3階建ての給付なんてあるの?実はめちゃ手厚い共済会。今回はその財政課題について。
――今回は会費支出が収入を上回り、共済会収支が悪化し財政が逼迫している共済会の課題解決について2回に分けてうかがいます。
共済会の収支が悪化した原因は、共済会の会員属性の変化に対して給付内容のミスマッチが放置されたことです。企業や自治体を母体とする共済会・職員互助会では、発足した当時と比べて会員の平均年齢は上昇しています。
――そうですね。定年が延長される一方で、少子化で若手社員の数も減ってますし。
古くからある民間企業の共済会や自治体の職員互助会は、保険者(健保組合、共済組合)の給付事業を連動させて共済会・職員互助会の給付内容を設計しているところがあります。保険者の法定給付に、付加給付を上乗せし、さらに共済会でその上乗せを給付するという3階建てになっていることがあります。
――手厚いですね。共済会でいうと業務外での病気やケガによる休業補償給付や医療補償給付ということですね。法定給付である傷病手当金に加えて、傷病手当金付加金や延長傷病手当金を支給する上に、さらに共済会で休業補償給付が上乗せされるわけですよね。
あるいは高額療養費に付加給付で一部負担還元金、さらに医療補償給付が上乗せされます。会員の平均年齢が上がれば、医療費が多く発生し、医療補償給付額も増えます。病気やケガ、メンタルでの休業も増えると休業補償給付も増加します。そうなると共済会の収入に対して支出が増え収支は悪化し財政も逼迫していきます。
――平均年齢が上がっても財政悪化を回避する方法はあるんでしょうか?
共済会費や拠出金の算定式を定率方式とすることで回避できます。
――定率方式?
共済会費の算定方式は大きく2種類あります。まずは定額方式。これは、会費月額を500円とか1,000円とかに会員一律で設定する方式です。応用として正社員は1,000円、非正社員は500円といった段階制定額方式もあります。一方、定率方式とは基本給の0.5%とか標準報酬月額の0.8%を会費とする方式です。
――具体的にはどのように違ってきますか?
定額方式は、会費算定と給与控除に手間がかからないのがメリットです。全員同じ金額を毎月給与控除すれば良いだけですから。デメリットとしては、給与額の少ない会員は相対的に会費の負担が重く感じられることです。
定率方式は、会員ごとに会費額が異なるだけでなく、毎年会費額が変わることになります。給与控除データを作成するのは大変ですが、給与の高い会員は会費も高く、給与の少ない会員は会費が安くなります。
――負担力に応じた会費ということで応能負担というやつですね。
一般には、負担感を考慮して会費が高くない共済会では、定額方式がとられ、給付が手厚く会費も高くなる共済会では定率方式となります。定率方式は会員の勤続年数が延びれば給与も上がる傾向から会費収入も自然に増えます。
――なるほど、これなら会員の平均年齢が上がっても会費収入も同時に増えるので財政悪化は防げそうですね。
はい。ただそれでも収支は悪化してしまうケースはあります。
――となると、別の対策も必要になってきますね。
過去からの積立金を取り崩すなどしている共済会もありますが、それにも限界があります。また会費を引き上げるというケースはあまりありません。
――会員からの抵抗も大きいですしね。となると、給付額の減額または給付種類の削減による支出抑制でしょうか。
それをすると、これまで受益を得てきた会員からの反対が大きいでしょう。とくに医療補償給付は経済的にも大きいですから。
――会費の引き上げも給付額の削減も難しいとなると、また一つ収支悪化の解決に越えなければならないハードルがありますね。会員の理解を得られる収支対策が求められますね。