【葬送のフリーレン】周到に人間に不都合なエゴや矛盾を隠蔽している作品【逆視点レビュー】
■最初に
葬送のフリーレン。日本のみならず世界でも評価される作品、そして人とエルフ視点で描かれたとても「綺麗」な物語です。誰もが完璧というこの作品だからこそ「逆視点」でレビューしていこうと思う
■人という愚かな生き物
だがこの作品の「綺麗」さは人間の不都合を周到に隠蔽した結果ともいえる
この世界は魔族対人間の戦いと同様に人間同士の戦乱も続いている世界だ
たとえば魔法使い試験編での北部魔法隊隊長のヴィアベルという人物によると北方での人同士の戦争では人間の盾として戦場で子供を前線に立たせるのだという
さらにこの世界では人は人同士のみならず魔族とも長い争いを行っている
魔族と人やエルフとの関係性はこの作品でことあるごとに描かれる
例えばフリーレンが生まれた村やシュタルクが生まれた村が
魔族によって滅ぼされるエピソードなども描かれる
フリーレンによると魔族が人の言葉を話すのも捕食対象である人を狩るために独自に進化した結果なのだという。だからこそ人と魔族は相容れないとフリーレンは言う。
だが視点を変えれば魔族が人を襲うはそれが捕食対象である以上に我が種族を守るためなのである。現に人によって魔族の王は倒されてしまった。おそらく魔族側からすれば捕食対象である以上人を絶滅させようとまでは思っていないはずだ。だが人間側が目論むのは完全なる魔族の絶滅だ。
■野蛮な人間から一族を守る魔族の長アウラ
例えば断頭台のアウラはたくさんのアンデット化した人間を自分の兵士として使役している。視点を変えればアウラと彼女が従える魔族を絶滅させるために人が送り込んだ尖兵が少なくとも過去あれだけいたということだ。
この物語におけるアウラの登場は北側諸国グラナト伯爵領の街を襲っている場面です。なぜアウラはこの街を襲うのか、後に彼女のアンデッド兵の大半がこの街の兵士だということがわかります。つまりアウラからすればこの戦が我が種族を脅かす人の拠点への反抗作戦ともうけとれる。
同様に魔法に長けたフリーレンのエルフの村が襲われたのも
長く魔族の存亡を脅かし続けたシュタルクの戦士の村が襲われたのも
魔族側からすればわりとちゃんと考え抜かれた戦略だったりする。
前述したように人は魔族との戦いと平行して人同士も戦乱に明け暮れている愚かな生き物だ。つまりエルフや人間それ以外のものからすれば人やエルフというものに全く別の見方ができます。つまりこの作品にあるのはいわゆるこれは典型的なユダヤ・キリスト教的な人間中心主義です。いわゆるこの世界の全ては人間が利用するための存在である、もしくは人間がもっとも進化した尊い存在であるという人間中心主義。この現代社会においても自然環境破壊や対立を生んだ思想の根源ともいえます。
そういった意味でこのフリーレンの物語とは人の愚かで独善的な不都合なものを周到に隠蔽した人という生き物にとって都合の良い物語といえます。
■余談
「葬送のフリーレン」アマゾンだとほぼ全てのレビューが星5で星1がたった数個ほどしかないあたりその人気はすごいものだし。私もこの作品が素晴らしいと思いますし実際好きでリアルタイム視聴していました。
ですが逆に私がこの作品で星1レビューを書くならどんなことを書くだろうかとちょっとした遊び心でこんなレビューめいたもの書きました。
それでは