#22 デザインイメージは「徳島のお香」
デザイナーの新保さんを紹介してもらったのは、実は、プロジェクトスタート間もない頃だった。
当時、私は、デザインに予算を贅沢にかけられない。でも、商品ロゴはどなたかにお願いしなきゃな、くらいに考えていたので、新保さんを紹介してくれたプロジェクトメンバーが、「参考にプランと見積もり出してもらったよ」と持ってきてくれたものを見て、ぶったまげた。「これは・・・ごめんなさい。とても贅沢すぎて・・・ごめんなさい」とお返事していた。
でも、新保さんの、「思いを反映し膨らませてくださる力」を感じていたので、範囲を絞ってでも、お仕事を依頼させていただく道はないかな、と思い始めていた。
そして、思い切って、久しぶりに電話をかけた。
最初にお会いした時から、プロジェクトがどう進んできたのか。どんな出来事があって、今、作りたいものはどんなものなのか。そして、言った。「予算あまり用意できないんです。でも、ぜひ、お願いしたいんです。やりたいこと、作りたいものがやっと見えてきたんです。相談できないでしょうか」
「いいですよ。大丈夫です。いつ打ち合わせしましょう」
ああ。
この商品は、絶対にいいものになるし、やっぱり妥協しちゃダメなんだな。デザイナーさんもそう。アロマ の調合にしてもそう。プロジェクトメンバーに、その道のプロに、自分がやりたいこと、徳島への気持ちを全てを伝え、具現化してもらおう。
スケジュール、予算、プロダクトとしてできることできないこと。ハードルはいくつもあるけれど、そのハードルをプロに乗り越えてもらえるよう、頑張ろう。心からそう思えた。
デザイナーの新保さんとの打ち合わせはいい意味で緊張感があったし、スリリングで、新しいアイデアを出し合う楽しい時間だった。
私は、新保さんにアイデアを出してもらうために、たくさん言葉を尽くし、発想の元になりそうなビジュアルを共有した。
これは!というものを見つけると、すぐに写真を撮って新保さんにLINEした。これまでもパートナーと一緒にものづくりをする仕事をたくさんしてきたけれど、新保さんほどの包容力を持つプロは他に知らない。
打ち合わせの席は、いつも渋谷のカフェラウンジだった。コーヒーを飲んで、近況を互いに報告しあったりして、一息つくと、新保さんが、デザインアイデアの資料を見せてくれる。
ページをめくるのは緊張する。
言葉を尽くしてきたことがどう具現化されているのか?時間をかけて打ち合わせしてきたけれど、同じゴールを見てきたのか?その答え合わせをするような気持ちだ。
徳島の圧倒的本物感と骨太なイメージをラベルにしたかった。何度も打ち合わせする中で、「徳島のお香」というキーワードを見つけた。
新月、鳴門の渦潮、たくさんのイメージをモチーフに作ってくださったロゴは本当に素敵。予算がかかる。金の箔押しでの展開を覚悟した(笑)
キャップ部分には新月をイメージした金のサークル。本当は「かすれ」を表現したかったんだけれど、製造から悲鳴が上がり、ここだけ諦めた。ボディにスリーブをを巻くと、蓋部分のイメージカラー「イエロー」がちらりと見える。いずれシリーズ展開した時には蓋の色を変えて横展開していこう。
最初は、重厚な箱入りを予定していた。でも、外箱って、いずれ邪魔になるんだよね。それを捨てる時って、立派な箱であればあるほど、ストレスなんだよね。それ、悲しいねって、スタバで打ち合わせしていた時に、「コーヒースリーブみたいにしたらどうですか?」って新保さんがアイデアを出してくださった。
スリーブのイメージは、西麻布フレンチモンスターに飾ってあるシャガールの「魔笛」のブルーとグリーンを参考にしてもらった。
グラデーション違い4種類、選べないな、どうしようって言ってたら、スリーブ製作を担当してくれたホワイトハウスの高橋さんが、「4種類、全部やりましょう。面付けしてカットするから金額が変わりません」って助言してくださった。
スリーブの裏面はイメージカラー「イエロー」に、コンセプトメッセージや使い方を記載。三つ折りにしてとっておいてくれるといいねって想定。
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コスメを自分が作るなんて、思ってもみなかった。
やったことがない新しい挑戦は、わからないことがありすぎて、「プロの皆さんに遺憾なく力を発揮してもらえるよう頑張る」と気張れば気張るほど、空回りするシーンも多かった。
いよいよデザイン完成です。入稿ですね。本当に、本当に、お疲れ様でしたって新保さんに挨拶した打ち合わせの時の資料の表紙、「9th」って書いてあった。
そしてその時、新保さん、「本当に、このプロジェクトやれて、楽しかったです」って言ってくださった。
なによりも、嬉しかったな。
この商品に関わる人がみんな。何か新しくて楽しいことに触れてもらえますように。そう思った。
いずれ、徳島にみんなをお連れして、本物の鳴門の海を見ていただきたいとそう思っている。
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