02_タクシーのあと
すこしずつ酔いが醒めてきた私は、
”なぜこの人とタクシーに乗っている…?”
と思いながら、自宅に向かっていることが理解できたので、
運転手さんに、道案内。
「あ、この大通りをそのままで、あと3つ先の信号付近で止めてください」
乗り降り側には、関西弁のサラリーマン。
彼が降りなければ、私も降りられない。
手を引かれてタクシーを降りたところで、グッと引き寄せられた。
ぎゅーっっと抱きしめられて一言。
「家、寄ってっていい?」
「……? だめですね。」
話していなかっただろうか。
私は、同棲している彼がいると。
A子B子は既婚で、確かに私が独身という申告の中で、
でも、同棲していることは宣言していたはずだ。
「じゃあ、また連絡するね。」
「…はい。…?」
彼は、ニコニコ笑顔でタクシーに戻り、立ち去って行った。
連絡先なんて教えただろうか、と思ったけれど、
LINEを開くとそこには見慣れないアイコンがトークリストの一番上にいた。
酔っぱらっているうちに交換していたらしい…。
まあ、向こうも酔っぱらっていたし、連絡は来ないだろう。
眠気を引きずりながら、自宅に入り、静かにメイクを落として、
パジャマに着替えたから、そーっとベッドに潜り込んだ私は、
「ピコンッ」
LINEの通知音を枕元に感じながら、眠りにつくのであった。