バイクに乗りたいんだ
普通自動二輪免許、バイクの中免といわれるものです。
それを取得したくて教習所に通い始めようとしている。
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バイクは旦那さんの趣味になる。長年、私は二人乗りの後ろで、色んな所に連れて行ってもらった。
お尻は痛くなるし、くつろぐなんて出来ないし、寒いし、暑いし。
車の方が、便利で快適なのは間違いない。
だけど、楽しい。流れていく景色と風と匂い。とっても気持ちがいい。
トンネルに入った際に、体に響いてくる冷たさが好き。
トンネルを抜ければ太陽の熱を感じ、土の匂いで深呼吸しながら山を下っていく。
視界いっぱいに空が広がり、湿った海風が吹いてくる。
ラジオを流したりは出来ない変わりに、私が歌います。
気持ちよく伸びている田舎道にブーンとマフラー音残して、私たちは進んで行く。
隔たり無く景色に包まれることができる、吸い込まれにいける、そんな魅力がバイクにはある。
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バイカーライフの中で特にお気に入りなのはヤエーである。
ヤエーとは、見知らぬバイカー同士がすれ違う際に行う挨拶のこと。
軽く手を挙げるクール型、可愛いおちゃめなピース型、ブンブン手を振る元気型。
ヘルメットで顔が隠れており、素性分からぬ者が、挨拶という親しみを見せてくれる。
きゅんとするわ。
見知らぬ者同士で挨拶をするとなると小っ恥ずかしさがある。
だが顔が互いに見えないことでハードルも下がる。
と思っていた。
「…見えてるよ?」
ヤエーの魅力を旦那さんに語っている際に言われた。
……そうか。そうだ。私のヘルメットはジェット型と呼ばれる型で、シールドも透明なため眉毛から顎まで全顔を披露している。
すれ違うバイカーの多くがフルフェイスヘルメットで、顔が確認できなかった。
そのため、自分も隠れていると思い込んでいたのだ。
ヤエーなるものがあると知ってからは、ご機嫌に、隙あらば、すれ違うバイカーに手を振っていた。
顔も知らぬ者同士の粋なやり取り、と悦に浸っていたが、気をよくしたニヤつき顔を垂れ流していたとは。
お恥ずかしい。
あの子すごくニコニコしてたな〜と何人のバイカーが笑ったかしら。
まぁ、いい。でも、次は顔が隠れるフルフェイスヘルメットを買うと決めた。
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旦那さんの後ろで過ごすバイカーライフ、ヤエーライフに概ね満足して楽しんでいる。
しかし、バイクの魅力やら、ヤエーライフやらと語れるようになったが免許は持っていないチグハグさ。
うーん、免許取ろうかなぁ。
景色に入り込んでいける魅力がある、とお話ししました。
しかし、前を向くといつだって運転する旦那さんがおり、前方はあまり見えない。
そこをどくんだぁ!と度々心で叫ぶ。
よし、免許取ろう。
そう決心したのである。
ただ、バイクは危険な乗り物。
不安がいっぱい。本当に乗れるようになるんだろうか。
晴れて免許を取得し、自分のバイクでツーリングに行き、ヤエーが成功した日には泣いてしまうかも。
やはり、「顔が隠れるヘルメット」は必須となりそうです。
がんばります。