まるでフリーランスの顧問弁護士!? 報酬トラブル弁護士保険「フリーガル」の仕組み、利用方法を徹底解説!
※本記事の元原稿は、2020年3月25日に、フリーランス協会のウェブサイトにて公開されたものです。今回の改定に合わせて、一部加筆しました。
「報酬トラブル」で困ったことはありませんか?
たとえば、あなたのまわりに、こんな報酬トラブルを経験した人はいないでしょうか。
もしくは、現在そんなトラブルでお困りではありませんか?
未払いや不当な減額、急な契約解除、消費税分を差し引かれるなど、報酬が約束通りに支払われないのは、フリーランスにとって死活問題です。
ですが、明らかに落ち度は相手にあった場合、どう対処したらいいのか分からず、泣き寝入り・・・というフリーランスも少なくないのではないでしょうか。
あるいは、弁護士に相談しようと考えたものの、高額な費用がかかるのが心配で断念した人もいるかもしれません。
そんな悩みを解消してくれるのが、フリーランス向け報酬トラブル弁護士保険「フリーガル」です。
フリーランス協会からの強い要請をもとに、2019年に日本で初めて実現した画期的な保険です。
手前味噌ではありますが、これほどフリーランス向けに特化し、困りごとに寄り添ってくれる保険は他にはないと言っても過言ではありません。
今回は、「フリーガル」の実現にご尽力いただいた損害保険ジャパン株式会社の鈴木さんと梶屋さんに、その仕組みや利用上のアドバイスをお聞きしました。
もう泣き寝入りしなくていい!フリーガルってどんな仕組み?
「フリーガル」は、フリーランス協会の一般会員であれば誰でも加入できる保険です(※2021年9月15日より自動付帯、2022年9月15日より自己負担金額0円へ)。弁護士費用の補償だけでなく、いつでも電話で弁護士に一般的な法律相談ができる、フリーランスにとって心強い味方ができる仕組みとなっています。
冒頭でトラブルの例を紹介しましたが、フリーランス協会の調査では『フリーランスになってから現在までの間で、「仕事をしたがクライアントが報酬を払ってくれない」という経験はありますか?(報酬の一部が未払いの場合も含みます。以下同様。)』という問いに対して、なんと69.7%もの人が「未払いの経験がある」と回答しています。
決して対岸の火事ではないのです。
さらに、報酬トラブル経験者の42.2%は「泣き寝入りをした」と答えています。その理由は、「勝てる見込みがないと感じたから」(36.9%)「どうすれば良いかわからなかったから」(36.9%)「弁護士費用が負担に感じた」(32.6%)など。
こうした状況の改善に向けて「フリーガル」は生まれました。では、加入するとどんないいことがあるのでしょうか。
ポイントを3つにまとめました。
ポイント①: 無料で一般的な法律相談を受けられる!
トラブルが発生していなくても、事前相談がサポートとして組み込まれているのは「フリーガル」の画期的な点です。
トラブル防止のために契約前に相談したい時、そして実際に報酬トラブルが起きてしまった時に、弁護士が常駐しているコンシェルへの無料の電話による一般的な法律相談ができます。
報酬トラブルについて考えてこなかったという人も、予防のための知恵も含めて、法律の専門家からアドバイスをもらえます。
ポイント②: 日本全国、お近くの弁護士を紹介!
電話相談では解決できず法的対応が必要となった場合、損害保険ジャパンから日弁連リーガル・アクセス・センターを通じて、各地の弁護士を紹介してもらえます。日本全国の弁護士会のネットワークを利用して、相談にいきやすいお近くの事務所などを案内してもらえるでしょう。
紹介ではなく自分で弁護士を選ぶことも可能です。
ポイント③: 弁護士費用をサポート!
相談料、着手金、報酬金、手数料、訴訟費用など、弁護士に依頼した法的対応にかかった費用を保険金として支払います。
旧プランでは、年間の保険料と保険金の支払限度額は下記の表の通り設定されていました。なお、限度額の範囲内なら、報酬トラブルが複数回発生してもその度に保険金が支払われます。
ちなみに2022年9月15日以降は、年間保険料0円、自己負担額0円で、保険金額が70万円分、自動付帯されます。
では、一般的に弁護士費用がどのくらいかかるものなのか、損害保険ジャパンの鈴木さんにお伺いしました。
「弁護士から内容証明を送って解決し、少額の費用でおさまるケースもあるそうです。とはいえ、訴訟など時間もお金もかかるケースに備えたいという方ももちろんいると思います。弁護士費用は、一般的に『いくら取り返せるか』の成果報酬で考えられるものです。
弁護士に依頼した際にかかりうる金額の上限については、自身の日頃の受注額を目安に考えてもらうといいのではないでしょうか。」(鈴木さん)
フリーガルの利用方法
改定前は、加入申込の手続きが別途必要でしたが、2021年9月15日以降は、手続きは不要です。フリーランス協会の一般会員になれば、自動で加入されます。
とはいえ、いくつか注意点があります。
損害保険ジャパンの梶屋さんによると、「フリーガル」リリース以来、保険の対象となる事案についての問い合わせが多いそうです。加入前に確認したい点は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
では、実際にトラブルが起きたらどうすればいいのでしょう。
まずはコンシェルへお電話ください。「フリーガル」専用のフリーダイヤルを保険開始の通知とともに案内します。
電話をかける際、「報酬金額」「支払い期日」「業務内容」の三要件が客観的に確認できる資料を用意しておくことについて、梶屋さんにお聞きしました。
「口約束だけでは、弁護士も報酬トラブルの認定ができません。取引先と交わした約束を、メールでもいいのできちんと文面で残しておいてください。三要件が確認できないとお支払いができません。請求時に必要な書類などについては、フリーランス協会のWebサイト上の保険のあらましにも記してあるので、そちらもご確認ください。」(梶屋さん)
契約内容を客観的に残すために、契約書の雛形を活用するのもオススメです。契約時にどんな事項を明記すべきか相談する際にも、雛形の項目や内容を見ながら弁護士に質問するとスムーズに話が進むでしょう。
電話相談後、当事者同士での解決が難しいと判断されると、希望に応じて弁護士を紹介してもらえます。その後は、弁護士と直接やりとりを進め、解決までにかかった費用が支払われます。保険会社から弁護士へ直接の支払いができるので、加入者がお金を用意する必要はありません。
報酬トラブルで損する人がいなくなるために
「フリーガル」は、フリーランスを応援するチームによって作り上げられました。
フリーランス協会も切望し続けてきた「フリーガル」。実現の背景には、損害保険ジャパンの鈴木さん、梶屋さんや、弁護士の方々の思いがあります。
「政府は、これからの働き方としてフリーランスを推進する方針を掲げ、必要な施策の論点整理を進めています。厚生労働省が示した資料をみると、フリーランスが経験したトラブルの中でも、報酬遅延や未払いが多いと分かりました。
契約内容の明確化、トラブル対応の窓口の設置は、優先的に取り組むべき課題として挙げられてきた点です。そこで私たちも、保険の市場として新たなニーズを見出すとともに、以前からフリーランス協会さんとの連携もあり、いち早く課題解決の手を打ちたいと思っていました。」(鈴木さん)
こうした思いのもと、「フリーガル」導入は通常より迅速に進められました。新しい保険商品を作る場合、半年から1年はかかるのが一般的です。
その点「フリーガル」は、既存の保険商品の枠組みを活用して、短期間でリリースに至りました。仕組みの設計段階では、弁護士側からの前向きな助言もあったそうです。
「当初、電話による一般的な法律相談の対象は、すでに起きたトラブルを想定していました。するとある弁護士の先生から、『トラブルを未然に防ぐセーフティーネットにした方がいいよね』とご意見をいただいたんです。それが『フリーガル』の特徴のひとつである、事前相談の実現につながりました。コンシェルにとっては仕事が増える話ですが、この保険の社会的意義を感じた上での積極的なご提案だったと思います。
フリーランスの契約ルール整備は、『2020年の未来投資戦略(政府の成長戦略)』のひとつにも位置付けられており、フリーランスが直面するトラブルをなくそうとする機運の高まりが感じられます。
このように、多くの人の応援を受けて『フリーガル』は出来上がりました。そうした流れを活かすためにも、フリーランス一人ひとりがしっかりと契約条件を予め確認し、書面で残すように意識していただきたいですね。」(鈴木さん)
また、昨今の新型コロナ感染症の影響で、報酬トラブルを経験し、困っている人もいるのではないでしょうか。「フリーガル」は、不測の事態への備えとしても大きな安心材料となるはずです。
「フリーガル」のように、フリーランスが抱える課題を解決し、働きやすい環境を整える施策がどんどん増えていくといいですよね。みなさんもひとりで悩まずに、声をあげて、当事者として一緒に考えていきましょう!
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