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学びのすべてが仕事に直結! ビジネスフレームワークを使いこなし、意思決定の解像度が格段に高まった〈MBA体験記〉有賀哲哉さん

今年も10月15日よりファイナリスト投票がスタートする、「フリーランスパートナーシップアワード」。昨年度は受賞者への副賞として、グロービス経営大学院様よりMBAの学びを1科目から受講できる「単科生制度」の受講権をご提供いただきました。
グロービスといえば、教員は全員が実務家、ディスカッション中心の授業で、生きたナレッジを学べるビジネススクールとして知られています。でも受講するとなると、「仕事との両立が大変じゃないの?」、「本当に、仕事に役立つ知見が身につくの?」いった疑問も。
そこで『フリパラ』では、実際に講座を受けた昨年の受賞者を直撃。ニチノウ食品株式会社 代表取締役社長の有賀哲哉さんに、お話をうかがいました。

会社のこれからを考えたら、ビジネスの基礎を学ぶタイミングだった

――昨年度のフリーランスパートナーシップアワードでは、フリーランスとの二人三脚でのピスタチオジェラートの商品開発が見事受賞されました。どのようなプロジェクトだったのでしょうか。

ピスタチオジェラートの商品化は、当社自慢の焙煎ナッツの活用を通じ、当社の理念である「ワクワク食体験」を体現したプロジェクトです。原料に地元産のミルクを使い、ふるさと納税の返礼品にすることで、地場産業である酪農を支え、地域の活性化を図ることをねらいにしました。

フリーランスパートナーシップアワード2023 受賞式にて。左が有賀さん、右がピスタチオジェラートを伴走支援した、島森清孝さん。

開発では江崎グリコ出身のフリーランスマーケターの島森清孝さんに、企画からレシピ制作、製造ラインの整備まで伴走いただきました。デザートの製造はおろか、知識もまったくないところから、数カ月で返礼品にできたことに本当に驚いています。また“なぜやるのか”といった原点を見失わずに開発を進められたのは、島森さんが入ってくれたからです。

おかげさまで、ふるさと納税サイトに出品した直後から反応がよく、アワードの直後には「ふるさとチョイス」のジェラート部門で1位を獲得しました。以降も各社のサイトランキングでは、常に上位をキープできています。つい先日もサイトの運営会社の方が視察に訪れ、取り組みを評価してくださいました。

島森さんと開発したジェラート。

――アワードの副賞であるグロービス経営大学院の授業を、有賀さんが受けることになったのはなぜでしょう。

実は私自身、経営者としての課題を感じていたところでした。
というのも、社長になって家業だった漬物の素だけでなく、焙煎ナッツやジェラートのような新しい事業にも取り組んできました。その度に感じたのは、私一人ではどうにもならないということ。社内の誰かに事業の取りまとめやリーダーを任せる必要があり、どういう組織づくりに励み、どう運営すればいいのかと悩み続けてきたのです。

また私も60歳を過ぎたことで、事業承継を意識しつつあります。親から受け継いだ会社を、子どもたちに残り10年ほどで引き継いでいくにあたり、ヒト・モノ・カネといった経営資源のあり方や、財務や経理といったビジネスの基礎を改めて学ぶのに、ちょうどいい機会になると考えました。

社員からの還暦祝い。オリジナルのTシャツも!

もちろん他の人にとってもよい機会なのでの悩みましたが、若手社員に託すとしても、長野から4時間かけて東京の麹町にあるキャンパスに通学するのは負担が大き過ぎる。それに大手企業で役員の経験もあり、マーケティングのプロとしてご活躍されている島森さんが受講するのはまた違うのかもと。最終的に私に落ち着いた、というところですね。

ビジネスフレームワークを習得して意思決定の解像度が高まった

――それにしても通学に4時間とは、なかなか大変ですね!

授業は1回3時間を2週間ごと、3カ月間行われます。ただ行って戻ってくるではもったいないので、平日の夜のクラスを受講し、授業の前や翌日に東京での仕事のアポイントや商談を入れるようにしていました。

ただ、グロービスでの学びの中で、授業は要素のひとつでしかないんです。授業の前には予習課題があり、授業を受けて、その後は学生仲間とネットワークを築くために懇親会へ参加。後日、オンラインでグループごとに自主勉強会があり、これでワンセット。これが6回繰り返されるので、通学日に限らず、常に学び続けるサイクルが自然と生まれる仕組みです。

――数ある科目の中から、有賀さんは何を受講されたのですか。

グロービスの単科生制度を利用して受講できる科目は15科目あり、初めて受講する人の7割が「クリティカル・シンキング」を受講するといいます。でも私は、「マーケティング・経営戦略基礎」を選びました。というのも自分は経営者であり、できるだけ実務に合ったテーマを学びたかったから。「クリティカル・シンキング」は別にいいかな…って思って。その考えは、後々覆されるのですが(笑)。

圧巻だったのは初回の授業ですね。教員が質問すると、はいっ、はいって、一斉に手を挙げる。「何なの、小学生なの?」って思ったくらいで(笑)。みんな積極的なのは、クラスメイトの多くは「クリティカル・シンキング」を既に受講していて、グロービス流の授業の受け方を身につけていたからだと後で気づいたのだけど。それにしても、自分から学びに来ているので、みなさん能動的なんですよね。

授業中の様子。バックグラウンドの異なるクラスメイトとの議論は、気づきの宝庫に。

クラスメイトは、いろんな方がいました。ボリュームゾーンは30~40代くらいの会社員で、中堅管理職の方々ですね。でも営業にマーケティング、新規事業開発から研究職の方まで職種が幅広い。それにフリーランスの方もいましたよ。ITを使って地域活性化につながる事業をしたいという人から、ユーチューバーまで。みなさん自分のビジネスを発展させる上えでの視点を養いたいと、授業に臨んでいました。

私はというと、もしかするとちょっと異端だったかもしれません。還暦を過ぎた現役の経営者ですから。「今さら学ぶことなんて、あるんですか?」と、聞かれたこともありましたが。でも人を雇って、事業を続けてきた経験があるからこそ、授業の内容もリアリティをもって受け止めることができたし、クラスの学びに貢献できた部分もあります。何より、自分より10才も20才も年の離れた若い人たちと、共に学ぶこと自体、貴重な経験ですよね。

――学んだことは、実務にすぐ役立つものなんですか?

そりゃあもう! 使わない日はない、と言ってもいいくらい。学んだことすべてが、毎日の仕事に生きています。「マーケティング・経営戦略基礎」の授業では、さまざまなビジネスフレームワークを使って、国内外の企業ケースを分析するのですが、身近なところでも応用できるんですね。自社を取り巻く環境や、事業の状況などを、もれなく客観的に分析できるわけです。判断の物差しができたと言ってもいいでしょう。

グロービスのいいところは、学んで終わりにならないところですよね。自分の仕事に置き換えられるくらいに、習得できる仕組みがある。おかげで今の私は、経営者と話すときも、「ZMOT(※)って意識してます?」って、つい聞いちゃうくらい(笑)。学んだことを使いたいから行動量が増えたところもあって、機会創出にもつながっている気がします。

※ZMOT:Zero Moment of Truthの略。2011年頃にGoogleが提唱した、消費者行動の理論。顧客はWebやSNSを通じて積極的に情報取集を行っているため、店に足を運ぶ前の時点で購入の意思決定を済ませているという考え方。

一定の尺度ができると、自社の動きが業界特有の成功要因に沿ったものなのかを把握したり、何か機会が訪れたときに、取り入れるべきか否かを判断したりできるわけですね。さらに今後の社会動向やテクノロジーの進化なども見据えて、今取り組むべき打ち手を具体化できる。意思決定に必要な要素が、解像度高く可視化されるんです。

他の科目も続けて受講! 実務と学びを行き来する体験がやみつきに

――そうしたことは、これまでの有賀さんにはできなかったということですか?

自然とできていた部分もありますが、はっきりとした根拠や裏付けを持って示せるようになったのは、やっぱりフレームワークという武器を手にしたからですね。

焙煎ナッツやジェラートなどの新規事業が、どうして軌道に乗れているのかを振り返ってみると、結果として授業で学んだマーケティングの要点を押さえられているんですよね。逆に10年前、漬物の素の事業を継いだばかりの頃を思い返すと、どのフレームワークに照らし合わせてもうまくいくはずがないとわかる。市場規模が縮小しているのだから、いくら稼働率を上げたって利益を賄えないわけです。

でも焙煎ナッツやジェラートは、ある程度の市場規模がある。オンラインで集客する仕組みをつくって、稼働率を上げて、コストの調整を図って、競合よりも手頃な価格でいいものを届けられるようにして。後発の参入ではあったけど、フレームワークに当てはめてみると、グッドケースに従っている。

ただし結果としてうまくいったに過ぎなくて、再現性の高さを問い始めると未知数なところがありました。けれどもグロービスに通ってロジカルに戦略を組み立てられるようになったので、これからまた新しいことを始めるとしても、成功の確度は上がるはずです。

マーケティングで用いられるフレームワークを使って課題を分析。

――それは大きな収穫ですね!

ただ受講中は想像以上に大変でした。こんなに勉強漬けになるのは久々で。授業はたったの6回なのに、1年間くらい勉強しているような感覚になります。特に私は年齢も年齢なので、他の人よりも習得に時間がかかっているのかもしれません。でも、こんなにがっつりと学ぶのは久々で、楽しいですよ。こんな深い学習体験は、他にはなかなかない。

「マーケティング・経営戦略基礎」を修了した今は、自費で続けて「クリティカル・シンキング」を受講しています。先ほど、初回の授業で驚いたという話をしましたが、もうひとつ、周りのクラスメイトがロジカルに状況を分析して自分の考えを述べていたことにビックリしたんです。

さらに同じ課題に取り組んでも、視野が広いうえ、考察もシャープで深い。まだ粗削りなところもありましたけど、思考を甘く見ちゃいけない、一筋縄では身につかないと痛感したんです。それにマーケティングの授業での体験が、本当にたまらなく有意義だった。これで終わるのももったいないなと思って、通い続けています。クリティカル・シンキングを終えたら、アカウンティングやファイナンスもチャレンジしようかと、考えているところです。

――まさに学びの扉を開いたのですね。

実務と学問を行き来できるというのは、本当に心強いですよ。不安になったらフレームワークに戻り、学びの場で得た知見を実践に移すという。その繰り返しが経営者としての血肉となり、自信を持って判断できるようになるわけですから。

そして共通言語を持った、バックグラウンドの異なる仲間ができることも大きい。グロービスに集まる人たちは、本当に好奇心旺盛で、チャレンジ精神も豊か。主体性の高い、刺激的な学びの場です。自分の手でビジネスを手がけるフリーランスのみなさんなら、必ず有意義な時間となるでしょう。キャンパスで共に学ぶ同志となれたら、私も嬉しいです。

グロービス経営大学院について詳しくはこちら
https://mba.globis.ac.jp/

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