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ショートショートの数々、知恵を絞って書いています。
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2021年9月の記事一覧

ぼくは右京    #1分マガジン

ぼくは右京    #1分マガジン

ぼくは、かあさんと二人暮らしだ。ぼくが繭のような入れ物に入って届いたとき、かあさんは、感激いっぱいという表情でぼくを見、そっと抱き上げた。

「まあかわいい!相棒だから、あなたの名前は、右京よ!
わたしは、かあさん、ね!」

「ぶんかつ」になったから買えてよかった!ともいっていたが意味はわからない。かあさんが毎夜ぼくをぎゅっと抱きしめたから、ぼくの足の付け根がゆるゆるになり一週間入院した。

「ご

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山笑う   #1分マガジン

山笑う   #1分マガジン

 句会のメンバーで、小鷹山にハイキングに行くことになった。花を散らせて葉の茂り始めた桜が、緑の木々に溶け込んでほっと一息ついているような4月の始めのことだった。

 参加者9名のうち最年長75歳の小沢さんは人気者だった。俳句の名手で「外出のおしゃれブラウス山笑う」は皆から絶賛された。「山笑う」は春の季語で春の山の明るい感じを表している。それに加え彼女には天性の明るさがあった。

「は、は、は、」

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涙のわけ

涙のわけ

「記事から曲」応募作品(ジユンペイさん企画)
  あたたかい再出発の物語を、童話風に書いてみました。
  主役はぼく(真珠)と見せかけて涙であったり。
  真珠のようなうれし涙を流せたら・・・
  わたしの果たせなかった夢です。

 

ぽつり ぽつり

水滴が落ちてくる 涙のようだ

そっと目を開けると ぼくは手の上に乗せられている
おじいさんが泣いている

おばあさんも・・・

ぼくは海の底

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耳を澄ませて・・・「投稿作品」

耳を澄ませて・・・「投稿作品」

(雲の上のわたしから、木の下のあなたへ)

あら コーヒーの香り・・・

あなたの入れてくれたコーヒー

わたしがカットするとき

あなたの髪に残っていた香・・・

ちょっぴり長めで優しいカール

切りすぎないでね

サラサラと葉の揺れる音・・・

お気に入りの曲も聞こえる

やさしい音・・・

幹のなかを通って来たからかしら

こちらはね

朝日がのぼるとき

夕日がおちるとき

空一面が絵にな

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