【フレンドフーズではたらく、ほんまもん】鮮魚部 渡部知子
【プロフィール】
名前:渡部智子
所属:鮮魚部
年齢:60歳
入社歴:1年目
出身地:北海道
京都ならなんとかなる
まずこの試作品を、ちょっと食べてみてください。鮮魚部で余った魚卵をもらってきて、家で干してからすみにしたものを、酒粕につけてみたんです。こっちはヒラメ、こっちはサワラ。お酒のアテや、ごはんのお供に合うでしょう? 瓶のラベルは自作です。「渡部商店」って勝手に名づけて、よなよな自分でデザインして、印刷してます(笑)。
https://note.com/friendfood_kyoto/n/n3aac73b7c71e
建築の完成予想図のイラストを描く仕事を25年ほどやっていました。仕事柄、必要に迫られて一級建築士の資格も取ったんです。でもアナログからデジタルの時代になって、3DCGが手描きに取って代わってしまって。それで、転職しようと。45歳のときですね。
で、なぜか和菓子職人になったんですよ(笑)。私、あずきが大好きなんで、あずきっていえば和菓子だよなって、そんな単純な理由でした。まわりにはけっこうびっくりされましたけど、職人には憧れがあったし、それまでフリーランスだったものだから、雇われの身になることへの安心感もありました。
好きだった札幌の和菓子店で数年働きました。その間に欲が出てきて、他でも修業したいと思って、東京や仙台、金沢など、全国の好きな和菓子屋さんに当たって砕けろで連絡してみたけれど、当然、そんなうまくは行かず。
それで、京都なら和菓子屋だらけだろうし、行けばなんとかなるかなって思って、49歳のとき京都に引っ越してきたんです。京都には、ひとりの友だちも親戚もいないし、縁もゆかりもなかったんですけど。
いろいろ食べ歩きして、圧倒的においしいあずきのお菓子を作っている店を見つけたので、そこの門を叩いて。結局8年、働かせてもらったのかな。
まだ見ぬ人たちに惹かれて
私の頭のなかはほとんど食べもののことしか考えてないんです。あずきはもちろん、そもそも食べることが大好き。だからスーパーってすごくわくわくします。前職のときからフレンドフーズにはよく来ていて、この場所をつくっているのは、きっとおもしろい人たちなんだろうなと思っていました。みんなで意見を言い合うような、風通しのいい場なんだろうなって予感があった。それでフレンドフーズに応募したんです。
入れてもらえるならばどの部門でも構わないって思っていたのですが、なぜ鮮魚部に配属されたかというと、面接のときに社長が「渡部さん、鮮魚っぽいよね!」と(笑)。単に人手不足だったのか、何か根拠があったのかわかりませんが、じつは密かにいちばん希望していた部門だったから、びっくりしました。というのも、フレンドフーズにお客として来ていたとき、どこにいる時間がいちばん長かったかというと、魚のコーナーだったから。私、北海道の釧路育ちだから、魚が大好きなんです。
「渡部商店」のデビューは近い?
そんなわけで2023年の3月からパートで入ったんですけど、思ったとおり、個性的でユニークな方がたくさんいる職場でした。まだ入って数か月なのに、冒頭のような試作もみなさん、おもしろがってくださって。この空気の流れ、そして風通しのよさ。意見も盛んに出されて、新しい商品もどんどん考案されています。各自が自ら発信して、共有し合っていて。部門それぞれが個人商店で、フレンドフーズはその集まり、市場みたいな印象ですね。
自分もかっこよく魚をさばけるようになりたいって思ってはいますけど、職人の方々がいらっしゃるし、それ以前に覚えることが山盛りあるので、いまはそれで手一杯。
とはいえ、捌いているのを横目に、アラやなんかが余っているのを見つけては、あれで何か作れないかなと心のなかで企んでます。家に持って帰って、フュメ・ド・ポワソンを試作してみたり。パッケージして、冷凍食品で販売できるんじゃないのかな、なんて。
いろいろ頭で考えるより、思い立ったらまずやってみる。そんな日々を、楽しく過ごしています。
文:野村美丘(photopicnic)
1974年、東京都出身。フリーランスのインタビュー、執筆、編集業。またフォトグラファーの夫とphotopicnicを運営している。文化、意匠、食、犬と猫、心と体と精神性、そのルーツなど、人の営みがテーマ。さまざまなことやものや考えがあると知り、選択肢がたくさんあることに気がつくこと。その重なり・広がりが有機的につながっていくことに関心あり。著書に『わたしをひらくしごと』(アノニマ・スタジオ)。編集した書籍『ヒトゴトにしない社会へ―ほどよくつながれば、もっと生きやすい―』にはフレンドフーズ社長のインタビューも掲載。
2020年秋、京都に拠点をつくった際、フレンドフーズに初めて足を踏み入れて即ファンに。その感激を伝えるべく同社にメールしたところ社長から即レスがあり、さっそくここでの執筆を担当させていただくという幸運を手に入れました。
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