#2 2017年9月 上勝でもらった2つの言葉
徳島銘菓プロジェクトに向けて色々調べる日々が始まった。
ネットで検索で、「地域創生」をテーマにした研修プログラムを発見した。
・地域創生の事例を学ぶ、
・3箇所のエリアから1箇所を選び1泊2日の現地体験
・現地で体験したことをレポートし、自身の地域創生事業をプラン化
・事業プラン発表
確かこんなプログラム。
現地体験の1箇所に、「徳島県上勝」を見つけ、即、問い合わせした。
プログラムを受けたいこと。
現地体験はなんとしても徳島県上勝に行きたいこと。
おそらく希望が通るだろうと確認をとって申し込んだ。
正直、提供されたケーススタディについては何一つ思い出せない。
ただ。
上勝にいくために阿波踊り空港に降り立った時の緊張感。
そこから仲間と合流して、現地に着くまでの車の中での会話。
上勝での1泊2日の一部始終を今でもはっきり覚えている。
上勝のレストランで夕食をとりながら、
暗闇の山の中にあるバーでお酒を飲みながら、
上勝の持続可能な町の挑戦について視察しながら、
美しい棚田を見ながら、
地ビールとジビエのランチを食べながら、
フレンチモンスターについて、これから始まるお菓子事業について一生懸命話をしたし、研修の仲間がどんなことをやりたいと考えているのか、どんなきっかけで今ここにいるのかを聞いた。
その時感じたことは、私はゼロからのスタートではないこと。
やるべきことがこんなにもクリアに決まっているということ。
そしてこの上勝で、今に繋がる言葉を、2人の方から頂いた。
お一人は、コーディネーターをしてくださった谷さん。
確か、上勝から徳島市に向かう帰路の車の中でだったかな。
「錦織さん、東京に帰ったら、徳島県の東京事務所にいってください」とアドバイスされた。
東京事務所って、徳島県庁のですか?
勝手に徳島フレンチ語ってて怒られないかな。
お菓子もまだどうしたらいいか決まってないのに、何を話せばいいのかな。
という私に、
「フレンチモンスターさんがやられていることをお話したらいいです。大丈夫」って言われた。
もうお一人は、タクシードライバーの早苗さん。
帰りの飛行機まで時間に余裕があったので、お土産としてお菓子を置いてもらうならどんなところがあるのか見てみようと、空港からタクシーに乗り込んだ。
そのタクシーのドライバーが早苗さんだった。
これからやりたいお菓子事業について、初めてあったタクシーの運転手さんに夢中で喋る中年女なんて、もしかしたら世界中で私だけかもw
とにかくそんなお菓子を売ってくれそうな場所に連れてって。
タイムリミット2時間!ってお願いして数カ所回ってもらった。
心配した早苗さん。売り場にまでついてきてくれたっけ。
売り場の方にご挨拶して、色々ヒアリングさせてもらった。
「お菓子の袋に、作ったところの住所を書くでしょう。ここは東京の住所になるんですか?え!西麻布? そんなお菓子、観光のお客さんが見たら買わんよねえ」
想像してたけどやっぱりそうか。
ほんの2時間だったこともあって、置いてもらえそうなお店も見当たらないし、ここに置いて欲しいと確信を持てる場所を見つけることもできなかった。
フライトに間に合うように早苗さんが空港まで運転してくれた。
晩夏の徳島にも夕闇が迫ってきて、希望で満ち溢れていた気持ちも少し、萎んでいくようだった。
空港に到着の頃、大きな倉庫を見ながら早苗さんが
「ふとんの西川って、この大きな倉庫、もともとはふとんの高橋っていって、街の普通のお店やったんですよ〜。なんや、東京なんかでは西川ってブランドで大成功でしょう。何が当たるかわかりませんよ〜。お客さん、なんでもやったらいいですよ〜〜」
って言葉を贈ってくださった。
いや、早苗さんご本人は「贈った」なんてつもりはなかったと思うけれど。
私はこのときの一言を絶対に忘れない。
「新規事業」としての面白みみたいなものはあまりないかもしれない。
レストランがお菓子を作って売る。ただそれだけ。
道は曲がりくねってはいない。
まっすぐに続く道の入り口に立っている感覚。
でも、あまりにも真っ直ぐで、長く伸びている向こうが見えなくて。
どう歩き出したらいいかもわからず、準備運動ばかりしかできず。
でもその時の私は。
他ではまるで役に立たない自分をなんとかしたいという一心しかなく、
そして、なぜかわからないけど。根拠のない自信はあるという・・・
飲食素人の冒険が始まろうとしているのでした。
ああ。恐ろしい・・・