#19 鳴門のわかめ成分を探せ!
こんな感じの仕上がりでどうでしょうと、テクスチャのサンプルが上がってきた。市場には鳴門のわかめの成分はなかったので、北海道の海藻成分で作ってくださったサンプル。ぬるっとした感じが肌艶にいい感じだ。
私がイメージしていたのは、鳴門の最高級のわかめをレストランでもお世話になっている生産者の皆さんに用意していただき、工場に納品して、いろんな成分と配合して、化粧品として納品してもらう・・・こんな感じ。
でもそれは素人考えだった。
配合する「成分」として完成させたものを、工場に納品しなければならないらしい。そして、化粧品成分を抽出することは、どこの誰にでもできる仕事ではなく、許諾を持っている業者にしかできない仕事だという。
「錦織さん、徳島の海藻成分を持っている会社、ご存知ないですか?」とブーメランで話を振られ、そんなこと、人生で考えたこともなかったので困ってしまった。
ネットで色々調べていたら、鳴門の海藻で基礎化粧品を作っている会社に行き当たり、成分だけなんとか販売してもらえないかと交渉するも頓挫。行く手を阻まれ、そもそもこの企画が難しかったんじゃないか・・・いよいよこの企画もここまでか・・・
そんなある日、「お久しぶりです!お元気ですか?」と、本家松浦酒造の若林さんとお電話で話をしていたときに、「実は、海藻成分を探してるんですけれど。ご存知ないですか?」と会話の流れでお尋ねした。
すると、「ちょっと待ってくださいね!うちのハンドクリームに確か、海藻成分入ってるはずですよ!マダムのご存知の、ほら、片山社長のところで作ってもらってるハンドクリーム!」と明るい声が返ってきた。
有限会社日本漢方医薬研究所の片山智子社長とは、地銀が主催するBtoBイベントでブースが近かったことからご挨拶させていただき、FaceBookで繋がっていた。鳴門の工房と社長の会社がご近所のため、何度かメッセンジャーでやりとりもさせていただいていた。
もういてもたってもいられず、直接電話を差し上げたところ、つながった!大まかにプロジェクトの内容と、今、困っていること。鳴門の海藻成分をなんとか入手できないかと探していること。なんとか力になってもらえないでしょうか?とお尋ねしたら、
「成分抽出だけって仕事はうちもしないんですよ。製品にして納品するのが普通なんですけどね。錦織さんとなら、いいですよ〜」と、あっけなく、柔らかく、優しいお返事をいただけた。
ありがとうございます、ありがとうございますって、電話の向こうの片山社長に何度も頭を下げた。
このプロジェクト、まだ続けられる!
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その後、片山社長は、東京出張があるからと西麻布のレストランにもお越しいただいた。そして、一緒に食事をとりながら、化粧品製造について、たくさんのお話を聞かせていただいた。
思いやコンセプトがどれだけ大切か。お菓子やレストランの料理と同じように、コスメだって、人の思いで形作られる。
この世に、「作り手」が存在しないものは一つもないんだなと、改めて感じた会食だった。
多分、片山社長は、素人の私の無鉄砲さと、考えの浅はかさを感じてらっしゃったんだと思う。それでも、「錦織さんなら、大丈夫。できますよ!」といろんなタイミングで励ましていただいた。
松浦酒造の若林さんも、いつも、惜しげなく、知っていることをシェアしてくださる。
物語にはやっぱり、自分の思いだけじゃなくって、できるだけたくさんの登場人物が必要なんだ。わからないことはわからないと聞こう。でも、私がやりたいですと、手を挙げ続けよう。
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後日、
「錦織さんのわかめの成分、摘んでいるところ撮りました〜」って片山社長から動画が送られてきた。
「片山社長、豪快すぎる〜!摘んできましたってレベルじゃない〜!」ってびっくり大笑いしながら、号泣してしまった。
みんなの思いをのせて、伝えたい。
鳴門の海の素晴らしさ、徳島の人の優しさ。丸ごと全部。