SMT感想とか
突然だけど、推しは人生を豊かにすると思う。
自分の価値は自分の中にしか持てない。他者から見てどれほどお金を持っていようと、周囲の人に恵まれていようと自分自身が幸せだと感じていなければ、その人は幸せになれない。
けれど、時折、自分の中に持っているものを自分がどう感じているかという物差しは、自分のことをうまく測ることができないことがある。自分の価値を自分自身が認めてあげられないことがある。なぜなら、他者と比較して自分を見ることが圧倒的に多いからだ。相対的な価値は自分を客観視させる一方、自己肯定感を下げることも多い。
誰かを推すということはその価値が自分の外側にあり続けるということだ。推しはただそこにいるだけで価値がある。そこにあるのは、絶対的な価値だ。オタクが「世界一かわいい」だの「宇宙一愛してる」だの、世界一、宇宙一を乱立させているのは、その「世界」や「宇宙」は私のなかの世界であり、宇宙なのだ。そこに比較対象など存在しない。世界や宇宙はいくつあってもいいのだ。自分がどんなにダメダメな日でも、推しは夜空の星のように、キラキラとこの世界のどこかで輝いている。推しの価値は私のダメダメな一日に全く影響を受けない。平行線のように別の世界を生きている。
そして、その交わらなさに私は救われている。
自分のことを好きでいられない時でも、「推しを好きな自分」のことは好きでいられた。推しはいつだってかわいくてかっこよくて最高である。その推しをあまたあるアイドルの中から見つけ、応援している自分にはよくやったと言ってハグのひとつでもしてやりたくなる。自分の日常生活から切り離されたところで、出会ったこともない誰かの健康と幸せを毎日、心の底から願っている。誰かの幸せを心の底から祈ることは私の心も健康にしてくれる。
普段は交わらなさに救われている私だけど、推しと私が交わる点があるとすれば、それはコンサートの日なのだろう。
キャッチボールのように、見えない愛という概念が飛び交う、コンサートが好きだ。
自負心と愛しさの混ざったまなざしで推しが見つめるペンライトの銀河の一つの光になれるあの日が好きだ。
涙があふれているのに嬉しくて、笑っているのに切なくて泣きそうになる、名前を付けるのがもったいないあの感情にもう一度出会いたくて、私はコンサートに行く。
そして、SMTは、私にとってはじめてのスホちゃん、EXOに出会えるコンサートだった。
兵役中も、除隊してからも何度も想像したステージに立つスホちゃん。
スポットライトが当たり、水を得た魚のようにステージを飛び回る。
目まぐるしく変わる表情、サプライズみたいなスタイリング…
それらが、脳内の映像の数億倍の解像度で目の前に飛び込んできた。
早く来て欲しくて、始まったら終わってしまうから始まって欲しくなかった。
何百回と聞いたイントロで隣の友達にしがみついた。文字通り膝ががくがくしていた。
正直、泣いて前が見えなくなることを心配していたけど、登場した時には感動より、生命体としての可愛さに脳がショートして何も考えられなかった。
そこから先の記憶は海馬がショートして、ほぼないので、ここからはスホさんってやっぱすごいという話をしたいと思う。
本国SMTOWNのセトリが出たとき、なんで彼がタイトル曲の「Grey Suits」ではなく「Hurdle」を選んだのか、少し不思議だった。
彼はいつも一生懸命なのだけど、たまに私の感覚と違うときがあって、そこが愛しくて推しがいがあって楽しい。今回もそう来たか⁉と愛しくなったり、日本FC会報の夏に聞きたい曲は?という質問に対して「Hurdle」と答えていたことを思い出して納得していた。
でも実際に、会場に行って「Hurdle」を選んだ意味が少しわかった気がした。
今回のSMTは、正直アウェイな環境だったように思う。
他グループのファンで、EXOのことをよく知らない人たちがたくさん来ていたのも事実だ。
東京ドームだったから、野球見に行ったら間違えて、相手チーム側の席に座ってしまったような感覚さえあった。
セットリストは、ジョンデのサウォリ、オニュさんとニンニンのWayとバラードが続き、座っている人もいたり、それぞれのスタンスで曲の世界観に浸っていて、会場は感傷的な雰囲気で包まれていた。
そして流れる雑踏の音、軽快なベース音。
ウサギのように軽やかに登場した彼。
曲が進んでいくにつれ、クラッパーの音が揃い、会場の関心が彼に集まっていくのが分かった。
そして間奏のギャルピに湧くフロア(ところでスホピースはどこ行ったの?)(小声)
突然鳴り響くブザー、全力疾走で走り出すスホちゃんに大盛り上がりの会場。
彼が巻き起こしたのは間違いなくお祭りだった。
ライブ仕様にステージを広く使い、メンステからセンステまで駆け抜けることで、曲の持つ疾走感を表現し、1人で会場の一体感を演出し、エンターティナーとしての彼の魅力がギッチリ詰まったステージだった。
アウェイの環境でより自分の曲を生かすにはどうすればいいのか、カッコイイよりも楽しいに振った方が印象に残りやすい。
多くの人を楽しませるという観点で考えたときに、今回の選曲は大正解だった。
エンターテインメントを制すものはSMTを制す。
スホちゃんは一人で東京ドームを制してしまった。
スホちゃんはやっぱりすごい。
スホちゃんが私を連れて行ってくれる世界は広い。
普段なら行く勇気も出ない、表参道にあるオシャレなセレクトショップに行った。
美術に興味のなかった私が、ゴッホ展をきっかけに年に何度も美術館に足を運ぶようになった。
人生で交わることのなかったはずのたくさんの出会いをスホちゃんが繋いでくれた。
意味のなかった点と点を星座のように意味のあるものにしてくれるなんて、やっぱりスホちゃんは星なのかもしれない。
明日は、彼のソロコンサートがある。
明日が待ち遠しい気持ちと、明日が来たら明日が終わってしまうのが切ない気持ちで胸がいっぱいだ。
彼を見に来た人達が集う空間はどんなものだろう。
春色の彼のように、暖かく美しいものであって欲しいと願ってもやまない。
明日、白い銀河の1部になれることに愛と感謝を込めて。
9月30日 金曜日