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01_出会い

「一緒に飲みませんか?」

そう声をかけてきたのは、背の小さなスーツ姿の男性だった。


今日は珍しく、同部署女子だけの飲み会だった。
既婚A子(子持ち)、既婚B子(新婚)、未婚(私)、のアラサー女子(?)3人で。同世代の私たちは、ランチもほとんど一緒にしているのでよく話しているが、飲みの場となればそれはまた別腹というものである。

1件目が済んだ後、A子のことを考えると解散かなと思っていた矢先、

「今日はとことんいくよ!」

と声を上げたのは、他ならぬA子だった。
どうやら久々の飲み会参加に気合をいれて、旦那に任せてきたらしい。
お酒の好きなB子は大喜びで、帰宅を決め込んでいた私も丸め込まれてしまった。

2件目、金曜日の居酒屋はどこも混雑で、空いているお店に適当に入った。
旦那の話、家計の話、仕事の話…女子というものはどこまでも会話が続くのが不思議である。

そんな中、視界の左端に存在感。
長い手をまっすぐに伸ばして手を挙げているサラリーマンがいた。どうやら私の隣にいる店員さんが呼びたいらしい。サラリーマンの代わりに、店員さんを呼び止め促した。

「ありがとう!君も関西人やな!」

関西弁のサラリーマンは、私の関西弁の会話が聞こえていたようで、親近感が湧いていたようだった。

その後、各々の会話に戻り、お酒も進んでいったところで、

「一緒に飲みませんか?」

そう声をかけてきたのは、背の小さなスーツ姿の男性だった。

(誰?)

と心の声が3人ともから聞こえてきそうであったが、隣の関西弁のサラリーマンの連れだった。ほどなく、関西弁のサラリーマンも現れ、交渉。というか、ナンパだ。

アラサー女子を捕まえて、アラフォー男子(あえて男子)がナンパする…なんとも大人の嗜みである。

A子B子とアイコンタクトののち、迷いはあったものの、
GOの先陣を切ったのはB子だった。3人の中で最も若くノリのよいB子らしかった。

3件目に移動し、それぞれの自己紹介。名刺交換をするあたりがビジネスマンを感じる。
3対3の合コンともとれる会は、意外にも盛り上がり、お酒もよく進んだ。その分、記憶もこのへんからぼやけ始めていた。

男性陣にありがたくごちそういただき、店を出た。
まだ飲み足りないメンバー半分。

「トイレ行きたい」
「もう帰ろうかと…」
「2軒目行こう!」
「カラオケいきたい!」

酔っ払い連中である。
このあたりの私は、もうお酒が周りに回ってほとんど覚えていないのだが、

「…2人で。」

気づいたときには、関西弁サラリーマンに肩を抱かれ、
スポーツバーに連れてかれていた。
この一言に覚醒をしたのか、A子B子にヘルプLINE。
結局、みんな合流したのだった。

(A子曰く、1件目からロックオンされていたようだが私は全く気づいていなかった)

スポーツバーでも、シャンパンボトル1本を空け、
帰る電車もないので、結局カラオケに。

男性1人は、
「君たち、気をつけなよ!!!」
と消え去っていった。
(そんな捨て台詞を言うなら守って欲しいものだ)

カラオケでも、関西弁サラリーマンにがっちり横をキープされ、酔いと眠気の戦いに必死な私は何をしゃべったのか何一つ覚えていない。

気づいたら朝で、タクシーに乗り込み帰る道中には、
ずっと隣で関西弁のサラリーマンが手を繋いで座っていたのだった。

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