最後のマスカラ
魅力的な新聞チラシを見つけた。
一度ぬれば三週間はとれない韓国マスカラ。桜木町○○美容院
その頃のわたしは睫毛美容にこっていた。
まつげパーマをかけて、美容液を塗り、仕上げに繊維入りのマスカラをつける。くるんと上向いた長いまつげ目指して毎朝格闘していたのだ。
さっそくその美容院に出かけた。
一時間かけてまつ毛パーマがかかると、いよいよマスカラ、美容師さんが
丁寧に塗ってくれた。
鏡で見るとなるほど睫毛は二倍の長さになりクルンと上向いている。
多少わざとらしいが悪くない。
ところが夜顔を洗おうとしてびっくりした。カールした睫毛の先が
うわ瞼をチクチクと射して痛いのだ。マスカラがしっかり塗られているので睫毛はバリバリに固まり、細い針金のよう。こんな痛い思いを三週間するのか、と気が重くなった。
が、一週間もするとはがれ始め、二週間たつと、細い糸くずのような最後のマスカラは洗面台の排水穴に「チャルガヨ!」と流れ去った。
おわり(410文字)
たらはかにさんの企画に参加します。
たらはかにさんお世話をおかけしますがよろしく願いいたします。
チャルガヨ、とは韓国語で、さようなら、だそうです。😢
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