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自分まかない#08 パクチーと鯖缶
フリーランスは、自分で働き方を決められる割に忙しない。目の前の仕事を言い訳に、ついついおろそかにしてしまうのが食事だ。けれども食べるは“生きる”の源。簡単でも自分でまかなうことは、己をいたわる行為でもある。フリパラ編集メンバーでライターのジャスミンと、5分でめぐる食の冒険。
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「ときどき無性に、青い葉っぱをワーッと食べたくなるの」
前に、仲よくしてもらっているイラストレーターの友達が話していた。
季節の変わり目や、仕事が立て込んだとき、決まって発作が起こるという。
「体の中の淀んだものが、スーッと流れる感じがしない?」
わかる気がする。そして先日、筆者もあれこれ考える間もなくパクチーを買いものかごに入れていた。
ここ半年ほど、息を継ぐ暇もなく仕事に恵まれていた。それはありがたいことだけれども、しばらくまかないどころか、グミキャンディとスナック菓子が主食と化していのだ。
明らかに、よくない何かが体のそこかしこに溜まっている。ここはパクチーを存分に貪り、デトックスとまいろう。それから冷凍庫の端に居座るおそばと、物入のすみっこで賞味期限が迫る鯖の水煮缶も使って、ストックもせっかくだから断捨離だ。
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まずパクチー。葉の部分はざく切りに、茎も刻んで葉と一緒に混ぜておく。根っこは今回捨ててしまったけれど、実は茎と根の境目が最も香りが強いところ。しっかり洗って細かく刻み、ドレッシングや炒めものなどに使うといいらしい。
次におそば。家にあったのは流水で解凍するタイプだったけれど、お好みのものを。余裕があれば生そばをゆでても構わないし、コンビニで盛りそばを買ってきても(つゆや薬味をどう使うかは、食べる人にお任せしたい)。しっかりぬめりを取って、できれば氷水で引き締める。ざるに上げて、水気を切っておこう。
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つゆは、そばちょこにチューブしょうがを5cmほど出して、濃縮タイプのめんつゆでといたら、鯖の水煮缶の汁でわる。水煮缶の汁も塩気がきいている。味を見ながら必要ならお水を足すとよい。
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大きめのお皿にそばを敷いて、山盛りのパクチーと鯖の水煮缶をゴロっと載せたらできあがり。火を使わずに準備できるのがうれしい。
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そばに鯖だしの利いたつゆをつけてひと息にすすると、しょうがの香りがすっと立ちのぼる。ここにパクチーを足して、むしゃむしゃと口に運ぶ。鯖は大きいまま、パクチーやそばと一緒に食べてもいいし、つゆの中で細かく崩してもいい。ワイルドにいくなら、つゆをおそばにかけて、ぶっかけにしたってまた乙だ。
フリースタイルこそ、まかない飯の真骨頂なのである。
お皿に載せきれなかったパクチーは別盛りにして、”追いパク”するのがいいだろう。もちろんこのまま食べ進めるのもアリだが、味変させても楽しい。
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たとえば、パクチーにごま油をちょろっと垂らしてみる。余裕があれば、種を取ったトマトとパクチーを、オリーブオイルで和えてみる。特に後者はトマトの酸味やオリーブの香りが鯖やパクチーと混ざり合い、複雑みを増してくれる。シンプルなおそばまかないだったはずが、プチごちそうに変身だ。
デトックスになったかどうかはわからない。
でもグミキャンディとスナック菓子でお腹を満たす日々の不摂生を、多少は埋め合わせできただろうか。
〈材料〉
――パクチー山盛り鯖缶そば(1人前)
・そば(ゆで):1人前
・パクチー:1/2束(50~80gくらい。お好みの量で)
・鯖水煮缶:1/2~1缶(1缶160g入り)
・チューブ入りおろししょうが:5cm程度
・めんつゆ(4倍希釈タイプ):大さじ1
――追いパクアレンジ~ごま油和え(つくりやすい量)
・刻みパクチー:大さじ2程度
・ごま油:コーヒースプーン1/2杯程度
――追いパクアレンジ~トマト・オリーブオイル和え(つくりやすい量)
・トマト:小1個(種を取って、ひと口大に切る)
・刻みパクチー:大さじ2程度
・オリーブオイル:小さじ1程度
〈ひとこと栄養メモ〉
パクチー(コリアンダー)は、β−カロテンを豊富に含む緑黄色野菜。β−カロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜を健康に保ちます。また鯖はDHAやEPAといった、不飽和脂肪酸を多く含む魚の代表格です。水煮缶は骨ごと食べられるので、カルシウムもしっかり摂取できます。(管理栄養士・たなべやすこ)
ジャスミン
フリーランスライター/ 『フリパラ』編集メンバー。
話し手・届け手・読み手の「健やかな生きざま」に、ほんの少しでもつながる期待を込め、オウンドメディアや個人出版、Web制作などに携わる。趣味はプチリッチフード探索。
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