「腕時計」

初めてのアルバイトで、初めてのバイト代

（本当に欲しい物を買おう）

次の日の休憩中
僕は、隣の雑貨屋に行った

香水…
やぁ、飲食店だし
しかも、パッケージされていて香りが分からないな

置物…
ないない

んー

腕時計…
あ、これ、おもちゃか？
ん？
分かんないな

あ、店長さんだ

店長さんは、ひげをはやし、いつもレジ前に
座ったまま

寝てるのか
と、思ったら

商品を磨いている

「すみません…」

と、言うと、ゆっくり左奥へ行き、出てきてくれた

「これ、本物の時計ですか？」
と、たずねると、頷いた

僕が買った時計は
カーキ色、マットの仕上がりに

デジタル表記の腕時計

小さなライトがついていたので
（面白いな）
と、思い

家に帰るまで、ワクワクしていた

バイト先から、帰り
まずは、母に初めてのアルバイト代の報告と
買った物を見せた

アルバイトは、喫茶店だ

全業務しなきゃ、回らない
小さな、喫茶店

バッグの中から取り出し、母に見せた後
部屋のベッドに背中をあてながら
机に腕時計を出した

ボタンが3つあった

一つは小さな電球が光る
2つ目は謎のレーザーが出る
3つ目は下にずらすタイプ

「ビーーーーッ」（わぁっあわあわ）

なぜに、音よ

ビックリした

僕が自分で初めて働いて買った、腕時計

お気に入りだ

もちろん、アルバイト先にはつけないよ
皿洗いで、濡れちゃうし
お客さんからしたら、いやだと思う

僕の腕時計は、休みの日
遊びにいく時

右手にはまる。

15歳の秋口。