立方体の思い出
風助と散歩していると、声をかけてくれる上品な老婦人がいた。
何回か言葉を交わすうちに笑顔で言われた。
「うちはあの坂の上の四角い家なんです。一人暮らしだから、いつでも
お寄りくださいな」
ある日公園のベンチで一休みしていると、その老婦人が通りかかった。急いでいるようで、挨拶をしただけで別れたが、ふと見ると手袋が片方落ちている。後を追う。意外に足が速く、もう坂を登りつめ家に入るところだった。
チャイムを押す。用件を言うと
「カギがかかっていないので、お入りください」の声。
ドアを開ける。するとすぐ先にまたドア。ドアを開けるとまたドア。気味が悪くなって引き返そうとしたが、今入ってきたドアは開かない。先のドアをあけると、またドア、部屋はだんだん狭くなり息が苦しくなった。
外からワンワンと風助の声。
助けて!風助!
眼を開けるとベンチの上。
なんだうたた寝したのか。それにしても生々しい夢だった。
「あら、こんにちは」
目の前に老婦人の笑顔があった。
おわり(422字)
たらはかにさんの企画に応募いたします。
今週のお題は「立方体の思い出」です。
締切間に合った~~
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