フリーランスは「複線化」が収入アップのカギに ~「フリーランス白書2022」から読み解く働き方の最前線~
フリーランス協会は3月29日、「フリーランス白書2022」(以下、白書2022)を公開しました。
この記事では、「白書2022」から、フリーランスを取り巻く環境の変化を解説していきます。
2021年はコロナ禍が人脈に影響した1年に
まず、フリーランスにとって、昨年はどんな年だったのでしょうか。
働き方に与えた影響が大きかったのは、2020年に引き続き新型コロナウイルスの感染拡大によるものでした。
前年の「フリーランス白書2021」では、コロナ禍前の2019年度と比較して、収入が減少見込みと答えた人との割合は55.0%でした。
今回の「白書2022」では、2019年度比で減少見込みは36.7%という結果となり、改善が見られました。
とはいえ、コロナ禍以前までの回復ができていない人も多いという実態が読み取れます。
コロナ禍におけるもう一つの傾向は、仕事獲得経路の変化です。
コロナ禍以前の「仕事獲得経路」では、46.1%(白書2020)が「人脈(知人の紹介含む)」と答えていましたが、今回の調査では32.9%となり、13.2ポイントも落ち込みました。
一方で、「エージェントサービスの利用」は7.7%(白書2020)から14.0%と、6.3ポイントの上昇となりました。
カギになるのは「収入源の複線化」
エージェントサービス利用の増加は、収入にどんな影響を与えているのでしょうか。
「コロナ禍が今年度事業収益に与える影響についてー『単価』についての自由回答」から、収入が増加した人の声を拾い、現状を探ってみました。
まずは、エージェントの案件を通じて、自分の相場を知ることができたことにより、自分が今まで「お友達価格」だったことに気付いたパターンですね。
一方で、こんな声も。
こちらは、もともとエージェントを使っていたことで手数料等を取られていたものが、直接契約になって報酬が割増しになったパターンのようです。
いずれにせよ、エージェントを利用するという「複線」を持ったことで、自分の適正相場を知ることができたということでしょう。
コロナ禍は、1社契約など取引先が少ないことのリスクを痛感する出来事でした。今後、フリーランスにとって「複線化」は重要なポイントになりそうです。
新しい「線」の見つけ方
「複線化」というのは、エージェントを利用することでしか実現できないわけではありません。
ただし、人脈作りについては、コロナ禍以降、少し難しくなっているのが現状のようです。
「白書2020」と今回の調査の「今の働き方に対する満足度」を比較すると、「多様性に富んだ人脈形成」の項目において、「満足」と答えた人が大きく減少。一方、「不満」と答えた人が2割を超えました。
コロナ禍によって、人との出会いを制限されたことは、フリーランスにとっては大きな痛手になったと言えそうです。
ただし、今回の調査で興味深い結果が出た項目がありました。それが、「マイプロジェクト」です。
メインの収入源となっている仕事以外に金銭的対価を目的とせず、自らの創作活動、スキルアップ目的とした活動を「マイプロジェクト」と定義し、それを行っているかどうかを尋ねたところ、61.5%が「している」と回答しました。
「マイプロジェクト」はあくまでも「お金にならない」ことを前提とする活動ですが、マイプロジェクトを通じてどんなメリットがあったと感じたかを質問したところ、約3割の人が「収入が上がった」と回答しました。
収入が上がった原因について、自由回答(「マイプロジェクトによるメリット_収入が上がった回答者①」)から読み解いてみました。
自由回答からは、マイプロジェクトを通じて、仕事獲得経路のトップだった「人脈」が構築されていることがわかりました。
フリーランスは「フリー」でいたい
フリーランス協会は3月29日現在、フォロワー総数64,775人、一般会員数10,007人、法人会員数271社となり、日本最大のフリーランスの組織として成長し続けています。
コロナ支援策や契約トラブル対策など、フリーランスの声を集め、政策提言してきました。今年は岸田文雄内閣のもと、「労働者皆保険制度」が議論されています。
フリーランス協会代表理事の平田麻莉は、「白書2022」公開に寄せて、「私たち(フリーランス)は、自律した働き方を選んだフリーランスであることに誇りを持っている」とコメントしましたが、これは「白書2022」の調査結果からも読み取れます。
これは、仕事選択時の重視度1位の比較です。全体で最も重視されたのは「自由度」(29.0%)でした。お金もスキルも大事だけれど、自由であることをとても大切にしていることがうかがえます。
現在活躍しているフリーランスは、1か所にとどまらず、マイプロジェクトを持ち、自由に飛び回っている――調査結果からは、そんな姿が浮かび上がってくるようでした。
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