通ると当然良いことがあるよねみたいな、そういう感じにもっていけたら一番ステキだなと思ってますけどね。

関:ウェブサービスをいかに使ってもらうかっていう体験設計も同じですよね。ユーザーへのインセンティブをちゃんと設計しないといけないですしね。僕はインセンティブが単純なお金になっちゃうような組織は怖いなっていうふうに思ってますね。

がんばった人がインセンティブをもらうという構造は、ぜんぜん良いと思うんですけど、そもそもがんばったことを評価すること自体が難しい、というケースが非常に多いと思うんですよね。

だからこそ、メンバー同士でがんばった人を褒める、称える。その承認や成長実感がインセンティブになっていれば最高で。それを見て、仲間も刺激をもらって頑張りだす。そんな好循環が自然と生まれていく状態になれば、カルチャーが機能しているということなんだと思っています。その構造をいかにつくるかってことが大切だと思いますね。

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記事を最後まで読んでいただきありがとうございました!
Fringe81のエンジニア組織については、以下のnoteでも紹介していますので、よろしければご覧ください!