ゾイド考:Mk.2改装とデスザウラー戦術
ゾイドの設定、世界観についてアレコレと考察する。
Mk2化近代改修
中央大陸戦争中期、対ゴジュラス用大型ゾイドとしてロールアウトしたゼネバス帝国のアイアンコング登場を皮切りに、対ゾイド戦術の様相は一変する。
頑強なゴジュラスの装甲とタフネスを打破可能な火力の投入により、格闘戦を重視した伝統的戦法は過去のものとなった。
火力には火力を! 長射程には長射程を!
ヘリック共和国軍の威信と執念をかけた、全大型ゾイドの近代改修計画の始まりであった。
高火力改修型ゾイドの第一号として完成したゴジュラスMk.2。
その追加装備はコネクタを使用することで、従来型ゴジュラスだけでなく全ての大型ゾイドにも装備可能だった。
しかし、実機はプラモデルとは違う。
装備をポンと取りつけただけでは使用できない。
Mk.2化とは、火器管制システム、射撃用プログラム、装備に際しての関節強度の再調整などを含めた、大がかりな改造なのだ。
ヘリック共和国軍は高い国力に裏打ちされた、膨大な物量を持つ軍隊だ。
大型ゾイドの配備数も生産能力もゼネバス帝国の比ではない。
しかし、裏を返せば大量の大型ゾイドの改修にかかるコストもまた膨大となる。
ゴルドスに強化パーツをフル装備した「シャイアン」、マンモスを砲撃可能とした「マンモスキャノン」などの改造機が有名だが、これらは正式採用化はされず、少数の運用に留まった。
第一の理由として、素体となる大型ゾイド自体の旧式化がある。
Mk.2化実装の時点で、共和国陸軍の大型機はゴジュラスを除いて陳腐化しつつあった。
第二の理由は、第一次中央大陸戦争の終結。
無理に旧型機を近代改修する必要自体がなくなった。
よって第二次中央大陸戦争時には、最初からソフト、ハード面ともに近代改修化されたゴジュラスMk.2のみに絞って新規生産されることになった。
帝国軍の新戦術
第一次中央大陸戦争から二年後──ゼネバス帝国軍は暗黒大陸から帰還し、第二次中央大陸戦争が勃発した。
ここで投入された新型ゾイド、デスザウラーの威力を以て帝国軍は共和国首都を陥落させる。
確かに、デスザウラーは強力なゾイドだ。
格闘戦のみでゴジュラスの中隊を全滅させ、正面装甲はあらゆる砲撃を弾く。
だが、無敵の怪物ではない。
ウルトラザウルスやゴジュラスMk.2を大量投入し、包囲攻撃すれば撃破も不可能ではない。
だというのに、共和国陸軍は以後四年に渡って正面会戦を避け、ゲリラ的奇襲に徹する。
なにゆえか?
その理由は、従来にないデスザウラー固有の超兵器──荷電粒子砲にある。
デスザウラーの荷電粒子砲は発射回数に制限はあるものの、ひとたび発射されれば物理的防御手段はないに等しい。
ゴジュラスの装甲も、ウルトラザウルスの巨体も一瞬で蒸発してしまう。
これにより、共和国軍は数を頼りにした従来の戦術を封じられた。
平原にどれだけ大量の部隊を配備しても、そこに荷電粒子砲を撃ち込まれるだけで総崩れとなる。
無数の小型ゾイドと兵員、そして高コストの巨大ゾイドがなす術なく失われてしまう──その心理的圧力が、共和国軍の足枷と化した。
少数のデスザウラーを恐れるあまり、共和国陸軍の全軍が作戦行動を制限されてしまったのだ。
これこそがデスザウラーの真の脅威であり、戦略的価値といえるだろう。
工業力の限界
デスザウラーによって共和国軍にプレッシャーを与え、四年もの時間稼ぎに成功したゼネバス帝国だったが、勝利には至らなかった。
国力、工業力に劣るゼネバス帝国は拡大した戦線を維持するのに精一杯だった。
デスザウラーを大量生産し一気に共和国全土を蹂躙することも、デスザウラー以上の新型決戦ゾイドを開発することも叶わず、逆に共和国軍に巻き返す時間を与えてしまった。
ゼネバス帝国の工業力の限界は、アイアンコングMk.2の仕様にも表れている。
原型機はゴジュラスを一撃で撃破可能なビームランチャー、サラマンダーを撃墜できる大型対空ミサイル、小型ゾイドを一掃できる二連電磁砲が装備され、正に一騎当千のワンマンアーミーともいえる仕様だった。
それが量産機では武装の大半がオミットされ、機動性と射撃精度の向上のみに留まってしまった。
ゼネバス帝国の工業力では、ハイテクノロジーの武装の大量生産は困難だった。
これでは、元から汎用性の高い火器管制システムと高精度レーダーを装備していたアイアンコングの持ち腐れである。
アイアンコングMk.2量産型は「高精度センサーによる先制攻撃で敵を倒す」&「スラスターの機動性で反撃を回避する」という、後ろ向きともいえる仕様で、帝国軍では貴重な大型ゾイド損失への恐怖心が伺える。
一方でライバル機種のゴジュラスMk.2量産型は、精度を捨てて投射火力を強化。大量生産が容易で汎用性も高い実弾砲を装備している。
さながら「守りのコング」と「攻めのゴジュラス」といったところか。
防御戦闘ならコングMk.2が有利だが、攻勢に入ればゴジュラスが有利となる。
そして最終的には、数で上回るゴジュラスMk.2の火力に敗北する。
ゼネバス帝国の敗因は工業力の限界と、それに起因する戦略的判断ミスにあるといえる。