機材レビュー:スネアドラム用マイクにTelefunken M80を選んだ話
昨年、TelefunkenのM80というマイクを購入しました。主な使用目的は、スネアドラムの録音。結果は大満足でした。情報量のあるスネアを録りたい方、オススメです。
きっかけ
最近、エンジニアとしてスタジオに立ち会い、ドラムレコーディングのお手伝いをしてほしい、という依頼が増えました。(ありがとうございます!)
初めてのレコーディングは、スタジオさんのマイクの品揃えがしっかりされていたので、まるっとマイクを8本レンタル。
とはいえ、色々試して自分だけのドラム用のマイクセットをすべて選抜、用意するのが最近の目標…!」
自前のドラム用マイク、何から買う?
私はミキシングから始め、じわじわとレコーディングへ足を踏み入れています。つまり、ミックスするときのことを考えて録音機材を選んでいることが多いです。
そしてドラムをミックスするとき、いつもカギになっているのが、
ルーム(部屋鳴り)
オーバーヘッド
スネアドラム
だと思っています。曲全体のイメージを左右するほど、重要なパートです。
ルームとオーバーヘッドに関しては、ある程度まともに録れてさえいれば、EQやコンプレッサーなどでどうにかなることが多いです。
しかし、スネアに関しては、録れ音次第です。録音が微妙ならどうあがいても微妙。
もしドラムだけでバンドだとしたら、スネアは主役のボーカルと勝手に思っています。奏法が色々あって、ダイナミクス(音量の大小の幅)も大きいところとか。
というわけで、いつもミックスのときに録れ音勝負やな~と思っているスネアのマイクからこだわってみようと思いました。このあたり、何を優先するかはエンジニアの方によって結構ひとそれぞれな気がします。
スネア用マイクに求めるもの
まずはスネア用マイクってどういうものが適しているのか、というところからいきましょう。マイクの選び方については、また改めて詳しくお話したいところですが、今回はざっくり。
一般的にマイクは大きく分けて、
ダイナミックマイク
コンデンサマイク
の2種類があり、コンデンサマイクの方が周波数のレンジも広く、小さな音への反応が良い一方、高価かつ扱いが難しく壊れやすいという特徴があります。
スネアドラムの収音に使用されるのは、ダイナミックマイクが多いです。理由は、以下の通り。
小さな音の収音を求められない
振動が多いので頑丈さが求められる
ただし、ダイナミックマイクは、コンデンサマイクに比べて周波数のレンジが狭いという欠点がありました…
というわけで、カッコいい周波数特性してるダイナミックマイクなんてあったら最高だな~と。具体的には、アーティキュレーションの繊細さは保ちつつ、コシと迫力、パンチのあるスネアが録りたかった!
M80のココが良い
ダイナミックなのに周波数レンジが広い
コンデンサマイク並みの情報量の多さ
中域にクセがほんの少しあるが、パンチのあるスネアにバッチリ
SHモデルがドラム録音にピッタリ
Telefunken社の謎の技術で、ダイナミックマイクなのに周波数レンジが広いです。コンデンサ並みと言っても過言ではない???
周波数レンジが広いと、スティックがヘッドに当たる瞬間のアタック音やバシッとしたワイヤーの鳴りから、深い胴鳴り、サステインまで余裕を持って収録できます。
これが「情報量の多い音」に繋がり、ミックスが格段にしやすくなります。ミックスは引き算とはよく言ったもので、「不要な音を消す」ことはさほど難しくないのですが、「足りない音を補強する」のはすっごく難しかったりするのです…。録音でたっぷり情報を用意しておけば、後でめっちゃ楽。
ちなみに私が購入したのはM80-SHというショートタイプのモデルです。クリップでドラムにくっつけるときに取り回しやすくてグッド。
買った結果:満足
周波数レンジは広いのに、高域(ハイ)が刺さったりいやらしい感じになったりせず、細かなアーティキュレーションも余すことなく捉えているところが、まさにジェネリック・コンデンサーマイク。スネアの存在感、説得力がすごい。
なんか、マイクを買っただけなのに、ミックスが上手くなった気がしちゃいます。ドラムは特に録音段階の素材がめちゃめちゃ大事、と痛感しました。プラグインよりマイク買った方がいいかも…
M80のココがちょっと…
先ほど言った通り、中域のクセが気になる人はM81の方が刺さるかもしれません。
もう一点、指向性はSM57や58に相当する「カーディオイド」です。特に劣っている点はまったくありませんが、「死んでもスネアからハイハットの被りを排除したい」という人は、スーパーカーディオイド、ハイパーカーディオイドのマイクをチョイスした方がいいかもしれません。
おわりに
M80をスネア用のマイクとして導入してから、細かな表現を犠牲にすることなく、パワフルなスネアの音を簡単に作ることができるようになりました。
マイクの世界って本当に奥が深くて、原音に忠実なのが正義ってわけじゃなかったりするんですよね。あなたにとって「音がカッコよくなるマイク」に出会えますように!
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