不安を回避しても、不安は消えない!? 負の感情と上手に付き合っていくための1冊
・働く時間や場所の制約が少ない
・好きな仕事を好きな人とできる
上記は、フリーランスという働き方のメリットと言われます。
フリーランスの1人として、確かにその魅力を感じることは多いですが、「だからストレスフリーか?」というと、現実はそうとは限りません。
・仕事が途切れないか不安
・相談する相手がいなくて孤独
・成長できているのか自信を持てない
などは、よく聞くフリーランス特有のストレスでしょう。
実際、私もフリーランスになりたての頃に突発性難聴と円形脱毛症になったことがあります。自分では無理していたつもりはありませんでしたが、仕事を失うことの不安感から、どうやら頑張りすぎてしまっていたようです。
フリーランスこそ知っておくべき、メンタルマネジメント
私はその経験を通して、組織に守られていないフリーランスだからこそ、不安感や孤独感などの負の感情と上手に付き合っていく必要があると実感しました。
そこで今回ご紹介するのは、『一番大切なのに誰も教えてくれないメンタルマネジメント大全』(河出書房新社)です。世界37か国でベストセラーとなり、日本でも大変注目されている本です。
著者は心理学者で臨床心理士のジュリー・スミス博士です。オンラインでの発信のわかりやすさが定評で、300万以上のSNSフォロワーを持つ人気者です。
本書では、科学的根拠に基づきながら、著者自身やクライアントが実践して本当に役立ったアプローチや知識がまとめられています。
大全というだけあり、以下の8つの状況別にメンタルマネジメントが整理されています。
この中でもフリーランスから聞くことが多い、
・不安を感じているとき
・自信をなくしているとき
の2つの状況におけるメンタルマネジメントを紹介します。
不安を回避するから、不安が悪化する
「仕事を失注するかもしれない」
「収入が減ってしまうかもしれない」
「新しいお客様が獲得できないかもしれない」
などフリーランスは不安という感情と無関係ではいられないものです。
無関係でいられないなら、できる限り不安という感情をコントロール下においておきたいものです。
不安を覚えると人は回避したくなります。しかし回避してばかりだと不安はいつまでも消えないそうです。
不安を悪化させる行動の正体は、実は不安からの「回避」なのです。
ではどうすればよいのでしょう。
不安を感じたくなければ、その行動を何度も何度も繰り返し脳に安全だと確信させればよいそうです。
たとえば「失注するかもしれない」という不安が強い場合には、その状況から逃げ出すのではなく、契約締結の場面を何度も何度も経験する必要があるということです。
何度も繰り返す中で、失注することもあるかもしれません。でも、仮に失注しても歩みを止めずにいれば、きっといつか受注できるはずです。
「失注しても自分は大丈夫だった。次に進めた」という事実と、そこに至るまでの自分の姿勢が、不安解消に繋がっていくのです。
不安を和らげるための行動は?
とはいえ、不安なままでいるのはなかなか辛いもの。少しでも和らげられる方法があれば会得しておきたいものです。
本では、以下のような、不安を和らげるための行動が紹介されています。
確かに、私自身も仕事で落ち込んだとき、「思考の偏り(バイアス)」を自覚することで、気持ちを切り替えることができた経験があります。
仕事仲間から提案資料をダメ出しされたとき、「わたしには企画書を作る能力などない。仕事ができない人間なんだ…」と落ち込んだのですが、その際、心理学で学んでいた「バイアス」の存在を思い出し、「もしかしたら自分は「過度の一般化」に陥っているのではないか」と気づくことができました。
過度の一般化とは、「一度の経験を全ての物事や状況において発生する」と思考を広げて結論づけてしまうことです。
バイアスに気づいた後は「今回のダメ出しは今回の資料に関するもの。すべての資料にダメ出しをされたわけではない。ダメ出しを学びとして次に活かせばよいだけ」と考え方を切り替え気持ちを落ち着かせることができました。
不安を感じたら、少し立ち止まって、ここに書いてある和らげる行動を試してみるのはいかがでしょうか。
批判されて自信を失ったときは?
フリーランスは、守ってくれる上司や励ましてくれる同僚がいないため、自信を失った場合には、自分で自信を回復させなければいけません。
では、どのように自信を回復できるものでしょうか。
まず、本には自信を失うきっかけになりがちな「他者からの批判や反対意見」に対して、どのような姿勢で向き合えば良いか書いてあります。
このように、批判や反対意見に対しては、「批判する人の価値観によるもの」だと理解することが重要なのだとわかります。
もちろん、その批判は、耳が痛くなるぐらい正しかったり、有益なフィードバックだったりすることもあるかもしれません。とはいえ、伝え方次第では言われた側の心は傷つくものです。
「言葉」ではなく、「言刃(ことば)」となって心に癒えない傷を残すことすらあります。
本にも「私たちは他人からどう思われているかを気にするようにできている」とあるように、私たちはどうしても他人の言葉に影響を受けてしまうもの。
「他人からどう思われても気にしなければいい」と言われることもありますが、気になってしまうのが人間なのです。
だからこそ、批判や反対意見に対しては、無防備にそのまま受け止めるのではなく、一旦立ち止まって、言われた内容と距離をとってみることが大切なのです。
自信は未知の世界で培われる
次に紹介されているのは、自信を失った際の回復の仕方です。回復させるには、なくした自信を新たに培うことしかありません。
本には、以下のように書いてあります。
人は、自信が持てるようになると同じ場所に留まり、現状を保ちたくなるそうです。しかし、そのように留まってばかりだと自信はそれ以上大きく育たないどころか、新たな自信を培う機会になる「未知の体験」への恐れが膨らんでしまうそうです。
自信を培うには、居心地の良いコンフォートゾーンを出て、新しいことに挑戦する領域のストレッチーゾーンにあえて踏み込む必要があると書いてあります。
ちなみに、「コンフォートゾーン」「ストレッチゾーン」「パニックゾーン」は人の成長や学習の過程を表すときによく使われる概念です。
要するに、自信を獲得するには、混乱やストレス過多な状態になるパニックゾーンに行かないように気を付けながら、ストレッチゾーンへ一歩踏み出す必要があるのです。
以下の5つは、本で紹介されていたストレッチゾーンに踏み出すために必要な考え方です。
振り返ってみると、今まで新しい仕事に挑戦するときには、一番目の「自分は努力すれば向上できることを認める」という考えに立っていた気がします。
自分が経験したことのない仕事のオファーがきたときに、「やります」と言えたのは「これまでも何とかやってこれたんだから努力すればきっとできる」と思えたからです。過去の自分がそのときの自分の応援団となってくれて、自分の仕事の幅を拡げることができました。
自分を信じ自分を認めること。これがストレッチゾーンへ踏み出すための「はじめの一歩」なのかもしれません。
本書は、心の傷に効く救急箱
本の冒頭に「本書が一生使える道具箱になることを願っている」と著者のメッセージが書いてありました。
確かに、この本は 負の感情と上手に付き合っていくための必要な知識が詰まった1冊。道具箱というよりも、まるで心の傷に効く薬が入っている救急箱のような1冊だと思いました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?