『CAT CROSSING』が良すぎたので自分の考察というかプロデュース性を表明するための記事(セルフ転載)
はじめに
この記事は2017年9月20日にニコニコ動画のブロマガに投稿した記事のセルフ転載になります。複数回のライブ披露も経て少し考え方は変わっているのですが、当時の鮮度と熱量を考えて特に弄らず転載します。
本文
さて、『CAT CROSSING』。僕は試聴のときは1番が孤独な北沢で、2番に入って絵本の……というか、デレた、人と居る喜び、笑顔を取り戻した北沢になると思ってました。そういう予想がTwitterを見てても多かったように思います。
孤独なままでしたね~~~~!!!!!最高だ!!!!!!!!!
僕は劇マスで春香さんに喧嘩を売る(あの天海春香に!)北沢を見て惚れ込んだので、正直感動しました。
ところで『CAT CROSSING』最高!!!ってのは北沢Pの共通見解だと思うのですが、どこが最高か、という部分に結構差があってこれはプロデュース性の違いを炙り出すいいリトマスになるのでは? と思ったのでここからは僕の解釈を書いていきます。皆さんも書いてくださいね。
また大前提として僕の北沢感は「北沢志保伊良部秀輝説」に基づきます。伊良部を知らない人はWikiとか読んでください。大ざっぱに言うと沖縄出身のアメリカハーフ、生き別れた父親を見つけるためにメジャーに挑戦した野球選手です(諸説アリ)。
超長く(4,000字くらいあります)なったので概要は以下です。
・『CAT CROSSING』は『ライアー・ルージュ』の前の時系列、つまりゼロ曲目に当たる歌。
・一見格好いい歌に聞こえるが北沢の弱さが表れている
・オチサビのところで入るノイズは父親の記憶を表している
では『CAT CROSSING』の歌詞を順に追っていきましょう。
“獲物くらい自分で見つけるわ 甘く見ないで”
“飼いならすつもりなら 他を当たってよ”
“獲物を見つける”とはそのまま生活を意味しています。“飼いならす”も単純に、父親が居なくなり母子家庭となった北沢が同情を嫌っていると捉えていいでしょう。
またこの箇所から『CAT CROSSING』が時系列的に父親が居なくなってからアイドルとなる間の話であることが読みとれます。年齢にすると7~13歳でしょうか。
“暗闇の中 道を滑ってくヘッドライトに”
“影法師落とし物 探さないでね”
この部分は正直まだしっかりと読み取れていません。夜の道を歩く北沢、その影法師=イミテーションの剥がれた真実、落とし物=真実の姿の欠片を見つけられたくない、ということでしょうか。
また“影法師”というと童謡や絵本、子供の遊びで頻繁に使われるモチーフなのでそちらのアプローチも考えた方がいいでしょう。
“生きていくのは厳しいものよ”
“いつの時代も そうでしょ”
たかだか14年しか生きていない北沢が“いつの時代も”とか言っちゃうのが最高に可愛い歌詞ですね。
ここでは劇マスでも披露した北沢の「主語を広げる」癖が見て取れます。「このままじゃ“みんな”ダメになりますよ!?」って奴ですね。
自分が生きにくい生き方をしているから“厳しい”のに、「生きることは厳しいこと」と主語を広げることによって自分の考えを補強しています。自分が感じてる辛さを否定しないためですね。
“からだ中もしも傷だらけだって”
“それは強さのエビデンス”
ここで一番重要なのは「身体」でも「体」でもなく“からだ”であることです。漢字で書いてしまうとどう読んでも「肉体」を意味してしまいますが、あえて平仮名で書くことにより意味を広く取れるようにし、“からだ”でありながら「心」の意味も感じられます。
“心配しないで 余計なお世話ね”
“痛みと仲がいいの”
ここも非常に北沢らしい歌詞です。“心配しないで”とは言っていますが「大丈夫」とは言っていません。“痛みと仲がいいの”は「痛くない」ではありません。
北沢は自らが「辛い」と感じていることを認識しながらもそれを「耐える」ことを選びます。
“つま先の野生を信じてる”
ここもまた北沢の強気なようで弱気な面が表れています。本当に信じているなら「野生があるから」のように言い切りの形を取ればいいのに、“信じてる”と存在の断定を避けます。
“つま先”もまた、身体で最も端にある部位にしか“野生”を信じていない。もっと中心に野生があれば力強いだろうに、信じていながらも小さな物として見ています。
“小雨すら体温を奪ってく 袋小路で”
“うずくまりやり過ごす 背を向けたまんま”
“袋小路”で“背を向けた”ことで、北沢が本当は完全な孤独ではないことが分かります。なぜなら“袋小路”には、さっき自分が通った道が存在しているからです。
背を向けず、迎えに来てくれる「誰か」を望めば叶うかもしれないのに北沢はそれを望みません。これはオチサビに繋がります。
曲調としても前半部はピアノメインの少し柔らかなバックになりますが、後半部で盛り上がり、助けを求めたい感情を振り切っています。
“自分自身すら 未だにまるで捕まえられない”
“本能を追いかけて 虹を越えてく”
ここで北沢がただ「生き様」にこだわっていることが明らかになります。自分がどうなりたいか、どこを目指しているのか。それが分からずただ「孤独に生きる」ことが目的になってしまっています。だから“本能”と称することで言葉にできない感情を正当化し、いつか辿り着けるはずの“正解”=“虹”を目的地に設定します。が、それは具体的な(理知的な)目標ではありません。
“鏡に向かい牙をむいたら”
“子猫に見えた私は”
北沢の頭のいいところは自分の気持ちを虚栄で飾っていることに半自覚的なところです。自分で自分を誤魔化していることに半分気づきながらも、自分を守るために気づかないフリをします。そのため北沢はいつも強い言葉を選んでしまいます。自らを奮い立たせるために(=ライアー・ルージュ)。
“牙をむいたら”の部分も、唇をルージュで飾ったのに口を開けてしまったので見えてしまった、と解釈できます。
また歌い方としても“私は”の延ばしは伸びやかではなく、気持ちを押さえるように歌われています。
“抗い続ける それがなんなのか”
“分からなかったとしても”
北沢は何に抗っているのか。僕は「父親を失ったこと」であると考えます。この喪失を悲しむ、必要儀礼を北沢は消化していません。弟を、家族を守るために悲しむことをやめたからです。
“間違いの先に正解があるの”
“だから大丈夫でしょ”
“しなやかに生きてくって決めたの”
ここもクリティカルな箇所です。なぜなら北沢は自らの選択が“間違い”であることを知っているからです。
それは一般的・社会的な意味での“間違い”。自分の選択が決して支持を得られないことを知りながら孤独を選びます。
でも“しなやか”は柳のように弾力があって柔軟な様を指すので、北沢の生き様が“しなやか”かと言われると疑問がありますね。折れないって意味ではそうでしょうが。
“間奏”
疾走感のあるパートは北沢が自らの生き方で力強く戦っている情景を想起させます。
ここの間奏でノイズっぽい演出が入りますが、僕はここに父親との記憶を感じました。
“決してブレない生き方(後悔はしない)”
“迷いなく見えるけれど(付きまとっている)”
“孤独から(孤独から)逃げられないの 二度と”
自ら選んだ道の厳しさに打ちのめされる箇所です。実際には『絵本』で孤独から逃れるわけですが、北沢は悲壮な覚悟を決めます。
この歌詞の前に父親との記憶が蘇っていることを踏まえると、弱気な本音が出てきてしまうのはとても自然な流れですね。
“からだ中もしも傷だらけだって”
“それは強さのエビデンス”
“心配しないで 余計なお世話ね”
“痛みと仲がいいの”
“つま先の野生は”
この辺りはもう余裕がないというか、必死ですね。最後に頼る“野生”ももう“信じてる”とは言えません。もう生き方は変えられない。戦い続けるしかない。“後悔はしない”けれど、“虹を越え”られるのか。
“抗い続ける それがなんなのか”
“分からなかったとしても”
“間違いの先に正解があるの”
“だから大丈夫でしょ”
“しなやかに生きてくって決めたの”
自らの生き方が多くの弱点を抱えていること。決して正解ではないことを自覚しながらも北沢はこの生き方を選びます。それは14歳のプライド。選択肢が少ないからこそ生じる意志の強さです。
この後に『ライアー・ルージュ』で“他の人とどこか違う人”“強気の裏の本音がこんな 誰かを求めたなんて”と繋がっていくので、『CAT CROSSING』では自覚的だった弱さを、意地を張って生きていく中で忘れていった(忘れていけた)ことも読みとれます。
『絵本』でも“でも本当は気付いてた 私はどこで間違えたの?”と続くため、最初から間違いと分かっていて選んだ道が時間と共に正しいと信じ込んで(信じ込めて)いたことが分かります。この2点から北沢の持つ、良くも悪くもな意志の強さが感じられます。
しかし最後には“長い旅の途中でこれ以上独りじゃ進めない”と“立ち尽くし”ます。ここで“うずくまりやり過ごす 背を向けたまんま”としたら“そっと微笑ん”でくれた人にも気づけなかったでしょう。
すっかり長くなってしまったのでここまでとしますが、“独りよがりとだれかが笑う”“聞こえないふりしてぎゅっと拳を握るけど”も『CAT CROSSING』時代を振り返ってるとも言えます。
『CAT CROSSING』『ライアー・ルージュ』『絵本』の3曲で北沢志保をプロデュースした1年間を描いているように思いますので、是非この順番で3曲聴いてみてください。
ところでここまで読んでくださった北沢Pなら絶対に解釈違いがあると思います。僕は狂犬北沢志保が大好きな人間なので、どんどん噛みついて来てください。是非ケンカしましょう。
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